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遼州戦記 保安隊日乗 時は流れるままに 60

 写真にひきつけられる誠達。ようやくカウラが口を開いた。
「エルマ。これは……」 
 カウラも意味がわかってまじめな顔でエルマに向かう。
「部下が撮影したものだ。私もこの少年と嵯峨特務大佐とのつながりを見つけたのは偶然でな。たまたまテレビでやっていたこの前の大戦の映像を見てピンと来ただけだったが……」 
 そんなエルマが要を見つめる。
「あれ?ジョージ君がどうしてこんな偉そうなかっこうしてるの?」 
 キムとエダをいじるのに飽きたアイシャがサラとパーラを引きずって誠の端末まで来るとそう叫んだ。その言葉で誠もこの少年のことを思い出した。寮の近くで何度か見かけた少年。その憎たらしい態度に頭にきたことは何度か有った。
「ジョージ君?知り合いか何かなのか?」 
 ランの言葉ににんまりと笑って頷くアイシャ。
「ええ、うちの寮の近くの子らしくて時々遊びに来るわよ」 
 そこまでアイシャが言ったところで要が飛び起きてアイシャの襟首を掴み上げる。そのままぎりぎりと締め上げていく要。アイシャはさすがに突然の攻撃に正気を取り戻して要の腕を掴んで暴れる。
「おい!なんでアタシを呼ばなかった!こいつは!」 
「苦しい!助けて!でもカウラちゃんも誠ちゃんも知ってるわよねえ。時々遊びに来る……って苦しい!」 
 アイシャがもがくのを見て要は手を放す。そして彼女の視線は自然と誠の方を向いてきた。
「え?確かに見たことがありますけど……でも……」 
「でもじゃねえんだよ!アメちゃんの外ナンバーの車に乗ってる叔父貴と同じ顔をした餓鬼。これだけで十分しょっ引いたっていい話になるんだぞ」 
 誠を怒鳴りつける要の肩を叩くラン。
「なんだ!姐御も怒れよ。こいつ等……」 
 ランは冷静な表情で階段の方を指差す。そこには要の怒鳴り声に気づいたロナルドが死んだような目をして部屋を覗き込んできていた。
「合衆国がどうしましたか?」 
 再び死んだ青い瞳が二階の宴会場をどん底の気分に叩き込んだ。
「そのーあれだ!大使館かCIAの連中が……」 
 要の一言。だが、どちらもロナルドが籍を置く海軍との間には軋轢がある。
「そうですよね。あいつらはいつだって好き勝手やるんだ。他にも陸軍の連中が……」 
「ささ、スミス大尉。お話は下で」 
 島田がそう言ってロナルドの肩を叩く。何かろれつが回らない調子で叫んでいるロナルドを見送る誠達。
「ったく……で。この餓鬼の身元。どこまで割れてんだ?」 
 すっかり場を仕切り始めたランの鋭い視線がエルマに飛んだ。

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遼州戦記 保安隊日乗 時は流れるままに 59

「少佐!止めてください少佐!」 
 キムの叫びが響く。割り箸でキムの頭をむやみに突きまわすアイシャ。それを苦笑いを浮かべながらエルマは眺めていた。
「楽しそうな部隊だな。ここは」 
 半分以上は呆れていると言う顔の彼女に合わせて無理のある笑みを浮かべるカウラ。
「あんた、何か言いたいことがあってこいつに声をかけたんじゃねえのか?」 
 タコの酢の物に手を伸ばした要の言葉にエルマは表情を切り替える。
「ああ、そうだ。今夜は例のカネミツが搬入されるらしいな」 
「どこでその情報を?」 
 カウラの問いにエルマは首を振る。
「機動隊の方と言うことは警備任務があったんじゃないですか?」 
 誠が適当に言った言葉に頷き、そのまま腕の端末に手を回す。
「神前曹長はなかなか鋭いな。私は新港でのカネミツの荷揚げ作業の警備担当だった」 
「だけどそれだけで私に声をかけたわけじゃないんだろ?」 
 カウラの言葉を聞きながら端末の上に浮かぶ画面を検索しているエルマ。
「何も無ければ……確かにな。貴様のことなど忘れていたかもしれない」 
 そう言って笑みを浮かべるエルマが端末の上に画像を表示させた。
 闇の中に浮かぶ高級乗用車。見たところ東和では珍しいアメリカ製の黒塗りの電気自動車である。そこには少年が一人、窓の外に顔を出した運転手のサングラスの男の顔も見える。
「外ナンバーか……新港。監視している連中がいたところで不思議は無いな」 
 カウラはそう言って自分の端末にその写真をコピーした。それをわざわざ立ち上がって覗き込む要。しかし、それを見た要の表情が急に変わった。
「おい、叔父貴じゃねえの?この餓鬼。いつの間にか小さくなっちゃって……誰かみたいに」 
 誠もカウラもしばらくは要の言葉の意味が分からずに呆然としていた。
「おい、あたしにも送れ!」 
 上座で一人仲間はずれにされていたランが叫ぶ。要はしばらく呆れたように頭を掻くと自分の端末を起動させて、すぐに画像データを検索しその画像を三人の腕の端末に転送した。
 そこにはまるで中国の古代王朝の幼帝といった雰囲気の少年が映っていた。明らかに先ほどの少年と比べるとひ弱でか細い印象があるが、同一人物と思いたくなるぐらいに似通っていた。
「これは?誰だ」 
 カウラの一言に呆れたようにため息をついた要。そして彼女はそのまま自分の座っていた席の前に置かれていたグラスを手にとって口に酒を含む。
「遼南の霊帝……ムジャンタ・ラスコー陛下。つまり叔父貴本人だ」 
 要の言葉にカウラと誠はしばらく思考が停止した状態になっていた。

