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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 40

「恐らくはそうでしょう。ですが・・・」 

 そう言うと茜は従姉に当たる要に目を向けた。要は首筋のジャックにコードをつなげてネットワークと接続している最中だった。

「どの事件も発生場所は東都東部に集中しているな。それに時間も夕方6時から夜中の12時まで。同一犯の犯行と考えるべきなんじゃねえの?」 

「馬鹿にしないでください。それくらいのことは捜査官もわかってお話しているんです!」 

 不愉快だと言うようにラーナが叫ぶ。茜は彼女の肩を叩いて頷きながらなだめて見せた。

「でもそれならうちよりも所轄に頼むのが適当なんじゃないですか?うちは豊川ですよ。どんなに急いでも半日は無駄にしますから。それに先日の厚生局事件の時に活躍した東都警察の虎の子の航空法術師部隊を待機させてローラー作戦でもやれば一発で見つかるでしょ?」 

 アイシャの言葉にもっともだと誠も頷く。

「反対する理由は無いな。クラウゼの言うことが今のところ正しく見えるのだが・・・」 

 カウラも同意しているのを見て要はやる気がなさそうに端末につないでいたコードを引き抜く。

「オメー等の言うとおりだが一つ大事なことを忘れてんぞ。東都警察がこの種の事件に興味を持っていればって限定が入るんじゃねーのか?アイシャのような捜査手法をとるにはさー」 

 ランの一言。見た目は8歳くらいにしか見えなくても保安隊副長の肩書きは伊達ではなかった。そして自分達が遼州同盟の司法捜査官であり東都警察の捜査官と違うと言う現実に目が行った。

「どれも他愛の無い悪戯程度で済んでいますが・・・こういう愉快犯はいつか暴走して・・・」 

「要は大事になる前に捕まえろってことか?面倒だなあ。どうせならこっちに引っ越して来てくれるといいんだけど」 

「そんなに都合よく行くわけ無いだろ?」 

 要の言葉に突っ込むカウラ。そのいつもどおりの情景に誠はいつの間にか癒されるようになっていた。

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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 39

「そろったと言うことで」 

 ホワイトボードの前に立つ茜が室内を見回す。

「まあな。それじゃあ何のためにアタシ等が呼ばれたか聞かせてもらおうか」 

 要の声に微笑みで返す茜。

「実は最近演操術系の法術を使用しての悪戯のようなものが多発していますの」 

 紺の東都警察の制服が似合う茜。以前の主にこの豊川保安隊駐屯地に詰めっぱなしだったときの東和陸軍と共通の保安隊のオリーブドラブの制服とは違う新鮮な姿に誠は惹きつけられていた。

「演操術系?あのクリスマス前後にアタシ等が城東で片付けたような連中か?」 

 要の問いに首を横に振ると茜はなにやら端末を叩いている助手のカルビナ・ラーナ巡査に目を向けた。

 白いボードに何かの映像が映る。焼け焦げた布団。ばっさりと切り裂かれた積み上げられたタイヤの山。ガードレールが真っ二つに裂かれているのにはさすがの誠もぎょっとしてしまった。

「ごらんのように小火や器物の損壊で済んでいますが・・・」 

「おい待てよ」 

 話を進めようとする茜を要が不機嫌な表情で止めた。

「パイロキネシストとか空間干渉能力者の仕業だろ?なんで演操術の話が出て来るんだよ」 

「お前は馬鹿か?」 

 立ち上がって叫ぶ要にポツリとつぶやくカウラ。要は完全にカウラの言葉に切れていつものように一触即発の雰囲気が漂う。島田とアイシャはとりあえずいつ要がカウラに飛び掛ってもいいように身構えているのが誠からすると滑稽に見えて噴出してしまう。

「神前君。不謹慎よ」 

 同じくにやけながら噴出した誠をサラがいさめる。

「例の他の法術師の力を使う奴か?」 

 一人離れた場所からこの様子を見ていたランの言葉に茜は大きく頷いた。

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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 38

 一人きりになりようやく安心してズボンに足を通す誠。そのままワイシャツを着てボタンをつける。

「まだかー」 

「まだですよ」 

 待ちきれない要が外で叫ぶ。その隣であくびをしているアイシャの吐息が聞こえる。誠はワイシャツの腕のボタンをつけてさらにネクタイを慣れた手つきでしめると上着を羽織り、バッグを片手に扉を開いた。

「よし、行くぞ」 

 ようやく出てきた誠を一瞥すると要はそのまま歩き始めた。

「本当に気が短いんだから」 

「何か言ったか?」 

「べーつーに・・・」 

 振り返る要にとぼけてみせるアイシャ。いつものように運行部の扉の前にある階段を上がり、医務室と男女の更衣室が並んでいる二階の廊下を歩く。誰もいない廊下に足音が響き。誠達はそれを確認しながら会議室の扉の前に立った。

