スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 121

隊長室の前に付くと早速ドアノブに手を伸ばそうとする要の前をカウラが遮った。

「礼というものがある」 

ただそれだけ言うと無表情にカウラはノックをする。

『おう! どうせベルガー達だろ! 』 

相変わらずのやる気のなさそうな声にカウラは肩を落としながらドアを開いた。

「どうだ? ずいぶん片付いたろ? 」 

誠達が部屋を見回す前に嵯峨が叫ぶ。いつも見慣れた書類と銃の部品の散乱した隊長の執務机とは別物のように磨き上げられてそれらしく見える机と何もない部屋に誠達はただ言葉もなく黙り込んでいた。

「あれだ……公安の連中が俺のことを嗅ぎ回ってるからな……近々任意の取り調べってことになるかも知れないからな。そうなると鑑定を頼まれてる品が心配だ。物の価値も知らない連中のことだ。下手をして傷つけられたらたまったもんじゃねえから片付けた」 

「簡単に言うけど……あれじゃねえのか? また茜の奴を使ったんだろ? 」 

苦笑いを浮かべる要。

「まあ……門前の小僧、習わぬ経を読むって奴でね。アイツも餓鬼のころから俺の事務所で骨董の類を見る眼もあるし、そう言う品を専門に預かる業者にも顔が利くしな」 

「かわいそうな茜ちゃん」 

いつもはこういう時には黙っているアイシャですら同情の言葉を吐く。美術品運搬の専門業者がこの部屋に鎮座していた嵯峨に鑑定や極め書きを頼んだ品を運び去っただけには見えなかった。軍の連隊長クラスのそれなりに威厳のある机に不釣り合いな使い込まれた万力を初めとした嵯峨の趣味とも言える拳銃のカスタム用の部品や工具まで部屋から消えている。

さらにいつもなら歩く度に巻き上がる金属粉も、べっとりと染みついているガンオイルの汚れすらぱっと見た限りどこにも存在しなかった。

「この部屋を三日かそこらで一人で掃除……」 

「一人じゃ無理だな。茜と……つきあいで渡辺。それに叔父貴のカスタムの秘密を盗みたいと言うことでキム……さらにはそのつきあいでエダ……四人がかりならなんとかなるだろ? 」 

要の推測に嵯峨は満足げに頷く。

「当りだ……少しはモノが見えてきたみたいだねえ……叔父として心強い限りだが……」 

そこまで言うと嵯峨は胸のポケットからマイクロチップを取り出す。

「脇が甘い……あれだろ? 租界の『預言者』に吉田の情報を探らせているらしいじゃねえか……しかも出してる金額聞いたら……呆れたよ」 

嵯峨は哀れむような視線を要に向けたままどっかりと隊長の机に腰を下ろした。


FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 120

「隊長! 」 

誠の突然の呼びかけに頭を掻きながら嵯峨は面倒くさそうに振り向いた。

「今回の演習……」 

「ああ、予定通り。なんにも起きないよ」 

あっさりとそれだけ言うと嵯峨は再び隊長室に歩き始める。

『聞くだけ……無駄だよな』

さすがに嵯峨という人物が分かってきた誠はそう思い直すと奥の女子更衣室から要達が出てくるのを待った。

「おう、暇そうだな。待ちぼうけか?」 

再び暇そうな人物が誠の前の医務室のドアを開いて現われた。小太りの眼鏡、浅黒い肌がどう見ても部隊の誰とも一致しない個性を持っている男。

「ドム大尉。出撃前の健康診断とかは……」 

「健康診断だ? そんなものをしなくたってお前等はみんな健康だろ? それとも何か? 日々の訓練はあれは飾りか何かか? 」 

不機嫌そうに呟くドムにただ誠は頭を掻く他無かった。

「そう言うわけでは無いんですが……データをとるとか……」 

「戦闘が人に与えるストレスのデータなんざ16世記くらいから集められてるんだ。今更俺が何をしろって言うんだよ。それに法術絡みとなれば俺はお役ご免だ。その点ならヨハンあたりに聞くのが一番だろ? 」 

「ええ、まあ」 

尤もな発言に誠はただ黙るしかない。

「まあ、あれだ。帰還後はみっちり検査の予定が入ってるからな。こう言うのは始まる前より終わった後が大事なんだ。いくら技術が進んでも、うちの整備の連中ががんばっても宇宙放射線の影響やら反重力エンジンから発せられた素粒子の遺伝子に与えたダメージやらの計測はヨハンの手にはあまるからな。覚悟しとけよ」 

それだけ言うと出て来たときと同じく突然のように扉を閉めて医務室に閉じこもる。

「何が言いたかったのやら……」 

「待たせたな」 

考え込んでいる誠の背後からカウラの声が響いた。驚いて振り返る誠の前に苦笑いを浮かべる要と口笛を吹いて余裕の表情のアイシャの姿も目に入ってきた。

「さあ、小言でも食らいに行きますか! 」 

やけに張り切ったようにそう言うと要はすたすたと隊長室目指して歩き始める。誠も重い足取りでその後を静かに付けていった。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 119

階段を上る間も物音も気配もなかった。

「技術の連中は新港か……」 

「運行部はどうなんだ? 」 

要の言葉にアイシャは曖昧に頷く。

「まあうちはシミュレータがあるしねえ……それに新港には機関部のスケベ連中がいるから近づかないわよ」 

誠はすぐにどろどろした女性関係を山ほど抱えた機関部の面々の顔を思い出した。昔からもてるという言葉とは無縁だった誠にはあまり想像の付かない世界。面倒そうだなと思いながら管理部のいつものように忙しく働いている様子の見える二階へとたどり着いた。

「さっさと着替えるわよ……まあ誠ちゃんは一人で男子更衣室だけど」 

廊下を足早に歩きながらのアイシャの一言。まあ誠はいつものことなのでただ曖昧に頷きながらその後ろについて歩く。

確かに人通りは少なくなっている。機動兵器を運用する部隊がどれほど技術面での支援を受けているか、そしてその支援のためにどれほどの人員が割かれているのか、それを誠はしみじみと実感した。

「じゃあ誠ちゃんはここで」 

誠は男子更衣室の前に置き去りにされる。中に入ってもやはりひんやりとした空気が中を占めているばかり。いかに多くの技術部の面々がこの部屋を利用していたのかを実感しながら誠は自分のロッカーを開いた。

