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遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 160

「大変そうですねえ」 
 階段ですれ違った西がニヤニヤ笑っている。
「まあな、こんな目にあうのは初めてだから」 
「そりゃそうでしょ。島田班長が結構気にしてましたよ」 
 そう言うと部屋の前までついてくる西。部屋で財布と身分証などの入ったカード入れを持つ。さらに携帯を片手に持つとそのまま部屋を出た。
「なんだよ、まだついてくるのか。別に面白くも無いぞ」 
「そうでもないですよ。神前さんは自分で思ってるよりかなり面白い人ですから」 
 他人の不幸は蜜の味とはよく言ったものだ。そんなことを考えながら廊下を駆け下りる。
「そう言えば昨日……」 
 ついてきているはずの西を振り返る誠だが、西は携帯電話に出ていた。
「ええ、今日はこれから出勤します。島田班長が気を使ってくれてるんで、定時には帰れると思いますよ」 
 気軽な調子で話し続ける西。誠は声をかけようかとも思ったが、つまらないことに首は突っ込みたくないと思い直してそのまま玄関に向かう。
「神前さん、お先!」 
 そう言って本部へ急ぐ隊員達。誠は携帯の画面を開いて時間を確認する。この寮からなら普通に間に合う時間である。いつもの彼のカブで裏道を抜ければ、かなり余裕で間に合う時間だ。
「なんだ、早かったな」 
 声に気づいて振り向けばカウラが立っている。普通の隊員は隊で着替えるはずなのだが、彼女は東和軍の夏季勤務服の半袖のワイシャツ、そして作業用ズボンという奇妙な格好をしていた。
「何か気になることでもあるのか?」 
 不思議そうに尋ねてくるカウラ。
「相変わらずどうでも良いって格好じゃないの」 
 誠も見ている深夜放送のファンシーなキャラクターのTシャツを着たアイシャが歩いてくる。
「貴様の方がよっぽど恥ずかしいと思うが」 
「大丈夫、見る人が見ないとわからないから」 
「お前等、本当に頭ん中大丈夫か?」 
 タンクトップにジーンズ。ヒップホルスターに愛用の銃を挿した要が笑う。要もアイシャも、そして誠も唖然としながら彼女が寮を出るのを見送った。

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ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 159

 誠はまさに針のむしろの上にいるように感じていた。言葉をかけようと要の顔を見れば、隣のアイシャからの視線を感じる。カウラの前のしょうゆに手を伸ばせば、黙って要がそれを誠に渡す。周りの隊員達も、その奇妙な牽制合戦に関わるまいと、遠巻きにそれを眺めている。
「ああ!もう。要ちゃん!なんか不満でもあるわけ?」 
「そりゃあこっちの台詞だ!アタシがソースをコイツにとってやったのがそんなに不満なのか?」 
「あまりおひたしにソースをかける人はいないと思うんですが」 
 二人を宥めようと誠が言った言葉がまずかった。
「アタシはかけるんだよ!」 
「良いわよ。ちゃんとたっぷり中濃ソースをおひたしにかけて召し上がれ」 
 アイシャに言われて相当腹が立ったのか、要はほうれん草にたっぷりと中濃ソースをかける。
「どう?おいしい?」 
「ああ、うめえなあ!」 
「貴様等!いい加減にしろ!」 
 カウラがテーブルを叩く。要もアイシャも呆然と彼女を見守っている。
「食事は静かにしろ」 
 そう言うと冷凍みかんを剥き始めるカウラ。要は上げた拳のおろし先に困って、立ち上がるととりあえず食堂の壁を叩いた。
「これが毎日続くんですか?」 
「なに、不満?」 
 涼しげな目元にいたずら心を宿したアイシャの目が誠を捕らえる。赤くなってそのまま残ったソーセージを口に突っ込むと、手にみかんと空いたトレーを持ってカウンターに運んだ。
「それじゃあ僕は準備があるので」 
「準備だ?オメエいつもそんな格好で出勤してくるじゃねえか……。とりあえず玄関に立ってろ」 
「でも財布とか身分証とか……」 
「じゃあ早く取って来い!」 
 要に怒鳴られて、誠は一目散に部屋へと駆け出した。

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遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 158

