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遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 140

「はいはい!ありがとうね。それじゃあ本棚は私達がやるから中身の方お願いね」 
 部屋から現れたアイシャとパーラが横に置かれた本棚に手をやる。
「じゃあ行くぞ」 
 キムの一声で誠と西はその後に続いた。サラはパーラに引っ張られてアイシャの部屋に消えた。カウラが大きなダンボールを抱えている。
「カウラさん持ちますよ」 
 そう言って誠はカウラに走り寄る。
「良いのか?任せて」 
「大丈夫です!これくらい、良いトレーニングですよ」 
「そうか、カウラのは持つんだな」 
 誠は恐る恐るカウラの後ろを見た。同じようにダンボール箱を抱えた要がいた。
「いいぜ、どうせアタシは機械人間だからな。テメエ等生身の奴とは、勝手が違うだろうしな」 
 そう言いながら立ち尽くす誠とカウラの脇を抜けて寮の廊下に消えていく要。
「あの……」 
 そう言って後を追おうとした誠の肩をカウラがつかんだ。
「誠……」 
 カウラの手にいつもと違う力がこもっているのを感じて誠は振り返った。
「カウラさん」 
「このところ貴様と要を見てて変な感じがしたんだ」 
 段ボール箱を持ってアイシャの部屋とは反対にある食堂に向かって歩き出すカウラ。誠は黙ってその後に続いた。
「貴様と要が一緒にいるところを見たくないんだ」 
 誰もいない食堂のテーブル。その上にダンボール箱を静かに置いた。
「あの人は僕とは住む世界が違いますよ」 
 誠はそう言って、自分の中で何が起こるか試してみた。華麗な上流階級に対する羨望は無かった。かと言って嫉妬と策謀に生きなければならなかった政治家の娘と言う立場への同情も誠には無縁だった。どちらも誠にとってはどうでも良いことだった。ましてや非人道的任務についていたと言う過去など、この部隊の面々の中ではちょっとした個性くらいのものだった。
「住む世界か。便利な言葉だな」 
 カウラはそう言うと口元に軽い笑みを浮かべた。


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テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 139

 脳みそがゆすられるような振動を感じて誠は目を覚ました。
「ようやく起きやがった。この馬鹿」 
 目の前には要の顔がある。誠は飛び上がって周りを見回した。プラモと漫画、それにアニメのポスター。自分の部屋だった。頭は割れるように痛い。
「西園寺さん、なんで僕の部屋に……」 
「もう十時過ぎだぞ。荷物着いたから早く着替えろ」 
 そう言うと要は出て行った。
 要、アイシャ、カウラの引越し。要の荷物がほとんど無いのは良いとして、アイシャの荷物は予想がつくだけに恐ろしい。誠はあまさき屋で意識を飛ばしてから、どうやって自分の部屋でジャージに着替えて眠ったのかまったく覚えていなかったが、良くあることなので考えるのをやめた。
 B級特撮映画の仮面戦隊トウリアンのロゴがプリントされたTシャツを着て、ジーパンに足を通す。二日酔いの頭が未だに完全に動いてくれてはいないようで、片足を上げたまま転がる。
「おい!」 
 今度入ってきたのはキムだった。
「何遊んでんだ?早く手伝え!」 
 それだけ言うとまた部屋の扉を閉める。とりあえず誠はベルトを締めて、そのまま部屋を出た。ムッとする熱気。昨日よりも明らかに暑い。誠はそのまま廊下から玄関に向かって歩く。
「西!とりあえず下持て!」 
「キム少尉、無茶ですよ……って神前曹長!手伝ってください!」 
 大きな本棚をもてあましている西が声をかけてくる。誠は仕方なくそちらの方に手を貸した。
「西、もう少し端を持て。キム先輩、大丈夫ですか?」 
「無駄に重いなあ。誰かこっちも一人くらい……」 
 表からやってきたサラが力を貸す。
「じゃあ行きますよ!」 
 そう言うとキムの誘導で本棚は廊下の角に沿って曲がりながら進む。
「キム先輩。島田先輩はどうしたんですか?」 
「島田は今日は昨日のお客さん達のM10の受領に関する打ち合わせだ。それに菰田と愉快な仲間達はシンの旦那から説教されるって話だ。とりあえずここで良いや」
 アイシャの部屋の前でとりあえず四人は一休みした。


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遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 138