慣れた手つきでジャンバーを脱いでセーターをハンガーに引っかけ、カーキーグリーンのワイシャツを身にまとい、ワンタッチ式のネクタイを首に巻く。

「ふう……」 

いつもならそこで島田や菰田の突っ込みが入るところだった。その島田はたぶん新港で05式の運搬作業の監督をしていることだろう。菰田は先ほど端末のモニターを睨み付けながら首をひねっている様を見たばかりだった。

「なんだか寂しい感じなんだな」 

それだけ言うと誠はスラックスを素早く履き、ベルトを無造作に締め、ジャケットを羽織って略章の位置を直すと下士官用の制帽を被って廊下へと出てみた。まだ女性陣の姿は無い。

「このまま一人で隊長室か……」 

「そりゃあストレスだわな」 

突然足下から声をかけられて驚いて飛び跳ねる。

「おい……そんなに驚かれても困るんだけど」 

苦笑いを浮かべているのは部隊長の嵯峨本人だった。

「隊長……暇なんですか? 」 

「まあね……鑑定を頼まれてる品物は全部東都の別邸に送っちゃったし……さすがにこれから任意の取り調べを受ける人間が銃のカスタムなんて……する気も起きないしね」 

そう言うとそのままよたよたと健康サンダルの間抜けな音を立てながら隊長室へと歩いて行った。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 118

「空に浮かんでいるのがネットで出ている地殻すらぶち抜く大砲でも……頼りになるのはシャムだけか……」 

あきらめを孕んだカウラの声に要がぴくりと眉を動かした。

「おいおい、それはいくら何でも神前の野郎に失礼じゃないのか? 」 

「そんな失礼だなんて……」 

愛想笑いを浮かべながら呟いた誠を要が鋭い視線で睨み付けた。

「事実だろ? 確かにあの砲の威力も干渉空間を展開すればおそらくは耐えきれる」 

「なら問題ねえじゃねえか」 

あっさり答えた要にカウラはひたすら大きなため息をついた。

「要ちゃん……いくら防いでも壊せなきゃなんにもならないじゃないの。それとも出来るの? 誠ちゃんに砲台の破壊。あんな撃ってそれで終わりなんて言う甘っちょろい代物が浮かんでいるんだったら東和宇宙軍も護衛の艦隊ぐらい配置しておくはずよ。スタンドアローンで敵中突破が可能な防御性能くらいはあると考えるのが普通じゃないかしら? 」 

アイシャの言葉に思い当たることがあるというように要の表情が変わる。

「ほら……誠ちゃんじゃ対応は無理。おそらく07式を駆るランちゃんは部隊の指揮で手一杯……攻撃に当てられてしかも成果が期待できるとなるとシャムちゃんのクローム・ナイト以外は想像が付かないんだけど……」 

「まあな……でもあいつも遼南内戦で知られた猛者だ」 

苦し紛れの要の言葉に再びカウラが大きくため息をつく。

「こちらの手札は一枚。相手は……もし東和宇宙軍があれの確保を優先するとなれば艦隊規模で向かってくるわよ……勝ち目はゼロね。まあそうなれば遼州同盟崩壊の主犯になるからそれは無いとしても……東和宇宙軍と噂の絶えないゲルパルトのいくつかの公然武装組織。あるいは大統領の超法規的判断で動いたアメリカ海兵隊。これはあまり考えにくいけど個人的なつきあいの関係で遼南宰相のアンリ・ブルゴーニュ氏のつながりでフランス海軍や海兵隊が動くって可能性も……」 

「ぐちゃぐちゃうるせえな! ともかくシャムが潰せば良いんだよ! 」 

「ああ、そのシャムなら今日は有給だよ」 

ハンガーの奥から叫び声が聞こえた。そこにはタバコを咥えた嵯峨の姿がある。

「お前ら……想像力を働かせるのは大変結構な話なんだけど……やることやってからにしてくれよ。とりあえず着替え。それと終わったら隊長室に来て謹慎開けの報告。それが終わったらランの奴からレポート用紙預かってるからそれに反省文を記入して今日中に提出。お願いね」 

それだけ言うと嵯峨は悠然とハンガーの階段を上って隊長室のある二階に消えていった。

「とりあえず着替えか……」 

カウラのその言葉を合図に誠達は嵯峨が立っていたハンガーから二階の執務室や更衣室のあるフロアーへ向かう階段へと急いだ。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 117

「おお! これぞ我が職場の有様ぞ! 」 

「要ちゃん……嘘っぽいのも大概にして」 

保安隊の駐車場に降り立ち、大きく伸びをする要にアイシャが突っ込みを入れる様を誠はただ苦笑いで見つめていた。実際一週間は長かった。たしかにその間の給料が出ないことは痛いと言えば痛い。誠もいくつか予約を入れていたプラモデルのキャンセルをしなければならなかったほどだった。

だが、それ以上に雰囲気がまるで変わっていた。

「まるで廃工場だな」 

運転席から降りたカウラの言葉で誠は自分の違和感の正体を見極めた。

ともかく人の気配がしなかった。

いつもならアサルト・モジュールの部品を運ぶための大型クレーンのうなりが響いてくるハンガーが沈黙で満たされている。

「まあ、良いじゃねえか。行くぞ! 」 

すっかり上機嫌の要はそのままいつものようにハンガーに向かった。いつもなら目にするランニングや銃器の訓練のためにライフルを背負った警備部の面々の姿もそこには無かった。ただ誠達の背中を見つめるだけの最低限の歩哨の視線だけがある。

「本当に……演習前って感じね」 

「いつもこうなんですか? 」 

「貴様は初めてじゃないだろ? 」 

カウラに言われて配属直後の『近藤事件』前後の出来事を思い出してみた。あの時も同じようにアステロイドベルトでの演習を前にしての沈黙があったような気がする。

「いやあ、普段を知らなかったもので……」 

「まあそんなものよ……」

アイシャがそのままハンガーの半分開いた扉を通りすぎるのを見て誠も後に続いた。

がらんとした空虚な空間がそこにはあった。奥に見えるいつもは誠達の05式に隠れるようにひっそり存在している漆黒の嵯峨の愛機の『カネミツ』の姿が見える。

「きれいなもんだねえ……すべては新港に搬送済みか! 」 

要の言葉が人気のないハンガーに響いた。

「分かり切ってること今更言っても……それにしてもクバルカ中佐の『ホーン・オブ・ルージュ』は演習参加機体に入ってなかったけど? 」 

「ああ、あれはオーバーホールに入るそうだ。元々手がかかる機体だからな。シャムの『クローム・ナイト』と整備時期がかぶるとまずいだろ? 」 

「へえ……そうなんだ……」 

カウラの言葉にアイシャが意味ありげに呟いた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 116

吉田俊平は後頭部に刺さったジャックを引き抜くと大きく息を吐いた。

「ずいぶんと……お時間がかかったようですけど……大丈夫かしら? 西園寺家……いえ、山城グループとしてはかなりあなたに期待しているのですからそれに答えていただかないと困りますのよ」 

