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遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 100

「でも何でここじゃ駄目だったんだ?」 
 カウラは特に痛みもない壁を見回している。
「そうよねえ。あそこの匂いがそう簡単に取れるとは思ってなかっだでしょうに。ああ、要ちゃんはタバコを吸うから関係ないか」 
「一言多いんだよ!馬鹿が」 
 要はそう言うといつものようにアイシャの腿を蹴り上げる。
「蹴ることないでしょ!」 
 太ももを押さえながら要をにらみつけるアイシャ。
「島田先輩。もしかして……」 
「幽霊が出るって言う落ちはつまらねえから止めとけよ」 
 天井からぶら下がる蛍光灯に手を伸ばす要。
「やっぱりその落ち、駄目ですか?」 
 開き直った島田がドアを蹴飛ばしている。 
「やっぱりそうなのね」 
「もう少し面白いネタ用意してくれよ。つり天井になっているとか」 
「それのどこが面白いんだ?」 
 三人に日常生活を破壊されている誠から見れば、アイシャ、要、カウラの発言は予想通りのものだった。
「島田准尉、言ったとおりじゃないですか。この三人がそんなこと気にするわけないって」 
 そう言いながら西は買ってきた消臭スプレーを撒いて回る。 
「飯の用意できたぞ!来いよ」 
 食事当番のヨハンが声をかけに来た。
「アタシ等のはあるか?」 
「ああ、島田と菰田の分を回したから大丈夫ですよ」 
「中尉……そんな……」 
「自業自得だ。コンビニ弁当でも買って食え」 
 そう言うと食堂に向かうヨハン。
「そんな金ねえっての!」 
「サラに買ってきてもらえば?」 
 アイシャの言葉を聴くと、島田は携帯を持ってそのまま消えていく。
「すまんなあ菰田。アタシ等は飯食ってくるから掃除の段取りとか考えといてくれや」 
 うなだれる菰田の肩を叩きながら要率いる一行は食堂を目指した。

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テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 99

「貴様等、ここに住めというわけか?」 
 見開いた目を島田と菰田に向けるカウラ。
「菰田ちゃん。そこのゲーム一山で手を打つってのはどうかしら」 
「アホだなオメエ等」 
 部屋に入りエロゲーを物色するアイシャ。西から取り上げた消臭スプレーを撒き散らかしている要。
「それはですねえ……」 
 追い詰められた島田。じりじりと額に浮かぶ汗は暑さのせいではないだろう。
「間違えました!この下の階です!」 
 苦し紛れに叫ぶ島田。
「それにしちゃあずいぶん必死じゃねえか」 
 周りで冷や汗を流している隊員。
「それでは案内してくれ」 
 額に手を当てたカウラの目線が誠に注がれ、彼もまた苦笑いを浮かべた。
「良いんですか?あそこって日が当たらないからカビとか……」 
「文句は言うな!他に部屋が無いんだからしょうがないだろ!」 
 誠に耳打ちする島田。菰田は複雑な表情で三人を案内する。一階の西館。日のあたらないこの部分は明らかに放置されていた区画だった。階段を下りるだけでもその陰気な雰囲気は見て取れた。
「島田、あご砕いて良いか?」 
 要はそう言いながら指を鳴らしている。カウラも半分はあきれていた。アイシャは『図書館』に未練があるように上の階を眺めている。
「大丈夫ですよ!ここは元々豊川紡績の女子寮だったんですから、西館には女子トイレもありますし……」 
「苦しい言い訳ね」 
 アイシャの声が陰気な廊下に響く。『図書館』の改装が無駄に終わることが決まった寮の住人がその後に続いて階段を下りていく。まずは一番階段に近い部屋。島田は鍵を取り出すと扉を開けた。
 意外にもカビの臭気は漏れてこなかった。島田を先頭に菰田、カウラ、要、アイシャ、誠。部屋に入るが奇妙な冷気意外は特に問題はなさそうに見えた。
「意外と良い部屋じゃねえか。西日が当たるのかね、畳が焼けてるみたいだけど……」 
「畳は近日中に入れ替えます!」 
 要の投げた視線に、悲鳴にも近い調子の島田の声が響いた。

