スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 140

「法術師を狙って来たんですかね。ただ都心じゃ捕まるかも知れないから郊外に来たんじゃないですか?」 

誠の言葉に要は思い切り酒を噴出した。

「何するのよ!」 

顔面に直撃を受けたアイシャは叫ぶと同時にハンカチを探してコートに手を伸ばす。驚いた春子も厨房に飛び込んだ。

「クラウゼさん、これ」 

春子から手ぬぐいを受け取ると顔を拭くアイシャ。その様子をまるで無視しているかのように一人烏賊玉を焼くカウラ。誠はいつものことながら食事中に異常な集中力をみせるカウラに呆れながら隣の要に目をやった。

「都心より郊外の方が良いだって?そんな訳ねえよ。薄暗がりの街の中。作戦行動を取るには都市部の方がやりやすいんだ」 

「さすがに非正規戦闘のベテランは言うことが違うな」 

烏賊玉をひっくり返して一息ついたカウラの一言。要は得意げに再びグラスを手に取る。

「じゃあ、やっぱり今回の法術師ですか?」 

誠の言葉にそれまで騒いでいたシャムや島田まで黙り込んで静寂が支配した。

「普通に考えりゃーそうなるな。飼い主は分からねーが法術師が星なのは確実な辻斬り野郎。そいつの飼い主が相当な馬鹿野郎ならいざ知らず、いままで狂犬を官憲から匿い続けているところから見ても今回の法術師に関心を持ってねー方がおかしいくらいだ」 

ランの言葉に頷くラーナ。ただ不安そうに周りを見るパーラに少しばかり同情しながら誠はそれまで要が焼いていた自分の豚玉にソースをかける。

「最悪のパターンも想定しておくべきね。人斬りと変わった法術師の両方に同時に出会うケース。想定していないと最悪の事態になるわね」 

「アイシャさん。最悪の事態って・・・」 

誠は豚玉を切り分けながら目の前で箸でたこ焼きを半分に割っている濃紺の長い髪の持ち主に語りかけた。

「馬鹿だな。オメエの能力が奪われた状態で人斬りにマンツーマンで対応しなきゃならなくなることもあるってことだ」 

ラムを飲む要の満足げな顔。思わずカウラは目をそむける。

「本当にこういうときは悪い顔をするわね、要ちゃんは」 

「そうか?」 

アイシャの言葉を受け流しながら要は誠の豚玉の半分を奪い取ると自分の小皿に乗っけて食べはじめた。

FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 139

「じゃーん!来ましたよ」 

小夏が突然のように現れて手にした料理を配っていく。春子はそれを見ながら誠達のテーブルの鉄板に火を入れた。

「やっぱり火がいいねえ。電気式のはどうも好きになれなくて」 

「そう言えば要ちゃんは胡州よね。あそこは結構厳しいんでしょ?二酸化炭素を出すエネルギーがらみには」 

アイシャはようやくランをその手から開放すると満面の笑みで誠の豚玉を勝手に混ぜ始めた要の正面の自分の席に腰掛けた。

「まあな。あそこはどうも息苦しいところだからな。特に東和に来たら帰りたくなくなるよ・・・小夏、もう良いのか?」 

「まだ。そんなすぐにあったまるわけ無いじゃないの」 

鉄板の上に手をかざして軽蔑の眼差しで要を見つめる小夏。頭に来た様に視線をボールに落とすと要は一生懸命豚玉をかき混ぜ始めた。

「そんなに混ぜたら駄目じゃないの」 

「いいんだよ。納豆だって混ぜた方が美味いだろ?」 

「私はそうは思わないが・・・」 

「カウラ・・・ノリが悪いな」 

たこ焼きを食べ始めたカウラにそう言うと要は豚玉を混ぜる手を止めてグラスのラム酒に手を伸ばした。

「どうしたの?要ちゃん」 

アイシャの顔が真剣なものへと変わる。それは要の脳内の通信デバイスが何かをつかんでいることを悟っての態度だとわかって誠も要に視線を向けた。

「例の辻斬りだ。東寺町で近くのOLが背中からばっさりだそうだ」 

その言葉に入り口近くのランの隣に座っていた茜が立ち上がる。

「おい、所轄の連中が捜査をはじめたばかりだぜ」 

「そう言うわけには行きませんわ。一応わたくしが担当している事件ですから・・・クバルカ中佐、カルビナ。帰りはタクシーを拾ってもらえませんかしら」 

「しゃーねーだろ。仕事優先だ」 

ランの言葉に笑みを浮かべた茜は着物の襟元を調えるとそのまま店を出て行った。

「辻斬り・・・アイツも今回の星を追って出てきたか・・・」 

ようやく温まった鉄板に誠の三倍豚玉を広げながら苦々しげに要はつぶやいた。

FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 138

「島田・・・出動関係の事例集。見てねーのか?」 

「そりゃあ甲一種出動は使用兵器の制限が無くなりますが・・・反則ですよ、あの三機は」 

島田の言葉に自然と誠は頷いていた。誠の愛機のアニメヒロインが大量に描かれた05式乙型も法術対応のアサルト・モジュールだがクロームナイトクラスとは桁が違った。法術師の展開する干渉空間にエネルギー炉を転移してメイン出力を確保。ほとんど現在の技術の最先端クラスでとても一般部隊では運用不可能な高品位パルスエンジンを搭載した機体には正直勝負を挑むのが馬鹿らしくなるほどだった。