吉田の後ろには上品そうな物腰で彼を見つめる女性の姿があった。留め袖の牡丹柄の西陣織の着物も、彼女が着れば決して派手には見えず、むしろ力不足に見えた。その特徴的なタレ目もまたその目の奥の人を引きつけるような光を押さえる役目を果たしていると考えれば不自然には見えない。

「まあ……あのお嬢さんに手柄を取らせるのは苦労するってところでしょうかね」 

苦笑いを浮かべながら振り返った吉田を見る女性の目が一気に殺気を帯びる。

「……要ちゃんはそんなに無能だとおっしゃりたいのかしら? 」 

「い! いえ! そう言うわけでは無いんですが……ワルを気取って租界に顔を利かすには役不足なのは確かかと……」 

吉田のいい訳に着物の女性は表情を満足した様子に急変させた。そのコロコロと変わる表情に思わず吉田の額に冷や汗が流れる。

「まあ……吉田さんの人を見る基準は新ちゃんだものねえ……あの子は本当に利発で賢い子だから」 

「46でお子様扱いか……隊長もかわいそうに」 

「私に勝てないうちはいつまで経っても嵯峨惟基なんて言う立派な名前は不釣り合いよ。新ちゃんで十分」 

女性はそれだけ言うと満足げに吉田の座っているモニターの並ぶ部屋を後にした。部屋の自動ドアを出ると白い詰め襟の制服を着た兵士が敬礼をして彼女を迎える。

「お方様……吉田殿の首尾は? 」 

「上々と言いたいところだけど……あとは要ちゃん次第ね。それより相馬君達の準備は出来たのかしら? 」 

相変わらずの余裕の表情。それに詰め襟の士官はにんまりと笑って頷く。

「すべては予定通りです……しかし、康子様。あのインパルス砲台。今すぐ破壊してしまった方が手っ取り早いのでは無いのですか? 」 

士官の言葉を聞くと康子は静かに帯に指していた扇子を取り出して軽く自分の顔を扇いだ。

「それが出来るのでしたらとっくの昔にやっておりますわ。あれは簡単に壊せる代物ではない……確かに私は壊してみせる自信がありますが……私が手を出すとうちの人がいろいろ面倒を負うことになるでしょ? 」 

「まあ胡州のファーストレディーが東和の国有物を破壊したとなれば……元々東和は胡州に遺恨がありますから」 

「そう言うわけ。あくまであれの破壊は遼州同盟司法局によってなされなければならない。しかも出来ればその破壊が行われたことすら外に漏れない方が後々の為になる……本当に難しいお話ですわね」 

まるで茶飲み話でもするようににっこりと笑う。士官はその西園寺康子と言う人物の底知れなさに怯えながらただ敬礼をして彼女がハンガーに向けて去るのを待つのが精一杯だった。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 115

『本当の俺ねえ……』 

突然部屋に響き渡った電子音声にオンドラは顔を顰めた。

「突然喋るんじゃねえよ」 

『失礼した。まあ……こっちの方がかなり手間をかけたわけだからそう謝る必要は無いか』

「そうかも知れませんね」 

白い目でネネがオンドラを見る。

「なんだよ……アタシが無能みたいじゃないか」 

『みたいじゃなくて無能そのものだったね。君の情報調査能力……預言者ネネ。多少買いかぶりすぎていたんじゃないですか?』 

「いえ、別に買いかぶってなんていませんよ。それだけ無能だったからこそ私達はこうしてあなたに出会えたんですから」 

ネネの確信を込めた言葉。オンドラは不機嫌そうに銃口をまだ痙攣している義体へ向けた。

『ああ、そいつなら好きなだけ撃ってくれ。俺としてはそんな偽物がはびこっている世の中にはうんざりしているんでね』 

吉田の言葉が終わるまでもなくオンドラはフルオートで義体に弾丸を撃ち込んだ。痙攣が止まり地べたに血が拡がっていく。

『気が晴れたところで……まず君達が知りたいことは何なのかな? 』 

できの悪い生徒を教える教師宜しく呟く吉田の言葉にネネは眉を潜めた。

「私の知りたいこと……最初にあなたの悪趣味が先天的なものかどうかを知りたいですね」 

『これは意外なところから話が始まるね……悪趣味……確かにそうかも知れないね。あちこちに分身の死体を残して消える……少なくとも趣味の良い存在のすることじゃない』 

「確かにな。趣味が良ければ最初から分身なんて言うものを作る必要がねえからな」 

オンドラの言葉。吉田の感情を表すように黒く染まったモニター画面が軽く白く点滅した。

『一つの意識……そこから出発するのが人間という生命の特徴だとするならば、俺のそれは多数の視点を持つ意識集合体として出発することになったからそれを統合する必要が生じた段階で個々の異端的意識を消す必要が生じた……こう言う説明では不十分かな? 』 

「不十分ですね。まず、なぜあなたの意識が最初から分裂して多面的な視点を持つ必要が合ったのかの説明が必要になります。またその必要に妥当性があったとして、なぜ突如としてその多面的な視点が百害あって一理無い状況に至ったのか……それも説明をいただかないことには……」 

ネネの言葉。すぐに画面が再び白く点滅する。

『預言者……その二つ名は伊達では無いんだろ? なら二つの回答の予想も付いているんじゃないかな』 

吉田の言葉にネネは答えることもなくにんまりと笑う。

「ここにちょうど良い証人としてのオンドラがいますから……彼女に分かるように説明してください。そうしないと私も契約相手のあなたのことを心配している同僚にあなたについて説明をする自信が無いんです」 

『これは一本取られたな……じゃあ始めようか…俺が何者で何を目指しているのか……』

満足げな吉田のつぶやき。オンドラはただ黙ってそれを聞いているだけだった。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 114

「残念だ……」 

心底残念そうに肩を落とす吉田にネネはただ黙ってその表情を見つめるだけだった。

「人の死を望む存在に同情する余地は無いと思いますが……」 

「そうかな? 世に自分の利益を求めない人がいないのだから時に国家というものに依存するパーソナリティーがその国家に敵対するものに死を望むのは珍しい話ではないだろ? 」 

