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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 160

「言いたいことがあるのはおじさんじゃないの?」 

クリタ少年はそう言うと再び無邪気な笑みを浮かべた。

「自分の能力を把握している勢力はどれだけあるか、東都警察はどう動くか、司法局は?少なくとも図書館の判例集には載っていないお話じゃん」 

確かにその通りだと水島は思っていた。自分の経験など法術と言う奇妙な存在がこの国で知られるようになってからはまるで役に立たない。

会社を解雇され、住む場所を失って居場所を探すのにも苦労して、そしてこうして目的を見つけたとしてもそこには悪意に満ちた会いたくも無い化け物達が待ち構えている。

「僕は・・・どうしたら良いんだね?」 

ようやく搾り出した言葉にクリタ少年はうれしそうな表情を作った。

「ようやく分かってくれたんだね。じゃあ・・・少し待っててくれるかな」 

そう言うとクリタ少年は湯飲みを置いて立ち上がった。黒髪の少女もまた仕方がないというような表情を浮かべて立ち上がる。そしてクリタ少年は背後に干渉空間を展開した。

「とりあえず僕のボスに話をつけてくるから。安心して待っていてくれても良いよ。それと東和警察や保安隊が来たら抵抗しないでそのまま捕縛されても・・・」 

「逮捕されろと?本当に大丈夫なんだね?」 

弱みを握られたような表情で水島は干渉空間に消えようとするクリタに声をかける。

「なに、外交官特権でどうにでもできるから。安心してくさい飯を数日食べていれば自由の身さ」 

「自由・・・ふざけたことを」 

つい本音を水島がこぼしたのを見ると黒髪の少女が初めて見るような素敵な笑みを浮かべた。

「じゃあね」 

クリタ少年の言葉とともに干渉空間は消滅して何も無い部屋に戻る。

「食べる為なら何でもするさ。この国が僕を必要としていないなら僕を必要とする悪魔にでも魂を売ってやるよ」 

つぶやいた水島。そしてそのまま自分の注いだままで冷めている茶をゆっくりと飲み干して立ち上がると手にしてい行政訴訟の判例集のノートを思い切りよく引き裂いた。


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ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 159

「まだ・・・決心は付かないのかな?」 

新しいちゃぶ台に頬杖を付く少年を見ながら水島はなんとも居心地の悪い自分の部屋でお茶を入れていた。

「そちらのお嬢さんは・・・」 

「ご馳走になりますね」 

相変わらず長い黒髪を揺らしながら隣のクリタ少年の保護者と言うような表情で座っている少女。二人の能力をサーチして逃げ出すことはできるかもしれないが、恐らくサーチを始めた段階で気づかれて二人を敵に回すことになるのは分かりきっていた。

「もうそろそろ僕のタレこんだ情報を東都警察もつかむころだよ。それでも・・・」 

少年の言葉に思わず湯飲みに注いでいたお茶がこぼれた。水島はそのまま怒りの視線を少年に向ける。

「お・・・大人をからかうもんじゃないよ・・・」 

「ああ、それなら後三時間くらいこの部屋で過ごすと良いよ。それだけ待てば東都警察も重い腰を上げるだろうからね。それとも動くのは保安隊かな?どちらでもいい話なんだけどね、僕にとっては」 

少しこぼれた茶色い湯飲みをハンカチでぬぐいながら手に取るクリタ少年。彼は自分のことをアメリカ大使館と関係していると常に言う。だがその言葉にはどことなく信用できない雰囲気がまとわり付いていた。隣の少女もクリタ少年以上の法術師の気配は持っているが、無口で何かを聞き出せそうな様子はまるえ無かった。

「東都警察・・・違法法術行使は懲役2年だね・・・これまでの起訴事件は三件。判決が出た一件は法術に対する使用者の軽い思い違いがあったということで執行猶予の判決だったはず・・・」 

「ずいぶん希望的な観測ですね」
 
珍しく少女が口を開く。水島は仕方がないというように水色の湯飲みを彼女の前に置いた。

しばらくじっと湯飲みの中を見つめた後、少女は静かに茶を口に含む。

「死者が出ているからかね」 

「ご存知なら話は早いと思うのですが・・・」 

そう言うと少女は珍しくちゃぶ台の中央に置かれたみかんに手を伸ばした。

「実験材料や戦争の小道具に使われるなら牢屋の中のほうがすごしやすいと思うんだけどな」 

「それも甘いですね。あなたの犯罪については同盟司法局が動いています。同盟司法局は名前の通り遼州同盟の司法執行機関です」 

「だから何が言いたい・・・」 

思わず身を乗り出そうとした水島だが体が言うことを聞かなくなっていることに気づいて恐怖の表情を浮かべて目の前の二人を見つめた。

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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 158

