スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 100

腰を抜かした水島に一歩一歩向かってくる。

「ど・・・どうするつもりだ・・・」 

動揺する水島の様子に満足げな少年。仕方なく水島は静かに座りなおした。

「靴で上がるのは感心しないな」 

「おっと・・・大使館の私室からなので・・・失敬!」 

そう言うとすばやく靴を脱いだ少年はそのまま腰を下ろす。

「アメリカ大使館で暮らしている・・・信じろと言われても・・・」 

「よく覚えていたね・・・なんだか難しい本が一杯」 

少年はそのまま四足で歩いてくると水島の机の上を覗き込む。

「一応法律家を目指しているからな」 

「おじさんが?」 

そう言って笑う少年の頬には悪意が見て取れて水島はそのまま黙り込んだ。

「それより僕についてくれば厚遇してもらえると思うのにな・・・」 

「モルモットとしてだろ」 

水島のつぶやきににんまりと笑う少年。そして彼はそのまま腕の通信端末を開いた。

「見てごらんよ。おじさんが能力暴走を引き起こした人。死んじゃったよ」 

少年の言葉に水島は彼の端末も開いた。しかしそのような情報は何度検索しても出てこない。

「おじさんのじゃ駄目だよ。僕のは一応ネットしている範囲が広いからね。警察や病院を検索すれば出てくるんだ。便利でしょ?」 

淡々と語る少年。水島は少しばかり諦めたように肩を落として少年の端末に移る箇条書きの被害者の死を知らせる文書を眺めていた。


FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 99

一日経ってようやく水島の心は落ち着いてきていた。

突然目の前のサラリーマンの意識に介入した瞬間に男の能力が発動してそのまま切り裂かれた空間と一緒に腕が転げ落ちる。倒れこみうめく男。突然の出来事に慌てて泣き叫ぶ通行人。そのまま走り去らなかったのはほとんど奇跡だった。

「やっぱり・・・同盟も東和政府も何かを隠しているんだな・・・」 

法律書を置いた机に向かっていてもそのことばかりが気になってくる。

人体発火は以前から都市伝説として知られていた。最近では一部のテロ組織は法術の存在を同盟機構が発表する以前から知っていて運用していたことは当然の常識だった。意識介入。いわゆるテレパシーについてもその後のプライバシー対策の為に成立した法案を見れば政府は知っていたと考えるのが自然だった。そして一応法律家を目指す水島にもそれはよく分かる能力でこれまでも他人の能力を借りて発動する際には気を配るところがあった。

しかし今回は突然空間が切り裂かれていた。

まるで知らない法術の発現。水島は結局そのまま野次馬の一人として警察の捜査が一段落するまでの6時間ほどほとんど現場に立ち尽くしていた。

「しかしあの切れ味・・・色々使えそうだな」 

突然湧き出てくる独り言。その能力が強力で簡単に発動するものだったことに気づくと不意に水島の顔には笑みが浮かんできた。

「色々使える・・・色々使える・・・」 

笑みが止まらない。行政訴訟に関する判例集は次第に水島の『色々使える』と言う言葉に埋め尽くされていく。鉛筆を持った水島の手。まるで意思を持ったように同じ言葉を書き連ねていく。

「もしかしたら神にでもなったつもりなのかな」 

突然の背中での声に水島は驚いて振り返った。

そこには当然のように以前東都でであったアメリカ大使館の関係者の少年が立っていた。ヤンキースの帽子。噛み続けるガム。それらの典型的すぎて笑いが出てきそうな特徴につい水島も驚きから笑顔に表情を変えていた。

「そんなに驚かなくても良いじゃないか。知りたいんだろ?あの切れ味とあの力で何ができるか」

「つまり今の君のようなことかな?」 

冷静に当たりを観察して水島はそうつぶやいた。明らかに自分の脳裏には昨日の血まみれのサラリーマンに感じた感覚と同じ雰囲気があたりに漂っていた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 98

次々と時間とあって隊員達は急いで食堂を後にする。なみだ目だった西も立ち上がり頭を下げてから食堂から出て行った。

誠は静かに急須に湯を注ぐとそのまま近くの湯飲みを取ってカウラ達の待つテーブルに向かう。

「誠ちゃん・・・私のも!」 

アイシャに言われてそのまま手にした急須とカウラの湯飲みをテーブルに置くとそのままもと来た道を返して湯飲みを取ってテーブルに戻る。

「本当に・・・神前曹長、いつもお疲れさまです」 

そんなラーナの気遣いの言葉を聞いて苦笑いを浮かべる誠。

「いつものことですから」 

「そうだな、いつものことだ。ついでにアタシのも頼むわ」 

戻ってきた要はそう言うとどっかりと椅子に腰掛ける。座ったばかりの誠はまた立ち上がり湯飲みを取りに向かった。

「そう言えば機動隊のパスでサーバーにアクセスするんだよな。機動隊の部隊長権限でどこまで入れるんだ?」 

「要ちゃん・・・何の為に要ちゃんがいるのよ。そういう時は・・・」 

「おい、アイシャ。アタシを犯罪者にしたいのか?」 

アイシャの明らかにハッキングしろと言う態度に苦笑いを浮かべる要。だが席に戻った誠はどうせ証拠が見つかるまで止めても要がやたらとアクセスする光景を予想して苦笑いを浮かべた。