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遼州戦記 保安隊日乗 時は流れるままに 58

「そう言えばクリスマスの話はどうしたんだ?」 
 誠に媚を売るアイシャの姿に、苛立ちながらそう吐き捨てるように口を開いた要。彼女の方を向いたアイシャは満面の笑みで笑いかける。
「なんだよ気持ちわりいなあ」 
 そう言って引き気味にジンの入ったグラスを口にする要。そんな要が面白くてたまらないというようにアイシャは指差して誠に笑いかける。
「あの、クラウゼさん。人を指差すのは……」 
「誠ちゃんまで要の味方?……私の味方は誰もいないのね!」 
 大げさに肩を落としうつむくアイシャ。サラとパーラが複雑な表情で彼女を見つめていた。一方で下座の鉄板ではすっかり二人だけの雰囲気を作りながらエダとキムがたこ焼きを突いて微笑みあっている。
「クリスマスねえ。クラウゼも少しは素直にパーティーがしたいって言えばいいのによー」 
 ランは一人、エイ鰭をあぶりながらビールを飲んでいる。
「だって普通じゃつまらないじゃないですか!」 
 そう言ってランの前に立ち上がるアイシャ。ここで場にいる人々はアイシャがすでに出来上がっていることに気づいていた。
「つ……つまらないかなあ」 
 さすがに目の据わったアイシャをどうこうできるわけも無く。口ごもるラン。誠が周りを見ると、要は無視を決め込み、カウラはエルマとの話を切り出そうとタイミングを計りつつ烏賊ゲソをくわえている。
 パーラとサラ。本来なら酒の席で暴走することが多いアイシャの保護者のような役割の二人だが、完全に彼女達の目を盗んで飲み続けて出来上がったアイシャにただじっと見守る以外のことは出来ないようだった。
「やっぱりクリスマスと言うと!」 
 そう言うとアイシャはランの前にマイクを気取って割り箸を突き出す。
「そうだなー、クリスマスツリーだな」 
「ハイ!失格。今回はカウラちゃんのお誕生日会なのでツリーはありません!」 
 ハイテンションでまくし立てるアイシャ。その姿をちらりと見た後、ランは腹を決めたように視線を落とした。
「じゃあ次は……」 
 得物を探して部屋を見渡すアイシャ。偶然にも笑い会っていたキムの視線がアイシャとぶつかってしまった。顔全体で絶望してみせるキムに向かってアイシャは満面の笑みでインタビューに向かった。

