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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 70

「まあそんな大手に割高な仲介料を払えない連中となると・・・駅前の三件はかなり法術師にはつらいですからね」 

 男はそう言うと静かにタバコを取り出した。嫌そうな視線を向けるカウラだが、要がそれへのあてつけのように自分のジッポライターを取り出す。

「すいませんね・・・」 

「こんなサービスはテメエじゃ無理だったろ?うれしいか?」 

 要がかつて胡州陸軍特殊部隊員として東和の沿岸部の租界での非合法物資の取引ルートを巡る利権争い『東都戦争』で潜伏して娼婦として情報収集を行なっていたことを誠にも思い出させた。

「となると・・・南商店街の二件」 

「ああ、そこはうちじゃないですが・・・堅気じゃない連中が関わってますから」 

「おう、参考にするわ」 

 要は男の指定する店にしるしをつける。そしてそのまま画面に映る商店街の店を眺めながらスクロールさせた。

「かなり絞り込めるな・・・今回の事件の犯人。手口からして素人。そうなるとここみたいな危ない経営者のいるところは避けるだろうから・・・」 

「姐さん。勘弁してくださいよ」 

 淡々と自分を斬って捨てた要に泣きを入れると静かにタバコをふかす。

「でも私もそうだけど分かるの?不動産屋のどれが危ないとか、どこが法術師には紹介しないとか」 

 アイシャの言葉に一瞬要の手が止まった。

「オメエ・・・この店の経営者がこいつだって分からなかったのか?」 

「そういう事がすぐ分かるのは西園寺くらいの経験が必要だろうな」 

 そう言うとカウラは自分の顔に向けて流れてくるタバコの煙を仰ぐ。そして要はしばらく放心したように黙り込んだ。


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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 69

 そしてそのまま応接室のようなところに通された。誠は贅を尽くした部屋の調度品に目を奪われた。

「おい、儲かるんだなあ・・・不動産屋は」 

 要の嫌味にただ乾いた笑いを浮かべながら男はソファーに腰掛けた。

「ああ、お嬢と・・・連れの方」 

 男は手でソファーに座るように合図する。にんまりと笑った要はそのまま中央にどっかりと腰を下ろした。

「忙しい中来てやったんだ。茶ぐらい出せよ」 

「わ・・・わかりました」 

 そう言うと男は振り返り大きすぎる社長の机の上のボタンを押した。

「お前さんなら聞いたことはあるんじゃないか?法術師適正のある人に部屋を貸すのを拒否している業者があるそうじゃないか」 

 悠然とタバコを取り出す要。カウラとアイシャが嫌な顔をするが男は気を利かせたように応接セットの大きなライターに火をつけて要に差しだす

「ああ・・・この業界もいろんな人がいますからねえ」 

「どう見てもやくざに見える人とか?」 

 アイシャの皮肉に男の米神がぴくりと動いた。

「なあに。法令通りの商売をしている善良な市民に迷惑をかけることはしないわよ・・・ねえ、要ちゃん」 

「そうだな・・・で・・・だ」 

 曖昧な相槌の後で要は手持ちの端末をテーブルに置いた。そして画面を起動させるとそこには豊川市内の不動産業者の一覧が表示された。

「豊川はなんと言っても菱川系企業のお膝元だからな。不動産屋も系列が多い。そしてなぜかここの系列のお店は法術師がお嫌いと見えてアタシの耳にも入居拒否や転居要求の話が届いてきている」 

「大手はそういうところには敏感ですからね」 

 タバコをふかす要がリラックスをしているのを見て男は安心したように笑みを浮かべた。

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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 68

「あんたら本当に警察の人?」 

 真顔で聞いてきた男の視界から突然要が消えた。誠も黙っているうちに男はそのまま要に組み敷かれて床に転がっていた。

「おう、良かったな。アタシ等は現在東都警察に出向中の保安隊の実働部隊員だ」 

 その言葉。そして生身とは思えない動きと重さで口を要に押さえつけられている男がうめく。

「ほう・・・アタシは何度か租界でテメエの顔を見てるけど・・・出世したもんだな」 

 要の立て続けの言葉に何かを思い出したように動きを止める男。要は納得したように立ち上がりスカートの裾をそろえる。

「・・・西園寺のお嬢ですか・・・そうならそうで・・・って納税?」 

「そう!アンタ等が今年の売り上げの約40パーセントを・・・」 

「お嬢!勘弁してくださいよ!何が目的ですか?なんか事件でも追っているんですか?胡州の官派の残党狩りですか?」 

 泣き出しそうに跪く男に誠は哀れすら感じた。恐らく要はこの不動産屋の裏帳簿をネットで拾って脱税の記録でも見つけたんだろう。さらにまともな不動産屋のすることではない違法な活動の証拠も握っているかもしれない。彼が振り返るとカウラもアイシャも要のすることがはじめから分かっていたようににんまりと笑みを浮かべている。

