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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 180

「起きたか・・・」 

廃病院の中庭の仮設ベッドの上で誠は目を覚ました。

「北川とかは?」 

「逃げられちゃったわよ」 

アイシャが心配そうに毛布に包まれた誠を眺めている。

「やはり・・・そう言えば西園寺さんは?」 

「ああ、西園寺はそのまま義体の交換だそうだ」 

「工場で修理。おもちゃみたいね」 

カウラの声に誠は少しばかり安心して周りを眺めた。深夜の闇の中、煌煌と廃病院が照らされている。

「これで終りですね」 

「そうなのか?」 

浮かない顔のカウラに誠は少し首をひねっていた。

「法術の可能性が示されたんだ。今回の件で確実に今までは任意だった法術適性検査が強制になるだろうな」 

「そしてさらに不気味な能力者が増えると言うことであちこちで憎しみ会う人間が増えるわけね。なんだか・・・人間と言うものは業が深いわね」

アイシャが力なく笑うのが見えた。誠はそれを見ながら上体を起こした。

「あと・・・僕が剣を呼んだのは?」 

「呼んだのか?まあ・・・そうかもしれないな」 

「それだけの力がオメエさんにはあるんだよ」 

そこに突然現れた長身の男。カウラが敬礼していることからそれが保安隊隊長嵯峨惟基特務大佐であることが分かった。

「隊長・・・」 

「いいよ寝ておけ。まあ・・・オメエさんが仕留めた義体だが。元アメリカ軍の兵隊さんだそうな」 

「元?」 

誠は口にタバコを加えてつぶやく。その言葉に誠は不思議そうに首をひねった。


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テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 179

「なんだろう・・・あれ?」 

誠は自分のしていることが今ひとつよく分からなかった。展開された干渉空間に手が自然と伸びる。そこには一振りの剣があった。

「鳥毛一文字・・・」 

手に触れた瞬間に誠は確信した。そのままするすると鞘から刀身を引き出す。

「神前!」 

カウラの言葉を浴びて誠の周りの空間が飛び散った。両側から掃射が行なわれる。だが誠にはそれはぬるい攻撃に見えた。

『時が・・・ゆっくり流れるんだな』 

空中を流れるように進む弾丸が見て取れる。誠はすばやく身を翻しそれを避けた。そしてそのままゆっくりとベッドの後ろに隠れているサイボーグに走り寄った。

恐怖の表情が米軍の軍服を着たサイボーグに浮かんでいるのが分かる。ゆっくりと振りかぶるライフル。だがその動きは誠にとってはあまりに遅いものだった。誠の剣がサイボーグの顔面の暗視ゴーグルに突き立てられた。まるでケーキか何かにフォークを立てるような柔らかい感覚で刀が突き立てられる。

次の瞬間、サイボーグの顔面から血が勢いよく噴出した。隣では震えながら誠を見つめる水島の姿がある。

「水島勉・・・違法法術展開および殺人未遂容疑で逮捕する」 

落ち着いての誠の一言。水島はただ腰を抜かして倒れていた。

「化け物・・・なんで・・・」 

頭の中に何度か痛みを感じた。

「ここで僕の能力をハッキングしたらさらに公務執行妨害がつくぞ」 

言い切った誠の言葉に水島は諦めたようにうなだれた。

「神前!応援が到着した!」 

背後でカウラが叫んでいた。アイシャも満面の笑みで誠を見つめている。

「あちらも済んだのか・・・」 

そうつぶやくと誠は不意に訪れた眠気に支配されて手にしていたサイボーグのチタン製の頭蓋骨に突き立てられた刀を杖にするようにして意識を失っていった。


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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 178

二発銃弾が誠の展開する干渉空間に吸収された時にベッドの裏の敵の動きが止まった。

『相手はベテランだ』 

「西園寺さん!」 

耳の通信端末から響く要の声に思わず手を止めた誠。

『馬鹿野郎!とっとと運べよ』 

「早くしろ!北川達も銃声で動き出すぞ!」 

壁際で叫ぶカウラ。誠は必死になって動くことの無い要の体を引きずって行く。

「いい様ね、要ちゃん」 

『ぶっ殺す!後で・・・』 

「威勢は良いのねえ・・・動けないくせに」 

『やっぱりぶっ殺す』 

動けない要の通信に背後を警戒していたアイシャが絡む。だがそこに背後からの銃弾が届いてきた。

「来ちゃったわよ!北川と例の人斬り」 

ショットガンのけん制射撃で何とか時間を稼ごうとするアイシャ。だが彼女の隣にあったパイプ椅子が半分になった時点で彼女の軽口も止まった。

「終りか・・・あっけないな」 

カウラのつぶやき。それを聞いた時誠の中で何かがはじけた。

誠は立ち上がりまわりに干渉空間を展開する。

「誠ちゃん!死ぬ気?」 

アイシャの言葉は誠には届かなかった。階段付近からの北川の拳銃弾と奥のベッドからのライフルの銃弾が次々と銀色に輝く誠を覆う干渉空間に命中しては消える。

「神前・・・」 

『誠?』 

つぶやくカウラ。要は唯一自由の利くタレ目を誠に向けた。

『なんだありゃ?』 

階段近くで北川が叫ぶ声が誠達にも聞こえてきた。


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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 177

