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遼州戦記 播州愚連隊 60

 明らかに敵意に満ちた表情が赤松を捉えるが彼は無視して大きく深呼吸をした。
「ああ、どうぞ」 
 西園寺の表情はこれから赤松が話す内容に興味を感じていると言うような感じだった。同じく醍醐などの西園寺派の将校たちも期待を込めた表情で赤松の言葉を待ち続けている。
「今回の越州での叛乱についてですが……」 
 無理に標準語のアクセントでしゃべる赤松。その言葉に『叛乱』と言う言葉が使われたのを聞くと聴衆の一部が立ち上がろうとした。
「待ちたまえ、君達!最後まで聞こうじゃないか」 
 余裕を持って西園寺が制する。そして醍醐が振り向いてにらみを利かせると彼ら烏丸派の人々は静かに腰を下ろした。
「今回動いている艦隊ですが……どう見ても規定の稼動率を上回る規模の艦隊が作戦行動に移っているわけですが」 
『まるで準備していたようだと言いたいのか!』 
 そこで飛んだ野次。赤松はそのにやけた陸軍大佐の目をにらみつけた。それなりに修羅場をくぐってきた自負のある赤松の視線を受けて烏丸派のその将校は下を向いて黙り込む。
「叛乱鎮圧にはそれなりの戦力と言いますか数を用意する必要があると思われます。元々鎮台府の城准将と貴下の上官の起こした叛乱です。数で脅せば兵士達の士気は落ちることでしょう。問題はそれが濃州攻略に彼らが成功した前か後かと言うことになると思います」 
 それだけ言うと赤松はぐるりと会議室の面々を眺めてから椅子に座った。頷くのは西園寺派、薄ら笑いを浮かべるのは烏丸派。どちらかにきれいに分かれている様を見て、先日の旧友である嵯峨の警告が思い出されてきた。
「数を用意できる即応部隊となると君の第三艦隊が動くと言うことになるのかね?」 
 先の大戦で一番多く戦死者を出した赤松達より十歳くらい年上の世代の将官が声をかける。その声の主本間中将は現在部隊を第六惑星衛星系に展開させているが、越州謀反の知らせを受けて駆けつけた艦隊司令だった。どちらかと言えば主張としては烏丸派に近い意見の持ち主だが、軍の政治への介入を快く思わない彼の信念からこの場の誰もが彼の意見に耳を傾けるだろうと赤松は踏んでいた。
「鎮台府の戦力は対艦戦に特化したものが配置されているのは皆さんもご存知のとおりです。そしてこちらも対艦戦を考えればワシ……いえ、私の第三艦隊を当てるのが最良かと」 
 赤松は本間の言葉にそう答える。
 しばらく沈黙が場を支配した。そしてこの場の全員が手にした端末を眺めている西園寺基義首相の次の言葉を待ち続けていた。


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遼州戦記 播州愚連隊 59

「すまないな……忠満」 
 閣僚を別室に待たせて西園寺基義は12ある客室のひとつのソファーから立ち上がって敬礼しようとする赤松を制するようにしてつぶやいた。ちょっとした会議が開けそうな部屋には赤松の他に陸軍大臣代行の醍醐文隆の他、海軍大臣代行や陸海軍の参謀部長が顔をそろえていた。そして当然のようにその中には参謀の一人として清原陸軍准将の姿もあった。
「越州鎮台府の艦隊は現在濃州の5000キロの地点のデブリを盾にして展開中。すぐに攻撃を仕掛ける様子は見れませんが……」 
「憲兵隊員が全員拘束されたのは知っている。他にも私の支持者が越州で不法逮捕されていることもね」 
 海軍の情報将校の言葉に苦々しげに答えながら西園寺は上座の椅子に腰掛ける。
「今回の反乱……どう思うかね?清原君」 
 西園寺の一言には重みがあった。誰もが清原和人と越州鎮台府長官城一清准将とのつながりは知っていた。これが明らかに帝都に張り付いてにらみを効かす赤松の第三艦隊を引き剥がす目的の芝居なのは分かりきっていた。
「帝国の威信に対する挑戦。そして国内の秩序を乱す愚行としか言えませんな」 
 はっきりとそう断言する清原に生暖かい視線を投げる西園寺や彼を指示する軍幹部達。そして冷ややかな笑みで彼らを見つめる烏丸派の将官の姿を見て赤松は大きくため息をついた。
「現在の状況ではこの反乱行為の鎮圧に動けるのは赤松准将の第三艦隊と醍醐候の近衛師団が適当と思われますが……」 
 そう言ったのは烏丸派の陸軍参謀だった。醍醐は思い切り嫌な顔をして威圧するように立ち上がっている参謀に目を向ける。
「確かにそれ以外の部隊を動かすわけには行かないだろう。外惑星の独立派を囲い込む作戦が失敗すればわが国は国際社会での信用を失う。かといって予備役を召集して帝都近郊の部隊を宇宙に上げるのは大げさすぎる」 
 西園寺はそう言いながらずっと清原を見つめていた。淡々とメモを取り時々端末に目をやる清原はそんな首相の言葉に耳を貸すつもりはないといった様子だった。
「よろしいですか?」 
 誰もが苛立ちを隠せない表情を浮かべている中、静かに赤松は手を上げて発言の機会を待った。