 アイシャがノックをする。

「どうぞ」 

 澄んだ声。嵯峨の双子の娘の姉、嵯峨茜警視正の声が響く。そのまま開いた扉の中を見れば振り返るカウラと法術特捜担当ということで呼び出された実働部隊長のクバルカ・ラン中佐の幼い顔があった。

「西園寺。そんなに急かす必要なんてねーんだぞ」 

 ランの言葉にむっとした表情のまま彼女の隣の椅子にどっかと腰を落ち着ける要。その大人気ない様子にカウラは大きくため息をつく。

「さあ、皆さんそろったんですから・・・」 

 なんとか和ませようと中腰で仲介するのは技術部の整備班長の島田正人准尉。隣にいるアイシャの部下のサラ・グリファン少尉も雲行きの怪しい誠達のとばっちりを避けたいというように頷きながら要を見つめていた。

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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 37

「あのー西園寺さん」 

「なんだ?」 

「パンツを履きたいんですけど」 

 シャワーのブースの中でじっとしている誠を見て要は急に顔を赤らめた。

「散々見せられてるから平気だよ。さっさと着替えろ」 

「ふーん。こうして一歩誠ちゃんと仲良くするわけね」 

 突然の言葉に誠も要も驚いて入り口に視線を向けた。満足げな表情のアイシャが全裸の誠をまじまじと見ていた。

「クラウゼ少佐・・・」 

「さっき要ちゃんが言った通りじゃない。私も見慣れてるから平気よ」 

「僕が平気じゃないんです!」 

「へ?」 

 呆れたような顔に変わったアイシャの表情。明らかにそれが作ったような顔なので要はその頭をはたいた。

「痛いじゃない!」 

「くだらねえこと言ってねえで仕事しろ!資料を取って来いとか言われてたろ?」 

「それは要ちゃんも一緒じゃないの。このまま全裸の誠ちゃんを押し倒して・・・」 

「誰がするか!」 

 入り口でにらみ合う二人。誠は仕方なく飛び出してバッグから換えのパンツを取り出し無理に履いた。体を拭いていないので体に付いたお湯が冷えて水になってパンツにしみこむ。

「誠ちゃん風邪引くわよそんなことしていると」 

「お二人が出て行けばこんなことはしなくて済んだんですよ!」 

「もしかして私のせい?」 

 要と誠にそれぞれ視線を向けるアイシャ。二人が頷くのを見ると次第にすごすごと入り口に向かうが、当然のように要の袖を引いている。

「外で待ってるからとっとと着替えろ」 

 それだけ言うと要は入り口の引き戸を閉めて外に出て行った。

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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 36

「不潔って・・・」 

「だってそうじゃないですか!クラウゼ少佐とホテルに入った所を菰田曹長が見たって噂ですよ!」 

「は?」 

 誠は呆れるしかなかった。菰田邦弘主計曹長。管理部門の経理部主任の事務方の取りまとめ役として知られる先輩だが、彼は誠の苦手な人物だった。ともかく彼の率いる誠の上官カウラ・ベルガー大尉の平らな胸を褒めたたえる団体『ヒンヌー教』の教祖を務めていて部隊に多くの支持者を抱えていた。

 カウラも明らかに迷惑に思っているが、それを利用して楽しむのが運行部のアイシャ・クラウゼ少佐の日常だった。間違いなくでっち上げたのはアイシャ。そしてそれに乗って騒いでいるのが菰田であることはすぐに分かった。

「あのさあ。そんなこと信じてるの?」 

 体を拭き終えてパンツをはき終えたアンに尋ねてみる。そのままズボンを履くと気が付いたように誠に顔を向けた。

「そうですよね。そんなことやる甲斐性は先輩には無いですからね」 

「甲斐性が無いってのは余計だよ」 

 そこでにやりと笑うアン。誠もしばらくは笑顔を向けていたが、そのアンの表情が次第に真顔に変わるのを見て目をそらした。

「本当に僕のこと嫌いなんですね」 

 悲しそうにそう言うとアンはワイシャツのボタンをはめ始める。

 沈黙。これもまた誠に重く圧し掛かった。

『早く来てくださいよ!西園寺さん!』 

 心の中で願う。一秒が一時間にも感じるような緊張が誠に圧し掛かる。そんな彼に熱い視線を投げて着替えているアン。

「おーいこれ!」 

 引き戸が開き要が誠の勤務服を投げてきた。

「有難うございます!」 

「はあ?濡れちゃったみたいだけどいいのか?」 

 誠は要の到着を確認すると涙を流さんばかりに自分のシャツに手を伸ばした。

「まあいいか。アン!楓が探してたぞ!」 

「ああ、すいません」 

 着替えの終わったアンは要の言葉にはじかれるようにして飛び出していった。


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