吉田は再び饒舌を取り戻してネネを睨み付ける。

「私はそう言う狂信者とは距離を置くのをモットーにしているもので」 

「確かにそれは賢明な発想だ。だが成功には時として彼等と共闘することを求める場面もある」 

そう言うと得意げに吉田は背後に並ぶ画面に目をやった。瞬時にそれは何か巨大な施設を映し出す。

「何ですか? それは」 

ネネの興味深げな反応に満足げに吉田は頷いた。

「興味があるね? 先ほど狂信者と距離を置くと言いながら……これが狂信者の作品そのものだというのに」 

「ゲルパルト辺りの秘密兵器というところか? 」 

オンドラの当てずっぽうの問いに吉田はもったいを付けたような笑みを浮かべている。

「それであなたは何をしようというのですか? 」 

「私が望んだ訳では無いよ。狂信者はただ敵の死を望む。その様子の観察をもくろんだだけだ」 

「悪趣味だな」 

「なんとでも言いたまえ! 私は私の快楽の為に存在しているのだから」 

背後のメカニズムの動きにネネ達の視線は釘付けになる。何度となく繰り返される惑星を狙撃する巨大砲台の映像。 

「それは『管理者』の望んだことなんですか? 」 

静かに放たれたネネの一言。それまで満足の笑みを浮かべていた吉田の表情が崩れる。 

「管理者……誰だね? それは」 

「あなたのお仲間が消された場所に必ず残っていた符号です。『管理者』……あなたはそれが誰かを知っていると思いますが? 」

「知らないな! 『管理者』? そんな存在を私は……! 」 

そこまで言ったところで吉田の体が突然空中に撥ね飛んだ。絶え間ない痙攣を引き起こしながら地面に転がり、口からは泡を吐き始める。

「おい! ネネ! 何をした!」 

オンドラが叫ぶのも当然だった。先ほどまで満面の笑みでネネ達と会話をしていたサイボーグはただ痙攣と骨髄反射を繰り返しながら床に転がるだけだった。

「ようやく本当の『吉田』さんが現われますよ……」 

目の前の惨めな義体を見下ろしながらネネは静かにそう呟いた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 113

「終わっているか……それはいい! 」

そう叫んだ半裸の吉田。その狂気の表情にネネは目を背けた。目を見開き、ただ口を半分開けて笑みと呼ばれる表情を浮かべるそれ。

「その面! 見ててむかつくんだよ! 」 

オンドラの言葉にただひたすら笑いだけで返す吉田。

「だから何だって言うんだ? まあいいや、君達は運が良い。俺は今大変に機嫌が良いんだ」

「そうは見えませんけど……」 

それとないネネのつぶやきにも吉田の笑みは止まることを知らない。

「まあいい。君達は俺のことを捜していた……」

「さもなきゃこんなところに来るかよ」 

「そうだな……だが機嫌が良い俺に会えるのはそう無い機会だぞ」

吉田はそう言うと一つの端末に取り付いた。狂ったようにそのキーボードを叩き続けた結果ついに全面の画面が切り替わる。

すべてはアルファベットの羅列に埋め尽くされた。それがドイツ語のものだとネネはすぐに気づいた。

「ゲルパルトの仕事でも請け負っているんですか? 」 

ネネの言葉に吉田は狂気を孕んだ笑みで頷く。

「大きく時代は動く……時代を動かす機会とは無縁だと思っていたが……世の中そう捨てたもんでもないらしい」 

「お前の場合すでに捨ててるみたいなもんだけどなあ」 

オンドラのつぶやきを無視して吉田の笑みは続く。

「君達も見ただろ? 海峡を越えていく避難民の乗る輸送船の群れを」 

「あれはもう片が付いた……終わった事実を受け入れられない人達の群れに見えましたけど」 

非難めいた響きを湛えたネネの言葉に吉田は耳を貸す様子もない。

「いや、彼等は正しいんだよ……まもなくそれは証明される……外惑星の連中……悪意を湛えていい顔をしていた……実にいい顔だった」 

「悪意を湛えたいい顔? そんなものがあるなら見てみたいね」 

「君は今俺を通して見ているじゃないか! 」 

「なら見たくもないな」 

オンドラの言葉に話すに足りないと言うように吉田は目をネネに向ける。ネネは無表情に吉田を見つめた。

「おかしな話とは私も思います……悪意はどこまで行っても悪意ですから」 

吐き捨てるように呟かれたネネの言葉に吉田は大げさに肩を落とした。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 112

「なんだテメエは……? そう言うテメエはなんだ? 」 

男の目が笑っている。その様が不気味に見えて思わずオンドラは顔をゆがめて身を引いた。男の顔かたちは彼女が調べた保安隊の第一小隊二番機担当者吉田俊平のものだったが、そのやせぎすの義体は軍用とはとても思えないものだったし、爛々と光る目はどう見てもまともな人間のそれではなかった。

「そうですね……侵入者は私達の方ですから」 

「ほう……」 

ネネの言葉にすぐに吉田は関心をネネへと向けていた。棺桶からジャンプして飛び出し、跳ね回りながらネネの周りを回る。

「オメエ……アングラ劇団の劇団員か? 」 

「失礼なことを言う! 」 

思わず出たオンドラの本音にこれもまた大げさに反応するとそのままじりじりと顔を銃を手にしているオンドラに近づけた。もし彼女が素人ならば恐怖のあまり引き金を引いているところだが、吉田は相手がそれなりに場数を踏んだ猛者だと読んでかうれしそうな表情を浮かべてじりじり顔を近づける。