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遼州戦記 保安隊日乗 時は流れるままに 57

「私に気を使う必要は無いぞ」 
 呼ばれたからと言うことで誠を気遣うエルマの言葉だが、さすがにカウラ達は下の階の葬式のような雰囲気に付き合うつもりは無かった。
「気にするなって。個人的なことに顔を突っ込むほど野暮じゃねえから」 
 鬱陶しい空気を纏ったロナルドの雰囲気がうつっていた誠の肩をバシバシと叩く要。
「そうか?」 
 要の言葉にランは小さな彼女が持つと大きく見える中ジョッキでビールを飲んでいた。それを心配そうに見つめているエルマ。
「ああ、大丈夫ですよ。クバルカ中佐は二十歳過ぎていますから」 
 なだめるように言った誠をランがにらみつける。
「悪かったな。なりが餓鬼にしか見えなくて」 
 ギロリと誠をにらむラン。確かにその落ち着いた表情を見ると彼女が小学一年生ではなく、司法執行機関の部隊長であることを思い知らされる。誠の額に脂汗がにじんだ。
「そんなこと無いですよ!」 
 ふてくされるラン。その様子をいかにもうれしそうに見つめているアイシャ。彼女にとって小さい身体で隊員たちを恫喝して見せる様子は萌えのポイントになっていると誠も聞いていた。このままでは間違いなくアイシャはランに抱きついて頬ずりをはじめるのが目に見えていた。
「それより、もしかしてエルマさんの誕生日も12月24日なんですか?」 
 焦って口に出した言葉に後悔する誠。予想通りエルマは不思議な生き物でも見るような視線をまことに向けてくる。
「誕生日?」 
「どうやら起動した日のことを指すらしいぞ。まあ、エルマの起動は私よりも二週間以上遅かったな」 
 カウラの言葉で意味を理解したエルマがビールに手を伸ばす。
「そうだな。私は一月四日に起動したと記録にはある。最終ロットの中では遅い方では無いんだがな」 
 エルマの言葉を聞きながら誠は彼女の胸を見ていた。確かにカウラと同じようにつるぺったんであることが同じ生産ラインで製造された人造人間であるということを証明しているように見えた。
「あれ?誠ちゃん……」 
 誠の胸の鼓動が早くなる。声の主、アイシャがにんまりと笑い誠の目の動きを理解したとでも言うようににじり寄ってくる。
「レディーの胸をまじまじと見るなんて……本当に下品なんだから」 
「見てないです!」 
 叫んでみる誠だが、アイシャだけでなく要やサラまでニヤニヤと笑いながら誠に目を向けてくる。
「こいつも男だから仕方がねえだろ?」 
「そうよねえ。でもそんなに露骨に見てると嫌われるわよ。ねえ、カウラちゃん」 
「ああ……」 
 突然サラに話題を振られて動揺しながら烏龍茶を飲むカウラ。それぞれの鉄板の上ではお好み焼きの焼ける音が響き始めていた。
「早く!誠ちゃんの烏賊玉、出来てるわよ」 
「え?アイシャさん焼いちゃったんですか?」 
 誠は驚いて自分の空になった材料の入ったボールを見た。その前の鉄板には自分のミックス玉を焼きながら誠の烏賊玉にソースを塗っているアイシャがいる。
「もしかして迷惑だった?」 
 落ち込んだように見上げてくるアイシャ。それがいつもの罠だとわかっていてもただ愛想笑いを浮かべるしかない誠。
「別にそう言うわけでは……」 
 そう答えるしかない誠。アイシャの表情はすぐに緩んだ。そしてそのままこてで誠の烏賊玉を切り分け始めた。

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遼州戦記 保安隊日乗 時は流れるままに 56

 誘われるままに誠は階下に下りた。そこには島田とキム、菰田に囲まれて赤い顔をして酒を飲み下しているロナルドの姿があった。その目だけ死んでいる上官の姿にすぐに誠は後悔の念に囚われていた。
「よう!」 
 島田が手を上げる。その複雑そうな笑みに弱ったように誠は軽くそれに答えながら近くの空いた椅子を運んで彼らの隣に腰掛ける。
「やっぱりノーマルがいいですよね。エンジンは下手にいじると……」 
 誠はそう言ってカラカラと笑うがさらに場の雰囲気は冷たくなった。
「それが……」 
 島田が口を開く。ロナルドはその表情を見ながら皮肉めいた笑みを浮かべた。
「なかなか調整がうまく行かなくてね。しばらく時間はかかりそうなんだ」 
 焼酎入りの炭酸を飲み終えた菰田の言葉。さらに場は落ち込んでいく。島田の頬が引きつっている。ロナルドは目の前のウィスキーのグラスを傾けている。
「でも調整とかはうちの機材で……」 
「さすがの俺も無理だわ。しばらくは搬入した新型の調整で動けなくなる」 
 島田の言葉がさらに落ち込んだ空気に止めを刺す。キムは笑ったままロナルドを見つめている。ぼんやりとした表情でホルモンを転がすロナルド。
「でも……」 
「ああ、お前さんにはわからんか。じゃあ上に行ってこい」 
 島田の一言。もうたまらなくなって立ち上がる誠。
「すまないな。俺の個人的な問題だと言うのに」 
 ロナルドは強がった笑みを浮かべる。階段の上の階から何度と無く誠を呼ぶのは要とカウラ。二人ともとりあえずいじる対象として誠を呼んだだけあって少し緊張したような調子の声が響いている。
「申し訳ないですね」 
 そう言うと座っていた椅子を元の位置に戻す誠。
「君の気にすることじゃない」 
 強がるようにロナルドが吐いた言葉になんとなく勇気をもらえた誠はそのまま彼らを置いて二階へと上がった。
「大丈夫なのかよ……」 
 弱ったように誠に囁く要。カウラも大きなため息をつく。
「大丈夫には見えないだろうが。それより島田はこんなことをしていて良いのか?」  
「明華の姐御が気を使ったんだろうな。大変だな島田の奴も。たぶんこのままとんぼ返りで隊に戻ってカネミツの整備手順の申し渡しとかをやるんだろうから……つらいねえ」 
 そう言うと要は階下の男達を見捨てるように座敷の自分の鉄板に向かった。

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