「ごめんねレベッカ。コイツ変態だから」 
「姐御酷いですよ!」 
 そう言いながらコップに残ったラムを飲み干す要。誠の視界が急激に狭まってくる。
「そう言えばもう一人の問題児が……、大丈夫?」 
 明華の声が耳の奥で響く。轟音が誠の頭を襲っていた。
「いつもこんな感じなんですか?」 
 恐る恐るずれた眼鏡を直しながら、レベッカが尋ねた。
「まあそうね。こんなもんじゃないの?ねえ、アイシャ」 
「まあそうですね。いつもこんなものじゃないですか?」 
「確かにこういうものだ」 
 ゆっくりと烏龍茶を飲みながら、もつをつつくカウラ。
 レベッカは笑いを浮かべようとしていたが、引きつった頬は不器用な笑顔しか作れなかった。キャベツをつつく誠。彼がテキーラが入ったコップに手を伸ばすと、そのコップを明華が奪った。
「あんたも懲りないわね。もうぐだぐだじゃないの!」 
「大丈夫ですよ。平気ですから」 
 そう言いながら首がくらくらと回っているのは誠自身もよくわかっていた。
「どこが大丈夫なの?じゃあ、ビールにしましょう」 
 そう言うと明華はレベッカの前に置かれた瓶を手に取った。
「ビールなら、大丈夫です」 
 誠はすばやく明華から瓶を奪うと、そのままラッパ飲みをはじめた。
「何するのよ!神前!」 
 慌てる明華だが、遅かった。
「おっと!ここで誠の新歓一気か!」 
 はしゃぎだすのは要。その言葉を聴いて島田とサラが立ち上がって騒ぎ出す。顔をしかめる明華をよそにビールを飲み終えた誠はふらふらと瓶を小脇に抱えた。そして彼は自分の意識が閉じて行くのを味わっていた。


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遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 137

「どれがいい?」 
 そう言いながらにじり寄る要に眉をひそめるレベッカ。
「私は……ビールでいいです」 
「遠慮するなよ」 
 要の手がレベッカの肩をつかんだ。怯えるように低く声を上げるレベッカ。
「ビールで良いんだな?パーラ、一本取ってくれ。それにコップも!」 
 そう頼みながら今度は顔を近づける要。レベッカは怯えたようにあたりを見回す。
「西園寺さん。止めた方が良いですよ」 
「誠!一体何を止めるんだ?こう言う事か?」 
 要の右手がレベッカの胸に伸びる。
「あ!」 
 思わずアイシャが吹いた。カウラの烏龍茶の入ったコップを握る手に力が入る。
「だからそれを止めろと……」 
「だってぷにぷにして気持ち良いぜ!」 
 要の大声が部屋に響く。他のテーブルの隊員の表情は明らかに一つの言葉で説明がついた。
『またか』 
 そう思った彼等はそのまま誠の座るテーブルから視線をそらした。
「いいだろ、カウラ。おい、アタシの胸も触って良いぞ」 
 そう言ってレベッカの手を握ると自分の胸に当てる。
「要!」 
 いつの間にか要の隣まで歩いてきた明華がレベッカから要を引き剥がす。
「これ没収!」 
 そう言って要の前のボトルを次々と取り上げる。
「姐御!勘弁!まじで!」 
 少しろれつが回っていない要を見下ろしている明華。さすがに悪乗りが過ぎたと言うように要はレベッカから手を放した。


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遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 136

 喉を焼くウィスキーのアルコールに顔をしかめる誠。カウラは心配そうに見つめている。
「飲みましたよ!」 
「おお、いいじゃねえの!さあ次だ」 
 そう言うと誠の手からコップを奪い取り、今度はラムを注ぎ始めた。
「貴様等、いい加減にしろ……」 
「こうなったらもう駄目でしょ。ああ、やっぱり鉄板で焼いたキャベツはおいしいわ」 
 手を出そうとするカウラと無視を決め込むアイシャ。
「次、行くわよ」 
 パーラは残ったもつを自分の皿に移すと、またもつとキャベツを鉄板に拡げる。誠は景色が回り始めるのを感じていた。
「本当に大丈夫なのか?」 
 声をかけるカウラの声に少しばかりためらいが感じられるのは、誠の顔の色が変わってきているからだろう。要に渡されたコップを一度テーブルに置くと、誠はパーラが盛り付けてくれたもつに取り掛かった。
「遅くなりました」 
 マリアの声が響く。続くのはロナルド、岡部、フェデロ。そして遠慮がちに入ってくるのはレベッカだった。
「おい!眼鏡っ子!」 
 周りを気にしながら一人部屋に入るのを躊躇しているレベッカに要が声をかけた。
「私ですか?」 
「他に誰がいるんだよ。ここ座れ!」 
 要はそう言うと自分の隣の座布団を叩く。
「でも……」 
「でもじゃねえ!一応アタシが上官だ!上官命令って奴だ」 
 元々たれ目の要がさらに目じりを下げながら叫ぶ。
「じゃあ、すみません」 
 そう言いながらレベッカはパーラの後ろをすり抜けて要の隣の座布団に腰をかけた。
「畳の暮らしにゃ慣れてねえか?」 
「いえ、大丈夫です」 
 恐る恐る要を見つめるレベッカ。上機嫌にテキーラを煽る要。
「まずどれで行く?」 
 そう言うと要は三本の酒瓶をレベッカの前に並べて見せた。

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