「来るんじゃねえよ! 気持ち悪い! 」 

「それを言うならこちらの方だ! せっかく良い気分で眠っていれば突然の侵入! 君ならこんなときにご機嫌でいられるかね? 」 

オンドラとは話が合わないと悟ってか、吉田は話をネネに振ってきた。

「でも入り口のあの文字。あれを書いたのがあなたなら私達を歓迎してくれても良いと思いますよ」 

ネネの言葉に矛盾はなかった。しばらく吉田は天井を見上げて一考した後、手を打って満面の笑みを浮かべた。

「そうか! あの謎かけを解いたのか! 」 

「そうじゃなきゃここにいねえだろ? 」 

オンドラのつぶやきを無視して吉田はネネの手を取った。

「学究の徒、遠方より来たるか! これはまた楽しいことだな! 酒宴でも催したいところだが……見ての通り空ものもろくにない有様でね」 

「酒宴だ? まっぴらだね」 

またも呟くオンドラ。吉田は敵意の視線をオンドラに向けた後、すぐに満面の笑みに戻ってネネの手を取る。

「この星に眠る謎。どれもまた興味深いものばかりだ! それを尋ねてもう何年経つか……成果を横取りしようとする馬鹿者達の相手も疲れ果てたところだからね」 

「成果を横取り? あなたはこの部屋で研究成果をハッキングしているだけなんじゃありませんか? 」 

うんざりしたように呟いたネネの言葉。だがネネには吉田の敵意が向かうことはない。満面の笑みを崩すことなく何度となく頷き笑い声を静かに漏らす。

「確かに……個々の研究成果はどれも私ではなくそれぞれの実地の研究者の地道な活動の賜であることは認めるよ……でもそれを統合し一つの成果として世に送り出す天才が必要だ。そうは思わないかね? 」 

「自分を天才呼ばわりか……終わってるな」 

再び殺気を帯びた敵意の表情がオンドラに向けられる。ネネはその様子があまりに滑稽なので吹き出しそうになりながら吉田の次の言葉を待った。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 111

開いた道はこれまでの洞窟の自然を装った姿は無かった。明らかに重機で削った爪痕が克明に残っているのがわかる。

「しかしあれだねえ……さすがというか何というか……」 

銃をかざしながら先を進むオンドラが感心した視線を振り返る度にネネに向けた。

「何がですか? 」 

「古代遼州語? そして現在の遼州の言葉の地図。全部頭に入っているわけか? すげえ話じゃねえか」

オンドラの珍しく本心から感心しているような言葉遣いにネネも少しばかり気をよくして微笑んだ。

「あなたの商売道具は手に持っている銃だとすれば、私の場合はこれです」 

静かにネネは自分の頭を指さした。振り向いたオンドラは分かりましたというように大きく頷く。

「伝説の情報屋……馬鹿には確かに勤まらない仕事だ」 

オンドラはそう言うとゴーグルを外して銃の銃身の下にぶら下げたライトで行く手を照らした。

行き止まりには銀色の扉が見えた。

「もう偽装の必要も無いってわけか……どんな人物が待ち受けているのか……」 

「予想はいくらでも出来ますが、今はするだけ無駄でしょう。顔を合わせて話せば一番手っ取り早く分かりますよ」 

ネネはそう言うと躊躇うように立ち止まっているオンドラを追い抜いてドアの前に立った。ドアはゆっくりと音も立てずに開く。オンドラはさすがにネネの行動が無謀だと感じてその前に飛び出して銃口を部屋の中に向けた。

薄暗い明かりが二人を包んだ。そしてその明かりがだんだんと強くなっていくので二人は思わず眼を細めていた。闇に慣れた目が何とか光を捉えることが出来るようになった時、二人は部屋の中央に棺桶のようなものがあるコンピュータルームと言うのがその部屋の正体だと知った。

「なんともまあ……」 

オンドラは銃口を棺桶に向けたまま部屋を見回した。壁面を埋め尽くすモニター画面。中空にもフォログラムモニターが展開しており、そこにはオンドラも何度か見たことがある様々なテレビ番組や映画、ネットの検索画面やゲームのプレイ画面が映し出されていた。

「監視者気取りのドラキュラさんの顔は……」 

苦笑いを浮かべながら棺桶に顔を突き出そうとした瞬間、棺桶の蓋が勢いよくはじき飛んだ。オンドラも場数は踏んだ手練れ、蓋をかわして飛び退くとそのまま銃口を蓋の中から現われた半裸の人物に向けた。

「なんだ! テメエは! 」 

オンドラの叫び。ネネはただ黙ってにらみ合う二人をじっと眺めていた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 110

「乱れねえ……あれか? いきなりスカートをこうして……」

ネネのスカートに手を伸ばそうとしたオンドラの頭を思い切りよくネネははたいた。

「それで道が開かれるなら別にこの文字を読む必要は無いんじゃないですか? 偶然で大体の片が付く」 

「違えねえ」 

オンドラはそう言うとそのまま先頭に立ってホールのようになった道を引き続き歩き続けた。すぐにそれは行き止まり、小さな穴が開いた壁に突き当たった。

「ここか……」 

ただ静かにオンドラは壁に手を擦りつける。よく見ればそこには裂け目があった。

「この穴はマイクですね。そうなると」

ネネは迷うことなく継ぎ目にナイフを突き立てようとするオンドラを押しのけた。

「『ネルアギアス!』」 

一言、はっきりとそう言ったネネ。オンドラはしばらく呆然と何が起きたか分からないようにネネを眺めていた。

すぐに結果は現われた。微動だにしないと思われた継ぎ目がぎりぎりと拡がり、人が一人通れる程度の隙間が生まれた。

「おいネネ……何をした? 」 

「何をって……見ていませんでしたか? 」 

「見てたけどさあ。何なんだよ! 」 

ただ疑問ばかりが頭に押し寄せて混乱しているように見えるオンドラに静かにネネは笑いかけた。

「そうですね。これは遼州文字と古代遼州語の知識がないと分からないことですから。まず、この文字を書いた人……まあ十中八九この奥で私達を待っている吉田俊平なんですが……彼が要求していた知識はまず遼州文字が読めることでした」 

「まあな。そう書いてあった」 

ネネの窘める口調に少しばかり苛立ちながらオンドラが吐き捨てるようにそう言った。その様子に満足げに頷くと続いてネネは先ほどの文字の辺りを振り返った。

「古代遼州語で『乱れ』とは何か? そして『心』に関係する言葉は何か? それを知っている人ならば答えは一つ、『ネルアギアス』という単語になります」 

「だからその『ネルアなんとか』がなんで『乱れ』で『心』と関係するんだよ! 」 

明らかに不機嫌に呟くオンドラ。ネネは静かに言葉を続けた。

「遼州の民……一説には五十万年前にこの星にたどり着いたと言う話ですが……彼等はこの地にたどり着くと同時に文明を捨てて青銅器の世界に回帰しました。彼等は人の心のある力が自分達を滅ぼしかねないと思ってその力を放棄することを誓ったんです。その為、後の現在でも遼南の山岳地帯の少数民族などが使っている現遼州語ではその力を指す言葉……『ネルアギアス』が『乱れ』という意味で使われています」 