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遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 98

 要の怒鳴り声が耳からはなれない。そんな状態でゆっくりと目を開ける誠。ドアを叩きつける音にようやく気がついて起き上がると、そのままベッドから降りて戸口に向かう。太陽はまだ窓から差し込める高さではない。頭をかきながらドアを開けた。
「おせえんだよ!さっさと着替えろ!」 
 島田と菰田。珍しい組み合わせに誠は目を疑った。
「それとこいつ。返しとくぞ」 
 寝ぼけた目で菰田から渡された三冊の雑誌に目をやる。この前のコミケで買った18禁同人誌だと確認すると自然と意識が冴え渡った。
「どうしてこれを……」 
「あのなあ、お前がよこしたんだろ?部屋にあると野球部の女性陣に見つかるとか言って図書館に持ってきたじゃないか」 
 誠はようやく事態が飲み込めた。
 西館の二階の三つの空き間。そこは保安隊下士官男子寮に於いては『図書館』と呼ばれるエロの殿堂である。その手の雑誌、ゲームや動画のディスクなどが山ほど保存されている。
「あそこに来るんですか?西園寺さん達は?」 
「だから急いでるんだ。お前は少ないから良いがこいつは……」 
 含み笑いをしながら菰田を見つめる島田。
「うるせえ、とっとと着替えて来い!」 
 そう言うと菰田が力任せにドアを閉めた。確かに何度か入ったことがある。どこの部屋だろうが平気で歩き回るシャムやエロ本を見つけると階級を盾に横領するアイシャ。ましてや誠が入部したことを口実に明石と一緒にやってくる明華なんぞに見つかればどういう制裁が待っているかわからない。
 誠はとりあえずTシャツにジーンズと言うラフなスタイルで『図書館』に向かった。
「消臭剤はどうした!」 
「西が買いに行ってます!」 
「急げよ!島田!サラはどう動いてる」 
「さっき電話した時は起きたばかりだったみたいだから3時間くらいはどうにかなるぞ!」 
 まるで戦場である。島田と菰田が仕切り、茹でたてのウィンナーを食べながらその様子を見守るヨハンが駆け回る隊員達に握り飯を配ってまわる。『図書館』の中に入る。畳の下からダンボールを次々と運び出す管理部の面々。据えつけられた端末のコードを巻き取っているのは技術部員だ。
 しかし、それ以上に饐えた匂いが鼻についた。見たものの不信感を増幅させるような積み上げられたティッシュペーパーの箱。
「島田先輩。本当にここでいいんですか?」 
 誠はそう言いながら部屋を見渡す。
「大丈夫だって。この部屋の存在は寮の男子隊員共通の弱みだ。誰もこの部屋のことは知られたくないはずだからな」 
「そうよねえ。知られたくないわよねえ」 
 島田と誠が振り向いた先には満面の笑みのアイシャと、消臭剤を買ってきたばかりの西からスプレー缶を取り上げている要。そしてこめかみに指を当てあきれているカウラの姿があった。

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遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 97