「反則だろうが失格だろうが関係ねーんだよ。アタシ等は司法実働部隊だ。兵隊さんと違って勝たなきゃならねーし、勝つときは圧倒的じゃなきゃならねーんだ。わかるか?」 

どう見ても小学生が飲んだくれているとしか思えない光景。言っていることの理屈が通っているだけに誠は一人萌えていた。だがその萌えを我慢できない存在がこの店にはいた。

「ランちゃん!」 

立ち上がるとアイシャはそのままずかずかとランに近づいていく。

「お・・・おうなんだ・・・!くっつくな!」 

不意を付いてアイシャはランに抱きついて頬擦りを始める。

「なんてかわいいの!萌えなの!」 

「うるせえ!離れろ!」 

「慕われていますのね、クバルカ中佐は・・・ちょっと妬けますわね」 

「茜!くだらねーこと言ってねーで助けろよ!」 

ばたばたと暴れているランを横目に見ながら笑顔の春子が料理を並べ始めた。

「いつも申し訳ありません」 

「カウラさんが気にすることじゃないわ。それに本当にいつもごひいきにしてもらっちゃって。うちは保安隊さんがいなくなったらつぶれちゃうかも」 

そう言いながら頭を撫でる程度に譲歩したアイシャの愛情表現に落ち着いてきたランの目の前にアンキモを置く春子。

「でもクバルカ中佐は本当にかわいいですものね。クラウゼさんもつい暴走しちゃうわよ」 

「アタシは一応上官なんだけどな・・・」 

アイシャに撫でられながら仕方が無いというようにランはビールを飲み干した。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 137

「それにしても大変そうだな」 

烏賊が入っているたこ焼きを当てられずに島田は懐からガソリンスタンドのカードを取り出してパーラに手渡しながらつぶやいた。

「何?正人君も入りたかったの?」 

「そんなことは無いですけど・・・法術を乗っ取る犯人でしょ?俺みたいに死なないだけが取り得の法術師の方が適しているんじゃないかなあとか思っただけですよ」 

そう言いながら最後のたこ焼きを口に入れる。

「オメーはバックアップだよ。同盟司法局の事件じゃあオメーにぜひ参加してもらえって隊長に言われてたからな。まああれだ、今回はじっくり明華の仕事のやり方を見ておけってことだ」 

ランはすでに手酌でビールを飲み始めていた。

「そうだぞ、島田。シャムのクロームナイトや隊長のカネミツの整備の手順とかは明華さんのお手の物だけど代わりがいないからな」 

「代わり?」 

突き出しの小さい烏賊を箸でつかみながらの吉田の言葉に島田はしばらく考えながらつぶやいた。

「正人!明華お姉さんは6月に結婚でしょ?」 

「でも・・・寿退職とかする人には見えないんですけど・・・」 

隣のサラの言葉に首をひねる島田に思わずサラとパーラがため息をついた。

「結婚すれば・・・子供ができてもおかしくないな・・・まあしなくてもできる時はできるか」 

「要ちゃん!」 

「事実だろ?」 

要とアイシャの掛け合いを見てようやく分かったと島田は膝を打つ。

「でも・・・あんな機体。本当に使うんですか?」 

そう言う島田の視線は保安隊ナンバー2であるランへと向けられることになった。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 136

足早に厨房から現れた春子は手にしたラム酒の瓶を要に差し出した。

「飲みすぎないでよ」 

「気をつけまーす」 

春子の言葉の意味など解さぬようにたっぷりとグラスにラム酒を注ぐ。呆れたようにカウラは要の手元のグラスに目をやった。

「飲みたいのか?」 

「まさか・・・」 

「はい!お待たせです!」 

失笑するカウラを見ていた誠の耳元で手に盆を持った小夏が現れて注文の品をテーブルに並べていく。ついその動作に手元のメニューを取り落とす誠。

「神前の兄貴。しっかりしてくださいよ。それより注文は?」 

「豚玉の三倍で」 

「誠ちゃん!それアタシの真似じゃないの!小夏ちゃん、私も」 

吉田の隣のカウンターでビールを手酌でやりながら叫ぶシャム。小夏は笑顔を浮かべながら厨房に消えていく。

「上、妙に静かじゃねーか。島田の。法事でもやってんのか?」 

ビールを飲んで顔を赤くしながらランがたこ焼きの中身当てに失敗してうつむいている島田に声をかけた。二階を占拠して飲み続けているという警備部の屈強な男達の沈黙。その事態に隣のサラもパーラもランの質問に首をひねる。

「女将さん。アイツ等・・・」 

「昼間からだったから・・・潰れてるんじゃないかしら」 

阿鼻叫喚の地獄絵図にならずに済んでよかったというような表情で笑う春子。彼女を見ながら誠もビールを飲み続ける。

「しかし・・・アイツ等もマリアの姐さんのお手伝い係だからな・・・大変なんだろ」 

相変わらずカウンターを背にテーブル席の誠達を眺めていた吉田はそう言うと烏龍茶を飲み干した。

「まあうちも大変だけど」

『何か言った?』 

要の言葉にランと茜が同時にステレオで叫んでいた。思わずその様子に誠は苦笑いを浮かべた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

ハシモト

Author:ハシモト
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。