「言語学のお勉強か? アタシはご免だね! 」 

「尋ねてきたのはオンドラさんですよね。それに私はあなたの雇用主です。今後のことも考えて最後まで聞いていただきますよ。『ネルアギアス』とは古代遼州語では『技術』と言う意味なんです。彼等は技術が人を滅ぼすと経験し、この星で原始に戻った……まあそうなった理由までは私も分かりませんが」 

それだけ言うとネネは不機嫌そうに腕組みをしているオンドラを置いて洞窟を奥へと歩き始めた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 109

さすがに普通のトラップはネタ切れという感じでオンドラは止まることなく五十メートルほど洞窟を奥へと進んだ。左右が急に開けて天井が高くなる。

「どう見る……雇用主様」 

「壁面を見る限り風化や落盤で出来た空間じゃありませんね。重機で削り取った跡を整えてそれっぽくしたって言うところじゃないですか? 」 

「ご名答だね。で、あの文字をどう見る? 」 

オンドラが指さす天井。ネネはすぐにコートから小型のライトを取り出して照らしてみた。文字のようなものが浮かんでいるのが見える。ネネはすぐにそれが本来このような場所にある文字ではないことを悟った。

「オンドラさん。よく文字だと分かりましたね。あれは遼州文字……この星に人が住み始めた時代に使われていた文字です」 

「遼州文字……遼州文明は文字を持たないってのが特徴じゃ無かったのか? 」 

どこかで聞きかじったという感じで呟くオンドラ。ネネは微笑みながらただ文字を見上げていた。

「確かに現在の記録……つまり地球人がこの星にやってきた時には当時の七王朝は文字を持たない文明でした。彼等の間に伝わっていた伝承の中にはかつて人を不幸にする要素として鉄と並んで文字が上げられています。遼州の先住民、すなわち私達の祖先は意識して文字を捨てて青銅器文明に回帰したんです」 

「ずいぶんと物好きな話だねえ……便利さを捨てて原始に戻るって遼州の前の文明の指導者にはアーミッシュでもいたのかねえ? 」 

感心したのか馬鹿にしているのか、口笛を吹くオンドラを見てただ慈悲に満ちた笑みを浮かべた跡、再びネネは文字を見上げた。

「『この文字を読める者にのみ、この先の扉は開かれる』って暗号でも記しているんでしょうか? 」 

「おいネネ! 読めるのか? 」 

「先遼州文明の資料は何度か目にしたことがあるので大体は……」 

「さすがインテリ! 」 

「褒めているようには聞こえませんよ……『行く手に現われた道は偽りの道。汝、それを通る無かれ。ただ道は心の中にあり、汝、その道を進むべし』」 

そこまでネネが読んだときにオンドラは呆れたようにため息をついた。

「心の中の道? なんだよそれ……あれか? 東和軍とかが使っている意識下部プリンティングセキュリティーシステムでもあるって言うのか? 」 

「こう言う謎かけをする人はそんなハイテクを使う趣味は無いと思いますよ……とりあえず続きを読みますね。『心の中は常に乱れるものなり、汝の乱れが我への道なり』……以上です」 

「は? 」 

オンドラはただ呆然と文字を読み終えて振り返ったネネに答えるだけだった。

「『乱れ』が重要なんですよ」

ネネの確信のある言葉にただオンドラは首をひねるばかりだった。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 108

「何を……」 

「まあ見てなって。アタシも初めて使うんだけど……」 

オンドラが取り出したのはスキー用のゴーグルのように見えた。それを顔に取り付けた後、そこから伸びるコードを自分の後頭部にあるジャックに差し込む。

「爆発があったってことは空間のゆがみが物理的に発生したってことだ。焼け焦げた跡があると言うことはそれほど古い話じゃ無い。しかも近くにはトラップに引っかかった間抜け野郎の姿も無い」 

そう言いながらオンドラは洞窟の入り口を眺めた。高さは二人が立って入るには十分。幅から考えれば手榴弾クラスの爆発でも二人を巻き込んで殺傷するには十分だろう。

「おお……見えるねえ。法術師じゃねえのに歪んだ空間を示す色の変化がばっちりだ」 

「そんなものが出来ていたんですか? 」 

「あれだろ? 地球のお偉いさん達はこの前のなんとかって言う胡州の馬鹿野郎のおかげで法術ってものが知られるようになる以前からその存在を知っていた。知ってて隠していた……」 

オンドラはゴーグルを付けたまま洞窟に入る。周りの岩や地面を何度か確認し、納得しながらゆっくりと進む。ネネはオンドラが置いて行った銃をバッグに無理矢理詰め込むとそれを引きずりながらオンドラに続いた。

「第二弾だ……色が薄いってことはそれなりに昔に引っかかった奴がいるな……場合によっては得物がいるな。ネネ、済まねえ」 

背後までバッグを運んできたネネに頭を下げるとオンドラはゴーグルを付けたまま手慣れた手つきで銃を組み立て始めた。銃身を機関部に深くねじ込むとその下にグリップを当ててピンをたたき込んで固定する。そのまま機関部の後ろにも同じようにピンを刺してストックを固定。鉄の塊はすぐに銃へと姿を変えた。

「手慣れたものですね」 

「これが食い扶持だからね」 

そう言うとオンドラはそのまま銃を構えながら中腰の姿勢を取る。

「ネネ、アタシの頭より上には手を出さないでくれよ……不可視レーザーが走ってる。右の壁のセンサーへの光線の供給が途絶えたら何が起きてもアタシのせいじゃねえからな」 

「それほど物好きじゃありません」 

ネネはかがみながらオンドラの後に続く。またオンドラが歩みを止めた。今度は跨ぐようにして何かを乗り越えている様子が後ろのネネからも見えた。

「古典的だね……ピアノ線。まあ確実と言えば確実だが」 

「トラップが好きみたいですね、吉田って人は」 

「まあ傭兵なんて言う職業柄だろ? 東都の租界にもそう言う奴は何人かいるぞ。なんなら紹介しようか? 」 

「そう言う悪趣味な友達は欲しくありません」 

オンドラの冗談に真顔で答えるネネ。その様子に振り返って笑みで答えるとオンドラは再び真剣な表情に戻って洞窟を奥へと進んだ。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 107

しばらくネネの動作を思い出しながら自分が崖を登るのが精一杯だったオンドラが上を見上げたとき、すでにネネは二十メートルほど上の頂上に這い上がろうとしているところだった。