「じゃあ、オメエの事務所。そっちで話そうか。ここじゃあ拙い話も出てくるんだろ・・・あ?」 

 とても遼州一の名家の令嬢とは思えない顔つきで男をにらみつける要。男も仕方なく立ち上がると事務所の職員が失笑を浮かべているのにいらだちながら立ち上がった。

「じゃあ・・・二階で」 

 そう言うと男は静かに横にあるドアを開いた。要が誠達を振り返りにんまりと笑うとそのまま付いて二階に上がる。カウラとアイシャも誠を引き連れてその後ろについてあがった。

 桐の見事な柱の通った二階。まるで雰囲気が違う部屋には何人かの若い衆がタバコを咥えて雑談をしているところだった。そこに現れた憔悴しきった兄貴分。当然のように鋭い目つきがその後ろを歩いていた要に注がれることになった。


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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 67

 誠の言葉に一度ほくそえんだ要はそのまま自動ドアの前に立った。

『いらっしゃいませ!』 

 店内に声が響いた。店員達が一同に立ち上がり誠達に頭を下げている。民間企業での仕事の経験などは学生時代に工場で鉄板を並べていたくらいの誠には異様な光景に見えて思わず引く誠。

『あんなあ。その筋の絡んでる店ってのはみなこんなもんだぜ。妙に愛想が良くて・・・ああ、あそこを見な』 

 小声で要がつぶやくその視線の先には大きく張り出されたスローガンが長々と壁に張り出されていた。

「あの・・・」 

 入ってきた要の着ているのが東和警察の制服だったことに気づいた受付の女性が一番声がかけやすそうに見えたアイシャに語りかけてきた。誠も声をかけた小柄な長い髪の受付嬢の化粧が一般のOLのそれより明らかに濃いのが目に付いてなんとなく要の言いたいことが分かったと言うようにアイシャに目をやった。

「ああ、お仕事の邪魔かもしれないけど・・・ちょっとお話を聞きたいの」 

 明らかに回りに聞こえるような声でアイシャが口を開いた。その様子におどおどと受付の女性は背後の事務所を見る。そこにはどう見ても回りの緑の制服を着た事務員達とは毛色がまるで違う黒い背広の恰幅のいい男の姿があった。

『なるほど、その筋の人が経営しているんだ・・・』 

 男が仏頂面で立ち上がるのを見て誠も納得する。以前の誠ならその男の威嚇するような視線におびえて足が震え始めるところだったが、この男と同類の前副部隊長の明石が同じような格好をしていたのでとりあえず要達を盾にして後ろで男と目が合わないように天井を見上げる程度で落ち着くことができた。

「申し訳ありませんね。うちは・・・個人情報の遵守をモットーにしてますから・・・見てください」 

 男は受付にたどり着くと背後のついたてを指差した。不動産業の営業許可証の隣には個人情報保護基準達成の証書が飾られている。だが要はまるで臆することなく彼女が得意な腕っ節でなんとかなる相手に遭遇した時独特の笑みを顔に浮かべて受付に手を着いた。

「そりゃあ殊勝な心がけですねえ・・・まったく頭が下がる納税者さん。応援していますよ・・・納税者さん」 

 要が二回『納税者』という言葉を続けるとなぜか悪趣味な背広の男はこめかみに手をやって誠達を一人一人値踏みするような視線を向け始めた。

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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 66

 曲がりくねった道。かつての街道筋のままの細い道の両側に狭い店舗が続いている。

「ったく再開発はまだなのか?」 

「要ちゃんのお小遣いで何とかすれば?」 

「やなこった!」 

 要とアイシャのやり取りについ噴出す誠。すぐに要のタレ目が威圧するように彼をにらんでいく。

「そこの横丁を・・・」 

「西園寺。私が知らないとでも?」 

 カウラはやけになって左にハンドルを切る。大きく車体は傾き、カウラのエメラルドグリーンのポニーテールが揺れる。

 そのまま車は駐車場に乗り付けられ再び思い切り急停車する。

「カウラちゃん・・・もっと丁寧に」 

 アイシャは自分の紺色の長い髪を掻き揚げながら苦笑いを浮かべた。その座席を後ろに座る要が蹴り上げる。

「人の車だと思って・・・」 

 ため息をつくとカウラはドアを開けて外に出る。アイシャもつられるように出て助手席のシートを倒す。何とか要、誠が狭い後部座席から降車した。

「ここが一番か」 

 カウラの言葉に要は苦笑いを浮かべながら頷いた。

「その筋の人間がいるところのほうがこういう事件にはぴったりだろ?」 

 そう言う要の視線の先にはこぎれいな不動産屋の店舗には似つかわしくない黒塗りの大型高級車が止まっていた。

「まるで明石中佐の車ですね」 

 誠はそういいながらこの不動産屋がかなり危ない物件を扱っていることをすぐに読み解いた。

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