「おい、神前・・・ラッキーかもしれねえぞ」 

拳銃を手に振り返る要がニヤリと笑う。ただ誠はそれを見ながら首をかしげた。

「西園寺。ラッキーとはどういうことだ?」 

首をひねるカウラにも要は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「一瞬だがこの建物の四階で衛星通信をしている奴の反応が出た。恐らく水島が呼び寄せた使い魔はサイボーグだ」 

「使い魔?ドラゴンとかじゃないから良かったとでも言いたいの?」 

アイシャがそう言いながら四階の気配を探っていた。

「軍用義体のサイボーグ。どこがラッキーなのよ」 

つぶやくアイシャを見てさげすむように笑うと要は小走りに走り始めた。

「西園寺さん!」 

誠が驚いて声をかけると要の胴が何かがぶち当たったように倒れた。そして同時に響く銃声。

「馬鹿が!」 

カウラはそう言いながら銃を構えて走り出す。誠もまたそのまま彼女に続いた。

「痛てえ!」 

「当たり前でしょ!這ってきなさいよ!」 

アイシャが叫びつつ銃口の光を目印に銃を三発打ち込む。

『銃だ!銃だ!』 

転がっていたベッドの残骸に向こう側から悲鳴が聞こえた。

「神前、西園寺を何とかしろ!」 

カウラの言葉に誠は干渉空間を展開した。そしてそのまま床に転がってわめいている要に向かう。干渉空間に先ほどのベッドの後ろからの掃射が続けられた。

「済まねえ・・・しくじった!」 

腹から血を流している要はそれだけ言うと動きを止めた。

「カウラさん!西園寺さんが!」 

「馬鹿!脳内の血液損失を防ぐ為に仮死状態になっただけだ!さっさと引きずって来い!」 

壁際で反撃を図るカウラの言葉に我に返った誠はそのまま要を引きずり始めた。

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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 176

「旦那・・・」 

北川は膝を突いてじっと業物『関の孫六』を満足そうに眺めている桐野孫四郎に声をかけた。

「標的が増えたことか?結構な話じゃないか」 

「旦那・・・」 

諦めたような言葉が自然に北川の口から出てくる。それを無視して立ち上がる桐野。それはいつもの殺人狂のそれであり、ただ黙り込むしかできなかった。

「第三勢力か?別に気にすることはない。我々は敵であればそれを斬り捨てるまでだ」

桐野の言葉があまりにも予想通りだったので北川はため息をついた。

「そうも言えないんじゃないですか?今回の剣でこれまでの旦那の趣味がばれましたし・・・」 

「それで貴様が困るのか?」 

「困りますよ!旦那の活動に制約ができれば俺一人で動かなきゃならないことも増えてきますし・・・」 

言葉を重ねるだけ北川はむなしくなってきていた。自分の顔が割れているばかりでなく桐野の顔があちこちに貼りだされることになれば面倒を背負うのは自分だった。他の協力者はいないことはなかったがどれも桐野ほど切り札として使えるほどではない。

「まあ楽しもうじゃないか、今日は。物事はシンプルに考えるのが一番だぞ」 

そう言いながら再び刀を見つめて悦に入る桐野にただため息をつくしかない北川。

「これからどうします?第三勢力の戦力が読めないのは確かですから」 

「逆にそうでなくては困るな。弱いものいじめは性に合わない」 

桐野の笑顔。北川は再び大きくため息をつくと拳銃のシリンダーを確認する。

「まあ旦那は好きに暴れてください。俺は俺でやりますから」 

そう言うとそのまま階段を下りようとした北川だったが桐野の殺気に振り返った。

「そちらは避けるべきだな・・・」 

「どうしてですか?」 

突然らしくもない助言をする桐野に驚いた北川は顔を向けた。

「保安隊は・・・あの嵯峨の部隊だ。手を出して虎を怒らせる必要もあるまい」 

「旦那が弱気なことを言うとは・・・」 

北川は桐野の言葉に頷くとそのまま桐野に続いて廊下を歩くことにした。

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