「これじゃあアタシがおきゃくさんだねえ」 

ただ苦笑しながらオンドラは必死になって崖を登り続ける。軍用と銘打っていた義体を闇で手に入れたオンドラ。地球製と闇屋は説明していたが出所なんて掴みようがない闇物資に生産地名など記録されているはずもなかった。半年に一度、その闇屋とつながりのある民生用義体メーカーのエンジニアのチェックをしてはいるが、彼等の扱う民生用の義体とオンドラの軍用義体とでは構成される部品の精度からしてまるで違うものでそのチェックが意味のあるものだったのかとオンドラは急激に体内の人工筋肉内に蓄積されていく疲労物質を関知するシグナルを頭の中で受け止めながら苦虫をかみつぶすように表情を変えた。

「ふう……」 

なんとか重い体を崖から引き上げたオンドラを涼しい顔でネネは待ち構えていた。

「これからはあなたのお仕事……」 

「ちょっと待ってくれよ」 

「なんですか? 」 

表情一つ変えずに本心から不思議そうにオンドラを見つめるネネ。

「もしかして疲れているんですか? 一応あなたは……」 

「言いたくはねえがこの体のスペックじゃこれまでの行程は無理があったってことだ。やはり専門の技師のチェックが必要な程度の代物らしい」 

「それならより気合いを入れてこれからの仕事にかからなくてはなりませんね。今回の仕事が成功すればおそらくは西園寺のお嬢さんは定期的に私達に仕事を回してくれるでしょう……しかも破格の条件で」 

「確かに……」 

反論をする元気もオンドラには無かった。体内プラントが正常に機能していることを確認しながらオンドラは出来る限り体を動かさないように背負っていた重いバッグを地面に置いた。そして静かに目の前にぽっかりと口を広げた洞窟に目をやる。

「まるで……ファンタジーの世界のダンジョンの入り口みたいな雰囲気じゃねえか? 」 

「それなら時代は中世ヨーロッパの世界観で作られているでしょうが……」 

ネネはオンドラの軽口を聞き流しながらそのまま洞窟の脇の雪の中に手を入れた、オンドラは気になっていたがネネは手袋はしていない。それでも平気で雪の中から笹の枝を取り出すとそのままむしる。

「こうして……焼け焦げた跡がある……おそらく爆風によるもの」 

オンドラはパイプ状の鉄をバッグから取り出しながらネネの手にある笹の端が炭化している様を確認した。

「トラップか……だろうね。そうなるとアタシを連れてきた理由がよく分かる……それにしてもネネ。あんたは凄いよ。あんたが船まで登山用具を持ってきておきながら置いて行った理由がよく分かったわ」 

「褒めているんですか? 」 

「いや、呆れてるんだよ」 

それだけ言うとオンドラはパイプ、アサルトライフルの銃身を機関部に組み込む作業を止めてそのままバッグの奥から箱状のケースを取り出して地面に置いた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 106

「風がないのが幸いと言えば幸いかねえ……」 

黙っていることが苦手というように苦笑いを浮かべながらオンドラは早足のネネの後に続いた。事実、続く道の中央の地面の岩が露出して見える事実はこの島が冬には北からの強い季節風に煽られる日々を重ねることを示していた。

「幸運は訪れるときは立て続けに訪れるものです。そして不幸もまた同じ……」 

「妙に悟った発言だねえ……ただそれはアタシも知っている話だ」 

ネネはオンドラの仏頂面を確認するために振り返りにこりと笑うとそのまま道を進む。波の音だけが響いている文明社会から隔絶された北方の島。

「全く……吉田俊平……何者なのかどんどん興味が出る光景だよ」 

オンドラの軽口が続く。ネネはただ静かにそれを聞き流しながらまるで来たことがある道とでも言うように迷うことなく真っ直ぐ続く海沿いの小道から笹藪に覆われた獣道に足を踏み入れる。

木々は凍り付き、微かに吹く風に遙か高い梢が揺れているのが目に入ってくる。

「ここは本当に東和かねえ……人が入った気配がまるでねえや」 

「山の向こう側に行けば空港も街もありますよ」 

ネネはそれだけ言うとそのまま獣道を進む。足下を遮る笹の葉は凍り付き、ネネのブーツに当たる度に金属のような音を発してくだけて落ちる。オンドラは傾斜が急になるに従って肩からずり落ちそうになる大きなバッグを気にしながら珍しく黙ってネネに続いた。

道は緩やかな左右への蛇行を繰り返しながら続いた。しばらく行くと道の左脇に沢の流れのようなものが見えた。沢の中央はちょろちょろと凍結を免れた僅かな水が積もった雪に遮られて勢いを殺されながらも静かに流れ続けていた。

「熊とか……いるんじゃないかねえ……」 

「いるかも知れませんよ」 

立ち止まりオンドラを振り返りにやりと笑うとまたネネは前を向いて歩き出す。オンドラは思わずバッグに手を伸ばすがすぐに思い直して黙ってネネの後に続いた。

急に道は終わりを告げた。正面には崖が壁のように立ちはだかっている。森も途切れ、そこから先は完全に岩と氷ばかりの世界であることが黒いつやのある崖の石が語っていた。

「もうすぐですね」 

ネネはそう言うとそのまま迷うことなく岩の一つに手を伸ばした。確実に手を置く場所を押さえて小さな体を片腕で持ち上げる。足もまた的確に今にも滑りそうに見える岩と岩の隙間に置かれるとネネは次の動作へと移って切り立った崖を登り続けた。

「やっぱりあんたは登山の才能があるよ」 

「褒める暇があったら付いてきてください……ただし落ちないでくださいよ」 

さすがに振り返って振り向く余裕はネネには無いようでそれだけ言うとそのまま崖を登る動作を繰り返す。オンドラは一瞬躊躇した後、ネネが手をかけた岩と足をかけた石の隙間を確認しながら慎重に崖を登りはじめた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 105

ネネは静かにムートン生地のコートの襟を手で寄せながら空を見上げた。この時期の東和北部の気象条件の典型的な例を示してみせるように薄い雲が太陽を隠し、もやのような空の曇りの中から光が静かに地面に注いでいるのが見える。

