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遼州戦記 播州愚連隊 160

「撤退やて?」 
 明石は機体の状況確認を終えた画面を見ながらつぶやいていた。
『どうしたんだろうな。もう一波攻撃を仕掛けられたら……負けてるぞ』 
 そんな魚住のつぶやきに頷く明石。安東の部隊を半分以上片付けたが部下は一人として生き残ってはいなかった。二人とも周りの機体の残骸を見ながら静かにヘルメットを脱いだ。
「こらまあ……悲惨やな」 
 周りには数知れぬデブリ。それが昨日まで笑っていた人間の操縦していた機体だったとはとても思えない状況だった。
『明石、魚住。すぐ帰等しろ。追撃戦の準備に当たるぞ』 
 別所の冷静な言葉に思わず明石は熱くなるところだった。
「死んだんやで……人が一杯死んだんやで」 
『分かっているが感傷に浸れるほど世の中が甘くないのは貴様も知っているだろ?』 
 淡々とつぶやく別所の顔を見る。すでに割り切ったと言うような表情の黒田がヘルメットを被っていた。
『晋一よう。俺にも一分ぐらい部下の弔いの黙祷をする時間をくれよ』 
 魚住の言葉に明石も大きく頷いた。
『まあいいだろう。だが時間は何よりも貴重なのを覚えておけ』
 別所はそう言うと通信を切った。
「あいつも辛いんや。わかったげなあかんで」 
『言われねえでも分かってるよ』 
 魚住はそう言うと目を閉じうつむく。明石も僧職に有ったものらしくポケットに入れていた数珠を取り出すと金属片の散らばる空間を見つめて静かに手を合わせた。


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テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
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遼州戦記 播州愚連隊 159

「帰等しろだと!ふざけるな!」 
 叫んだ安東だがすでに左翼の戦線は切り崩されていた。対艦装備の火龍は多くが落とされ、無事な機体は補給中。自分の機体の火器は弾切れ。サーベルで駆逐艦を大破させるのが精一杯だった。
『大佐。運が無かったんです。引きましょう』 
 秋田の顔がしたり顔に見えて思わず殴りたくなる衝動を抑えて安東はうなだれた。
「殿(しんがり)はうちが勤める。各機に帰等命令を出してくれ」 
 諦めたようにつぶやくと煙を上げつつも平然と戦闘を続けている赤松の乗艦『播磨』を一瞥した。
「よくできる部下だ。うらやましい限りだよ」
 それだけ言うと安東は帰途につこうとした。だが目の前には隊長機の三つ巴紋のエンブレムの機体が立ちはだかる。
「明石とか言ったな」 
 すぐさま安東へのサーベルの一撃が打ち込まれる。何とかそれを交わして背後を取ろうとするがすでに敵の機体は正面を向いていた。
「読みがいいパイロットだ。将来有望だな」 
 自然に笑みがこぼれるのを感じながら再び斬撃を打ち出してくる相手の動きを丁寧に交わす。
『逃げる気ですか!』 
 泉州訛りのアクセントで叫ぶ若者。その姿に安東の頬は自然と緩んでいた。
「今は貴官とじゃれているわけにはいかないのでな」 
 再び距離をとる安東。だがすぐに明石とか名乗ったパイロットの機体が間合いを詰めてくる。
「読めてるぞ」 
 何も無いはずの空間と思った明石の期待が煙幕に包まれる。
『S-マイン!』
 それだけ叫ぶがすぐにその煙に含まれたチャフですべてのセンサーがエラーを起こして動きを止めている。
「後で遊んでやるよ」 
 捨て台詞を吐くと安東は撤退していく味方部隊に続いて撤退を開始した。


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遼州戦記 播州愚連隊 158

「今度はどうした!」 
 衝撃にずり落ちた椅子にしがみつく清原。シートベルトをしていたオペレータが焦りつつキーボードを叩く。
「今度は第三艦隊です!」 
「何だって!」 
 清原が叫ぶのももっともだった。すべての第三艦隊の船はアステロイドベルトにある。そう信じ込んでいた参謀や清原達。だがその一部艦隊が下方に展開し射撃を始めていた。
「どうした!監視は何をやっていた!」 
「国籍不明の貨物船が浮かんでいるのでそれと誤認したような……」 
「そんな詐欺のような真似をあいつがするか!」 
 清原はようやく椅子に座りなおし帽子を直しながら叫ぶ。実際下方を貨物船が行き来していたのは事実だった。だがレーダーにはそれとは別の三隻の高速駆逐砲艦の姿を映していた。
「慢心があったか……」 
 搾り出すようにして清原は言葉を吐き出した。周りの参謀達も明らかに動揺した様子で拡大される高速艦の動きに目をやっていた。
「艦載機は戻せんのか?」 
「いや、今戻せば中央は完全に抜かれてこちらは丸裸だ」
「だがここで打撃を受ければ立ち直れんぞ」 
 口々に叫ぶ参謀達。清原はそこで初めて彼等がまるで役に立たない存在だと言うことに気づいた。
「左翼は……羽州艦隊はどうなっている!」 
 清原の言葉にオペレータが左翼の状況をモニターに映す。そこには明らかに苦戦中の安東のアサルト・モジュール三式の姿が映っていた。
「終わったな……」 
 あたりに聞こえないようにつぶやくと清原は視線を落とした。