「まだかよ」 

定時まで30分。要は大きく伸びをしながら画面から目を放そうとしない一応小隊の隊長であるカウラにそう言った。

「まだ30分前だ」 

「それじゃねえよ。ちゃんと水島を引っ張れる証拠は見つかったのかって言うことだよ」 

要の言葉に誠もアイシャもラーナも大きくため息をついた。

「要ちゃん。そう簡単に証拠が挙がるなら誰も苦労はしないわよ」 

「そりゃあそうだけどさあ」 

今度は要は腰を左右に振っていた。

「サイボーグが準備運動か?」 

「うるせえなあ」 

カウラの言葉にいつものように口を尖らせると立ちががる。

「タバコ吸ってくるわ」 

「はいはい!行ってらっしゃい!」 

投げやりなアイシャの言葉にそのまま席を立とうとした要。その時突然ラーナが立ち上がった。

「取れました!取れましたよ!」 

「なんだ?何が取れたんだ?」 

モニターを指差す彼女の表情を見た要の表情がシリアスなものに変わると部屋の空気が一変した。

「元旦の東宮神社の放火!目撃証言が取れたんですよ」 

ラーナの叫び声にそれまで無言だったカウラまで立ち上がる。

「引っ張れるんだな?これで引っ張れるんだな?」 

「待ちなさいよ要ちゃん。東都地検は?地裁の令状は?」 

落ち着こうとしているはずのアイシャの声も上ずっていた。彼女の鋭い目つきに刺激されるようにラーナのキーボードを叩く速度が加速する。

「地裁には嵯峨警視正の顔が利きますから・・・なんとかうちにも令状が・・・」 

「頼むぞ茜、希望の星だよ」 

満面の笑みで叫ぶ要にさすがに不謹慎だと言うようにカウラが白い目を向けているのがおかしくて誠はつい噴出していた。

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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 157

石灯籠が並ぶ庭。それを見ながら一人の着流し姿の男が剣の手入れをしていた。冬の風が縁側に座る彼の周りを流れていく。それでも綿入れも着ずに男は剣を眺めて満足げに頷いていた。

「旦那・・・寒くないですか?」 

男に後ろから話しかけた北川公平はダウンジャケットに首の周りには襟巻きを巻いて寒そうに手を合わせてさすっていた。

「気合の問題だな・・・」 

答えていると言うよりも自分に言い聞かせている。そんな様子でようやく着流し姿の男、桐野孫四郎は剣を鞘に収めた。

「それより・・・見つかったのか?」 

それまで自分に関心が無いと思っていた桐野の言葉に驚いたと言うように北川は引き戸を開くとそのまま桐野の隣に腰掛けた。

「豊川警察署に勤務中の同志からの情報ですが・・・」 

そう言うと北川は左腕の携帯端末を立ち上げる。そしてすぐに一人の男の顔写真を表示させた。

「水島勉・・・聞いたことが無いな」 

「旦那。それは冗談で言っているんですよね」 

思わず北川が笑いかけるのを見て不愉快だと言うように目をそらす桐野。そしてその視線は鞘に納まった剣に向けられた。

「俺等には天敵になるかも知れませんよ。すぐに斬りかかるのだけは勘弁して・・・」 

「保障はできないな。相手がこちらの能力を奪って来るならこちらもそれなりに覚悟はするつもりだ」 

桐野はそう言うと再び剣を抜いた。突然の動きに驚く北川をあざ笑いながら桐野はすばやく剣を鞘に戻す。

「できれば生きたまま捕まえたいですから。斬るのは最後の手段にしてくださいよ」 

そう言うと北川は立ち上がる。

『この人殺しは・・・そのうち俺のケツにも火がつくかも知れねえな』

心の中でそう思った北川はそのまま暖房の効いた部屋へと戻っていった。

「別に理想があるわけじゃないんだよ俺は。人が斬りたいんだ・・・」 

独り言のようにつぶやいた桐野はそのままうっとりとした目で自分の業物をまじまじと眺めていた。

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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 156

「厄介ごと・・・うちは便利屋かよ」 

「今頃気づいたの?遅かったわね」 

売り言葉に買い言葉。いつものようににらみ合う要とアイシャ。

「くだらないことは止めておけ。どうせ東都警察には手に余るのは間違いないんだ」 

それだけ言うとカウラは再び端末へと視線を向ける。

「カルビナさん。どこくらいまで捜査が進んでいるとかわかりませんか?」 

誠の言葉にラーナはため息をついた。

「神前さん。一応東都の各警察署にもプライドがありますよ。自分の管轄した場所で起きた事件。その容疑者を特定するならできれば自分の手で捕まえたくなる」 

「縦割りの弊害だな・・・まあアタシ等のことは『同盟司法局なんて無駄な組織を作りやがって』って思われているかも知れねえがな」 

思い切り要らしい言葉に誠は頷くと目の前の画面に目を向けた。もし水島勉の事件への関与をうかがわせる証拠が示されれば自分達には優先的捜査権限が与えられる取り決めにはなってはいた。そしてその情報が現れるのは誠達の机の上の端末のモニターのはずだった。

「このまま一週間ぐらい待っても不思議は無いぞ。楽にしてろよ」 

要の言葉。ある意味当然だとは分かっていても慣れない誠には待ち続けること自体が苦痛だった。気の短い要が黙っているのは彼女がかつて『東都戦争』と呼ばれる東都を舞台とした騒乱事件に関わっていてその時に見につけた技術なのかもしれないと勝手に想像をめぐらせる。

「でも・・・こんなところでくすぶっているのに意味はあるのかしら?どうせ定時になったらこの部屋から追い出されるんでしょ?しかも連絡が携帯端末に届けばいつでも出動できる状態にしていろって言われてるんだから・・・無意味よね」 

立ち上がるアイシャ。誠も左手の携帯端末に目をやる。小さな端末だが、その中の情報は常に東都警察の最新情報が流れ込んできている。

「私達はアウェーなんだ。我慢しかできないだろ」 

まじめにモニターを覗くカウラ。げんなりしながら誠は再び画面へと目を向けた。

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