「食事、取ってきて」 
 誠の顔をまじまじと見つめたアイシャがそう言った。
「あの、一応セルフサービスなんですけど」 
「上官命令。取ってきて」 
 仕方が無いというように誠は立ち上がった。アイシャの気まぐれにはもう慣れていた。そのままカウラと共に厨房が覗けるカウンターの前に出来た行列に並ぶ。
「席はアイシャが取っておくと言うことだ」 
 そう言うと誠に二つのトレーを渡すカウラ。
「佐官だからっていきがりやがってなあ。オメエも迷惑だろ?」 
 喫煙所から戻ってきた要がさもそれが当然と言うように誠の後ろに並ぶ。
「両手に花かよ、うらやましい限りだな」 
 朝食当番のヨハンがそう言いながら茹でたソーセージをトレーに載せていく。
「技術部は大変ですね」 
「まあな、ただ俺としてはM10は楽な機体だぜ。大規模運用を前提として設計されているだけあって整備や調整の手間がかからないように出来てるからな」 
「だが、それ故に自由度は低いわけだな」 
 カウラの言葉をはぐらかすように笑うヨハン。
「大丈夫ですよベルガー大尉。05式の代替機にするつもりは無いですから」 
 そう言ってシチューを盛り付ける菰田。
「噂の09式のスペックが出てくるまではそう言う話も無いだろうな」 
 カウラに話しかけられ恍惚としている菰田の前で要が咳払いをした。
「早くしなさいよ!」 
 ようやく盛り付けが終わったばかりだと言うのに、アイシャの声が食堂に響く。
「うるせえ!馬鹿。何もしてない……」 
「酷いわねえ要ちゃん。ちゃんと番茶を入れといてあげたわよ」 
 アイシャはそう言うと席に着く三人にコップを渡した。
「普通盛りなのね」 
 要のトレーを見ながらアイシャは箸でソーセージをつかむ。
「誠、きついかも知れないが朝食はちゃんと食べた方が良い」 
 カウラはそう言いながらシチューを口に運んでいる。

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遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 157

 翌朝、誠は焼けるような腹痛で飛び起きた。そのままトイレに駆け込み用を済ませて部屋に帰ろうとした彼の前にいつの間か要が立っていた。
「おい、顔色悪りいぜ。何かあったのか?」 
 昨日、ウォッカの箱を開けるやいなや、すぐさま彼の口にアルコール度40の液体を流し込んだことを気にしていないような調子の要に呆れながらそのまま部屋に向かう誠。
「挨拶ぐらいしていけよな」 
 小さな声でつぶやくと、要はそのまま喫煙所に向かった。部屋に戻り、Tシャツとジーパンに着替えて部屋を出る。今度はカウラが立っている。
「おはよう」 
 それだけ言うと、カウラは階段を下りていく。誠も食堂に行こうと歩き始めた。頭痛は続いている。
「昨日は災難だったわねえ」 
 階段の途中で待っていたのはアイシャだった。
「酒が嫌いになれそうですね。このままだと」 
 そう言いながら誠は頭を掻いた。
「それはまあ、要ちゃんのことは隊長に言ってもらうわよ。それにしてもシャワー室、汚すぎない?」 
「これまでは男所帯だったわけですからね。島田先輩に言ってくださいよ」 
「その島田君がしばらく本部に泊り込みになりそうだって話よ」 
 食堂の前はいつものだらけた隊員達が雑談をしていたが、カウラとアイシャの姿を見ると急に背筋を伸ばして直立不動の体勢を取った。
「ああ、気にしなくて良いわよ」 
 アイシャは軽く敬礼をするとそのまま食堂に入った。厨房で忙しく隊員に指示を出しているヨハンが見える。とりあえず誠は空いているテーブルに腰を下ろす。当然と言った風にカウラが正面に、そしてアイシャは誠の右隣に座った。
「とりあえず麦茶でも飲みなさいよ」 
 やかんに入った麦茶を注いで、誠に渡すアイシャ。誠は受け取ったコップをすぐさま空にした。

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遼州戦記 保安隊日乗 保安隊海へ行く 156

「いい匂いだな」 
 食堂に来たのは菰田だった。厨房の中を覗き込んで、そこにカウラがいるのを見つけるとすぐさま厨房に入ってくる。
「菰田。テメエ邪魔」 
 近づく彼に鋭く要が言い放った。
「そんな、西園寺さん。別に邪魔はしませんから」 
「ああ、あなたは存在自体が邪魔」 
 そう言うとアイシャは手で菰田を追い払うように動かす。思わず笑いを漏らした誠を、鬼の形相でにらみつける菰田。しかし、相手は要とアイシャである。仕方なく彼はそのまま出て行った。
「あの馬鹿と毎日面を合わせるわけか。こりゃあ誤算だったぜ!」 
 要がカウラを見やる。まな板を洗っていたカウラはいまいちピンと来てない様な顔をした。
「なるほど、もうそんな時間なわけね。誠君、ご飯は」 
「もうセットしましたよ」 
「後は煮えるのを待つだけだね」 
 サラがそう言うと食堂に入ってきた西の姿を捉えた。
「西園寺大尉!」 
 西は慌てていた。呼ばれた要は手を洗い終わると、そのまま厨房をでる。
「慌てんなよ。なんだ?」 
「代引きで荷物が届いてますけど」 
「そうか、ありがとな」 
 そう言って食堂から消える要。
「要ちゃんが代引き?私はよく使うけど」 
「どうせ酒じゃないのか?」 
 カウラはそう言って手にした固形のカレールーを割っている。
「さすがの要さんでもそんな……」 
 言葉を継ぐことを忘れた誠の前に、ウォッカのケースを抱えて入ってくる要の姿があった。
「おい!これがアタシの引っ越し祝いだ」 
 あまりに予想にたがわない要の行動に、カウラと誠は頭を抱えた。

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