「じゃあ、皆さんよろしいですか?」 

「茶ぐらい飲ませろよ」 

「遅く来て何を言ってるのかしら」 

「潰すぞこのアマ」 

アイシャと要の掛け合い漫才を見ながら仕方が無いと言うように笑うカウラと誠は立ち上がった。要も湯飲みを置くとそのまま静かに立ちあがる。

「神前、かたしておけよ」 

要はそういい残してラーナ達と一緒に食堂を出て行った。置き去りにされた誠は厨房の当番の同僚達から冷ややかな視線を浴びながら仕方なく湯飲みを手に荒いものの棚に運んだ。

FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 97

「それじゃあ行くか!」 

「西は放置か?」 

要が立ち上がるのを見て恨めしそうに彼女を見上げる西とカウラ。なんともいえないというように呆れて立ち尽くすラーナ。

「要ちゃん誤りなさいよ。大人でしょ?」 

そんなアイシャの一言に要の顔がゆがむ。

「分かったよ・・・すまねえな」 

「ええ、僕もぼんやりしていましたから」 

「そうだよ!ぼんやり・・・」 

「もう良いわ。行きましょ」 

アイシャはこれ以上要が何を言い出すか分からないと悟って要の腕をとった。誠とカウラは呆然と彼女達を追う。

「一応食事くらいはさせてくれるんだろ」 

「ええ、でも西園寺大尉はいいとしてクラウゼ少佐は・・・」 

心配そうなラーナを見ながらカウラは平然と食事を続ける。そしてそこにアイシャが当然のように戻ってきた。

「いやあ・・・要ちゃんは簡単ね。喫煙所まで連れて行けばそこですぐにタバコを吸って終わりだもの」 

「それは良いから早く食え」 

「はいはーい」 

アイシャはすぐにテーブルに座ると食事を再開する。食べるのが早い誠とカウラはすでに食事を終えて立ち上がろうとした。

「待ってくれても良いんじゃないの?」 

「片付けるだけだ。神前、とりあえず茶を入れてくれないかな」 

誠の食器の乗ったトレーを奪い取ったカウラの言葉を受けて誠はそのまま部屋の隅に置かれた急須に向かって歩き始めた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 96

「秘密を探るってのはさあ・・・わくわくしねえか?」 

「貴様は子供か?」 

「子供で結構!」 

ノリの悪いカウラを馬鹿にするように要が手を振り回す。驚いた整備班員がかわそうとするがよけきれずにそのまま顔面にサイボーグの怪力でのパンチが入った。

「あ・・・」 

よく見ればそれは部隊最年少の整備班員の西高志兵長だった。

「ごめんね・・・馬鹿が暴れて」 

まるで誠意の感じられないアイシャの謝罪。周りの整備班員の駆けつけるのが遅いことには理由があった。

保安隊実働部隊。汎用人型兵器『アサルト・モジュール』を運用する部隊は全部で四つある。第一小隊は保安隊副長と小隊長を兼務するクバルカ・ラン中佐が仕切り彼女を遼南内戦のエース、ナンバルゲニア・シャムラード中尉と伝説の傭兵と呼ばれてきた吉田俊平少佐が支えている最強の布陣だった。当然第一小隊の評価が高いので他の人材には自由度があると内外でもささやかれていた。

結果が第三小隊と第四小隊の編成に現れた。第三小隊は嵯峨の次女である嵯峨楓少佐。胡州海軍での同性を巡るさまざまなスキャンダルのヒロインとして悪名を轟かし、お荷物として保安隊に配属されたと言うのが誠にもよく分かる人物だった。

そして第四小隊。こちらは政治的意図でアメリカ海軍からの出向者が三人配属されていた。そして彼等が運用する現用アメリカ海軍仕様のアサルト・モジュール『M10』の運用指導のために技術士官が特別に配属されていた。

それがレベッカ・シンプソン中尉。眼鏡と部隊最大で要に『おっぱいお化け』と呼ばれる美女でしかも彼女は西とは非情に仲がよくいつも行動を共にしている。

整備班員にとって女性隊員といえば技術部長の神と崇め奉られている許明華大佐の高圧的でサディスティックな扱いに慣れてきたところに現れた女神をあっさり若いのにさらわれたと言うことで腹の虫が収まらないのは当然で、誰もが西には思うところがあった。

「誰か助けてあげなさいよー」 

明らかに助ける気の無いアイシャの言葉に呆れた笑顔を浮かべるとカウラは仕方なく倒れて目の所を押さえている西に手を差し出した。

FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

ハシモト

Author:ハシモト
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。