「まあこの程度の腕の護衛なら私だって断るわねえ」 
 取り出したサブマシンガンの弾をマガジンにこめるアイシャ。
「それじゃあもうちょっと揉んでやろうか?」 
 こぶしを握り締める要を見て、後ろに引く二人。
「それくらいにしておけ。しかし、この程度では確かに護衛にはならんな」 
「そうよねえ。第三艦隊第一教導連隊の連隊長くらい強くなくちゃあ……」 
 軽口を叩くアイシャを要がにらみつけた。
「つまり、楓を連れて来いってことか?」 
 要はタバコに手を伸ばす。
「わかってるじゃない!いとしの嵯峨楓少佐殿にお姫様だっこしてもらってー……」 
「アイシャ、灰皿がいるんだ。ちょっと手を貸せ!」 
「冗談だって!冗談!」 
 アイシャの肩をつかんで引き寄せる要。笑いながら逃げようとするアイシャ。
「冗談になってないなそれは」 
「カウラ良いこと言うじゃねえか!そうだ、何だってあの……」 
 あきれている二人の男達に見守られながらカウラの顔を見る要だったが、そのまじめそうな表情に思わず肩を押さえていたアイシャに逃げられる。
「それに楓さんのうちへの配属は時間の問題みたいだからね」 
 アイシャは笑っている。
「……マジかよ」 
「今頃気づいたのか?今日来た米軍からの出向人員は『第四小隊』の要員として保安隊に来たわけだ。現在保安隊の実働部隊は第二小隊までしか存在しない。つまり、すでに書類上は第三小隊が存在していることになる」 
 カウラの言葉にくわえていたタバコを落とす要。
「ちょっと待て!だからと言って……あの揉み魔がうちに来るっていう証拠にはならねえだろ?」 
 今度はアイシャを見つめる要。要は絶望していた。その先には貴腐人と呼ばれるアイシャにふさわしい笑みがあった。
「うれしそうだな、オメエ」 
「別に……、それじゃあねえ君達は帰ってもいいわよ!あとは私とベルガー大尉が引き継ぐから」 
 要達の会話にあきれていた海軍士官達は、アイシャの声を聞いてようやく解放されたとでも言うようにすごすごと車に乗り込むと路地から出て行った。
「それじゃあ行きましょう!」 
「ちゃんと話せ!ごまかすんじゃねえ!」 
 要の叫び声を無視して車に乗り込むカウラとアイシャ。仕方なくその後ろに誠は続いた。

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遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 96

 サングラスの二人は車を降りた。目の前のスポーツカーには人の気配が無い。
「とりあえず確認だ」 
 助手席から降りた男は、そう言うとそのままスポーツカーのシートを確認するべく駆け寄った。エンジンは切られてすぐらしく、熱気を帯びた風が頬を撫でる。二人は辺りを見渡す。明かりの消えた高校の裏門、ムッとするコンクリートの焼ける匂いが二人を包んでいた。
 とりあえず確認を終えた二人が車に戻ろうとした時だった。
「動くな」 
 女の声に振り向こうとする助手席の男の背中に硬いものが当たる。相棒はもう一人の女に手を取られてもがいている。
「そのまま手を車につけろ」 
 指示されるままに男はスポーツカーに手をつく。
「おい、どこのお使いだ?」 
 右腕をねじり上げられた運転手が悲鳴を上げる。
「要ちゃんさあ。二、三発腿にでも撃ち込んであげれば、べらべらしゃべりだすんじゃないの?」 
 サブマシンガンを肩に乗せた闇の色の髪の女性が、体格に似合わず気の弱そうな表情を浮かべる若者を連れてきた。
「それより誠。せっかく叔父貴からダンビラ受け取ったんだ。試し斬りってのもおつじゃないのか?」 
「わかった、話す!」 
 スポーツカーに両手をついていた男が、背中に銃を突きつける緑のポニーテールの女性に言った。
「我々は胡州帝国海軍情報部のものだ!」 
「海軍ねえ、それにしちゃあずいぶんまずい尾行だな。もう少しましな嘘をつけよ」 
 さらに男の右腕を強くねじり上げる要。男は左手でもれそうになる悲鳴を押さえ込んでいる。
「本当だ!何なら大使館に確認してもらってもかまわない。それに尾行ではない!護衛だ」 
 両手をついている男が、相棒に視線をうつす。
「それならなおのこともっとうまくやんな」 
 そう言うと要は右腕をねじり上げていた男を突き放す。カウラは銃を収め、不服そうに眺めているアイシャを見た。
「上は親父か?」 
「いえ、大河内海軍大臣の指示です。西園寺要様、神前誠曹長の安全を確保せよとの指示をうけて……」 
 安心したようにタバコに火をともす要。
「紛らわしいことすんじゃねえよ。そう言うことするならアタシに一声かけろっつうの!」 
「要ちゃんなら怒鳴りつけて断るんじゃないの?」 
 アイシャはサブマシンガンのマガジンを抜いて、薬室の中の残弾を取り出す。
「そんなことねえよ」 
 小声でつぶやいた要の言葉にカウラとアイシャは思わず目を合わせた。

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