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遼州戦記 播州愚連隊 58

「ご心中お察し……」 
 そこまで言って別所は言葉に詰まった。一人顔を下げて目をこする赤松。上官の涙を初めて見た別所は当惑していた。
「ええよ、気いつかわんでも。どうしようもないことは世の中色々あるやん」 
 赤松は顔を起こした。目は赤く染まっているのが別所からも見える。
「ですがどう動きますか?恐らく討伐隊には第三艦隊が選ばれるでしょうが……」 
「清原さんは動くやろな。ワシ等が離れれば決起の好機や。見逃すほどアホやないやろ」 
 そう言ってそのまま椅子に身を投げて伸びをする赤松。その様子を見て赤松がかなり悩んでいることに別所は気が付いた。
「でも良いんですか?閣下の奥さんは……」 
「貴子さんのことは言っても無駄や。あの人はワシより男らしいよって。『情に流されるなら死になさい』と言われるのが落ちなんちゃうか?」 
 安東貞盛の姉に当たる赤松忠満の妻貴子。凛として常に武家の妻を演じている彼女の姿を見慣れている別所も赤松の言うことはもっともだと思っていた。しかし、問題はさらに複雑だった。赤松の妹の恭子は安東の妻だった。彼女は心が弱く、輿入れ後は長いこと床に伏せっていた。
「言いたいことはわかるんやけど……私情ははさみとうないなあ」 
 赤松はすぐさまそう言って別所の言葉をさえぎる。
「ともかく醍醐はんと作戦のすりあわせをせなあかんな。出かけるぞ」 
 そう言って立ち上がって詰襟の一番上のホックをかける赤松。つられて別所は腰に手をやるが先日の赤松の訓示で軍刀をはずしていたのを思い出して苦笑いを浮かべる。
「丸腰はやはり慣れないわなあ」 
 赤松はにこりと笑うと再び神妙な顔つきに戻って傾いていた帽子を被りなおした。
「おやっさん!」 
 ドアを開けるとそこには魚住と黒田の姿もあった。二人とも神妙な表情で赤松に敬礼する。
「官邸から出頭命令が出ました」 
 魚住の言葉にうなずいた後、廊下の天井を見上げる赤松。
「始まりやな」 
 そう言うと別所が先に立って歩くのに付き従う赤松だった。