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遼州戦記 播州愚連隊 157

「『榛名』、『妙高』中破!さらに……」
「わざわざ言わなくても見れば分かる!」 
 いつの間にか清原は立ち上がっていた。互角の戦いに展開できる、そう考えた矢先に先導艦があらぬ方向から攻撃を仕掛けられた。
「赤松さんは予想がついていたようですね……」 
 眼鏡の参謀の言葉に首をひねる清原。
「おかしい、そんな……射撃地点は特定できないのか?」 
「駄目です!データが少なすぎます!」 
 オペレータの言葉に歯を噛み締めながら清原は席に着くしかなかった。
「こちらも本腰を据えてかかるべきかと……」 
 長身の参謀の言葉に頷く清原、だが次の瞬間清原は気がついたように背後に立つ秘書官に声をかけた。
「佐賀君の泉州艦隊があるだろ!連絡をつけろ!できれば直接通信で……」 
「足元を見られますよ」 
「かまわん!負ければすべてが終わるんだ!」 
 秘書官を怒鳴りつける清原の姿には冷静さは微塵も無かった。秘書官は慌てて会議室を飛び出す。
「彼の言うことももっともだ。戦後に影響を与えます……」 
 長身の参謀がそこまで言ったところで言葉を飲み込んだ。悪意に満ちた清原の視線。それこそ自分が戦後に立場を失うだろうと思って口をつぐむ。
「どうしたんだ……赤松はしばらくは撃ってこない。そう言ったのは誰かね……」 
 周りを見回す清原。彼の目には誰も彼もが自分を裏切ろうとしているように見えた。
「保科公の恩を忘れて暴走する輩がいれば私は決して容赦はしないからな。君達がここにいるからと言ってそれが免罪符になるとは……」 
 その時船が大きく揺れて叫んでいた清原の体は大きく背もたれに叩きつけられた。


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遼州戦記 播州愚連隊 156

「吉田ー。何とか当ててるねえ」 
 巨大な重力波レールガンを支えるアサルト・モジュール。その20メートル弱の機体の三倍の砲身が再び光り始めた。
『隊長!二発は無駄にしていますよ』 
 吉田と呼ばれた男はそのレールガンと接続されたエネルギーユニットを操作しながら苦笑いを浮かべていた。
「しょうがねえだろ?俺は生身なんだからさ」 
『まあ四隻目。確実に当ててくださいね』
 特徴の無い顔の吉田の言葉に頷く隊長と呼ばれた男。嵯峨惟基はパイロットスーツではなく遼南帝国大元帥の制服を着て目の前の狙撃用照準機を覗き込んでいた。
「おっと……新型の宮古級の揚陸艦か?贅沢すぎるねえ」 
 そう言うとトリガーを引き絞る。すぐに飛び出した黒い弾丸はそのまま大型揚陸艦の中央部に命中し船は真っ二つになった。
「貞坊……いや安東貞盛大佐。俺は貴様と赤松の喧嘩に手を出すのはどうかと思ったんだが……清原と烏丸。あの二人に政権を渡されると色々困るんだ」 
 つぶやきながら爆縮を終えたカートリッジを排出して次弾を装てんする。一瞬カートリッジから黒い煙のようなものが流れ出る。その煙が嵯峨の専用機『カネミツ』の表面に陽炎のようなものを浮かび上がらせた。
『後いくつくらい沈めますか?』 
 吉田からの通信に苦笑いを浮かべる嵯峨。
「あと二、三隻だな。それ以上はさすがの清原さんも俺の存在に気づくだろうしな」 
 そう言うと装てんしたカートリッジの状況を確認する画面を起動させる嵯峨。
「忠さん。これで負けたら俺は知らんぞ」 
 嵯峨は静かにそう言った後でタバコを胸のポケットから取り出した。


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