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遼州戦記 播州愚連隊 57

 赤松忠満准将は第三艦隊司令室で画面の中のかつての友に苦い表情で接していた。
「俺は知らん」 
 先日飲み明かした安東貞盛はそう言うと下を向いた。
「あのなあ、ワシは貞坊を責めるつもりで言うとるわけやないで。清原はんのすることに色々言いたいのはほんまやけどそれをすべて貞坊が把握し取るとは思うてないわ」 
 時に激しそうになるのを抑えながら赤松は言葉を続けようとして口ごもる。
 越州コロニーの鎮台府の艦隊が濃州に向かっていることは二人とも知っていた。そしてその濃州は二人の親友だった斎藤一学の領邦であり、今は彼の妹の明子や忘れ形見のトメ吉の子光子が住むコロニーとして思い入れのある場所だった。
「城さんがあそこのコロニーに含むところがあったのは昔からだ。そして清原さんは城さんとは親しい。俺がどうこうできる関係じゃないんだ」 
 そう言い訳をする画面の中の友。赤松も知っていた。安東がどうこうできる話ではない。確かに安東の『胡州の侍』の異名は烏丸派の陣営を固めるために宣伝されている重要な売り文句のひとつだった。そして彼を慕う多くの士官達がそんあ安東を持ち上げており、その様子に清原准将が一目置いているのは事実だった。だがそれは大局を動かすほどのことではなかった。
 胡州はテラフォーミング化した遼州星系第四惑星と二つの衛星、そして衛星軌道上の十七のコロニー群と明日テロイドベルトの二十三のコロニー群で構成されている。物資を東和や外惑星コロニーに頼っているアステロイドベルトコロニー群では烏丸派の支持は少なくその中で越州は孤立していた。しかし、他のコロニーの防衛艦隊は現在外惑星の動乱の仲裁のためはるか遠くに展開している。その状態で烏丸派の清原准将が親友の城一清提督に決起を依頼することは別に不思議な話でもなかった。
「どうしても……どないしても戦争にしたいんか?戦争がそんなに好きなんか?貞坊……」 
 答えなど求めていないと言うように赤松がつぶやく。
『すまん』 
 それだけ言うと安東は通信を切った。
「一人で苦しむなや……苦しんでどないすんねん。洋子や光子を殺すことになるかもしれへん城さんの行動を阻止でけへんことはお前のせいやないんや」 
 赤松はそう言うと伸びをした。執務室の応接用ソファーには赤松の片腕である別所が静かに座っていた。二人の目が合う。そして大きなため息が赤松の口から漏れた。

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遼州戦記 播州愚連隊 56

「ああ……予想はしとったけどなあ」 
 明石は教導部隊の隊長室の机に足を乗せて目の前の端末を眺めていた。隊員達も席に座ってそれぞれに端末に目を走らせていた。流れているのはニュース。そこでは越州鎮台府の城一清大佐が西園寺政権を認めずに篭城に入ったと叫ぶアナウンサーの声が響いていた。
「やはりあそこは動きますが……恐らくつぶしにかかるとしたら濃州ですよ」 
 ソファーに腰掛けて楓が茶を啜っている。『濃州』と言う言葉に明石の顔はさらに苦々しいものへと変貌した。
「まあある程度予想してた話やから。城はんと言えば清原はんの数少ない親友ちゅうことになっとる。恐らく囮を頼まれたんやろな」 
「囮?」 
 少し不思議そうな表情を浮かべて自分を見つめてくる楓にまだ予科の初等科と同じ年だという幼さが見えて明石は苦笑した。
「今、城氏討伐に動ける軍は限られとる。赤松はんの第三艦隊、醍醐はんの近衛師団のどちらかやろなあ。池はんの四条畷鎮台は国際宇宙港の防衛が一番の優先課題やさかい動かんちゃうか?どれも西園寺はんにはお世話になっとる方々や帝都を西園寺派が留守にすることになる」 
 明石の言葉に楓は納得したように頷いた。
「赤松公が動けばそのまま首都防衛が主任務の佐賀高家侯爵の強襲戦術部隊で帝都を制圧。そのまま比較的清原氏に近い立場の池氏の四条畷港から宇宙に上がって第三艦隊を挟み撃ちにするわけですか」 
 納得したように楓はうなづいた。
「ただそうすると問題は南極基地を醍醐はんの部隊が制圧するのにどれだけ時間がかかるかやな。池はんは先の大戦ではたいした功はあげてないよって必死で来るで。しかも醍醐はんは徹底的にお人よしやさかいのう」 
 明石はそう言うと天井を見上げた。
「出撃準備は必要でしょうか?」 
「まあ心の中だけにしておいたほうがええやろな。実際何事もあらへんのが一番や」 
 そう言いながらも明石は半分以上このまま動乱が始まるのを予期していた。そしてそれを心待ちにしていたような自分にも気が付いていた。先の大戦。特攻隊の隊長として死ぬはずだった自分が今まで生きてきたことに時々後悔する自分に驚く日々。そしてその意味を見出せるような今回の政治と軍事の混乱。
『死に場所を見つけたんとちゃうか……』 
 心の中でそう思いながら真剣な視線を浴びせてくる楓に笑顔をこぼした。

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