「本当に……人が住むには適していない場所なんですね」 

静かにそれだけ言うとオンドラが消えていった岩陰に目をやった。すぐにそこからブーツを脱いで中に入った水を抜きながら素足で歩いてくるオンドラの姿が目に入った。

「本当に大丈夫なんですか? 」 

「一応ミルスペックの義体だからねえ……とりあえず異常は感じないけど……もし問題があったら追加料金を請求するからな」 

「まあそのお金は西園寺のお嬢さんに言えば出してくれるでしょ」 

それだけ言うとネネは確かな足取りで砂浜から黒い岩肌の崖を登りはじめた。オンドラはその足取りがあまりに確かで確実なのでしばらくは呆然とその様子を見守っていたが、しばらくして自分が雇われ人である事実を思い出して慌ててネネの後ろについた。

「心配しなくても大丈夫ですよ……山登りは遼州にいた時には必須科目でしたから」 

「でもなあ……」 

「心配してくれているんですか? 」
 
「まあ金の分は」 

苦笑いを浮かべるオンドラに自然体の笑みで応えたネネはすぐに崖を登ることに集中した。決して緩やかな崖ではない、さらに所々に吹き付けられた強い風でめり込むように白く染まった雪の塊があって素人ならばすぐにでも滑り落ちてしまうような峻険な崖を順調そのものに登っていくネネ。オンドラはただ租界という閉鎖環境でその中立的な立ち位置と正確かつ的確な助言から『預言者』の二つ名で呼ばれる幼く見える情報屋の自分の知り得ない才能に驚きつつその後ろを続けて登った。

正直オンドラはネネに付いていくのがやっとだった。確かに百キロを超える義体の重さはあるにしても馬力ではネネはオンドラの十分の一にも満たないはずだった。もし足を踏み外したり手を添える場所を間違えれば生身の人間の反応速度なら対応できずに転落して行くしかないような切り立った崖。そこを一つの間違いもなく的確に登り続けるネネ。

「あんた……山登りの趣味でもあるのかい? 」 

「久しぶりですよ……本当に……たぶん東和に来てからは初めての経験です」 

さすがに体力には自信が無いようで息を切らせながらもネネは的確な動作で崖を登り続け、ついには船から見た崖の最上部へとたどり着いていた。

「ああ、疲れました……日頃の運動ってものは大事なんですね……」 

そのままひょこりと近くの岩に腰掛けてほほえみを浮かべるネネ。オンドラはようやく重い体を崖から引き上げるとこれまで登ってきた崖の高さを確かめるべく下をのぞき見た。百メートル以上はある。それでも目の前のネネは涼しい顔をしてこれから向かうべき洞窟があるという北の方角をじっと眺めている。

「本当に……あんたは凄い奴だな」 

「あなたの親御さんが育った遼南にはこんな山道はありふれているんですよ……まあもう二度と戻ることの出来ない国だとあなたは言うかも知れませんが」 

それだけ言うとネネは疲れも見せずに立ち上がり、崖の横に不自然に出来ている道をゆっくりと北へ歩き始めた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 104

「本当に6時間で帰ってきてくれよ……」 

「分かったって言ってるだろ!」 

心配そうな表情の船長を怒鳴りつけながらオンドラは背後からゴムボートを引っ張り上げる。軍用の軽量かつ搭載量の多いゴムボートの存在はこの船がまともな漁をする船ではない事実をオンドラ達に思い知らせる。一人で軽々とそれを持ち上げるオンドラにネネは不器用に手を貸そうとする。

「一応、あんたは雇い主なんだから……」 

珍しく裏のない笑みを浮かべたオンドラはそのまま目の前の荒れる海にボートを投げた。浮かぶボートに足下の大きめのバッグを投げ、そのまま舳先に縛られたロープをたどって上手い具合に乗船するオンドラ。

「手を……貸してください」 

「預言者もさすがにこんな船に乗るのは初めてかねえ」 

皮肉を込めながらネネの手を取るオンドラ。ネネは小さな体でひょこりとボートに飛び移る。軽い船体が小さなネネを受け止めただけでも大げさに水しぶきを上げた。

「6時間過ぎたら超過料金……」 

「くどいってんだよ! 」 

船長を怒鳴りつけたオンドラはそのまま船体の後ろにあった小型の推進器で船を陸地へ向けた。

「全く……金がいくらあっても足りねえや……経費の精算の時に苦労するな」 

「まあオンドラさんは通常のルートは使えないですからね。私だけで良ければ航空料金と宿泊費だけで済むんですが……」 

ネネの重い口調で自分がお尋ね者だったことを思い出してオンドラは黙り込むとそのまま船を遠くに見える黒い砂に覆われている浜辺へと向けた。

「吉田俊平……そのオリジナル。こんな僻地に住んでいるとはねえ……国家元首の暗殺なんてことを何度となくやるような凄腕だぜ……なにを好きこのんでこんな寂しい場所に住んでるのやら」 

「それは本人に聞いてみないと分からないことですよね。それに……これから会う初めての生きた吉田俊平が本物の吉田俊平とは限らない……」 

浜辺を見つめたまま曖昧に笑いながらネネが呟く。オンドラは不可解そうな顔をしながらそれ以上話を続けずにただ船を進めた。

海流の関係か、波の割に船は滞ることなく一直線に浜辺に進んでいく。オンドラが振り返るとすでに彼女達が後にした漁船はもう点にしか見えなかった。オンドラは大きくあかんべーをするとそのまま船を浜辺にぶつけるように進めた。

「ちょっと待ってな……」 

ジーンズが濡れるのも躊躇せずにオンドラは浜辺の膝ほどの深さの水に飛び降りる。ネネが周りを見回すが、氷結が解けたばかりの海峡を見渡す丘には深い雪が残っているのが見える。生身の人間であればその冷たさから無事では済まないだろうと言う状況の中でオンドラは文句も言わずにそのままネネが濡れずに上陸できる地点まで船を引きずってくれる。

「優しいんですね……」 

「なあに、金のためさ」 

淡々とそれだけ言うとネネが船を下りたことを確認したオンドラはそのままゴムボートを引きずって浜辺の奥の岩陰へと歩いて行った。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 103

「今更どこに行くんだーい! 」 

「何を叫んでいるんですか? 」 

オンドラが舳先に立って叫ぶ姿を後ろからネネが窘める。二ヶ月にわたる氷結からようやく開放された北東和の海。その領海すれすれを貨物船が列を連ねるように外海へと向かう。多くは遼北からの脱出者を満載していることは容易に想像が付いた。

遼北、西モスレム両政府は民間のネットのクラッキングが復旧したと同時に国民に平静を求めたが、核による破滅を求める過激な民族主義者達のもたらした恐怖と混沌はとどまることを知らなかった。オンドラもネネも、遼北の非凍結港に遼北脱出を願うそれなりに金を持った人民の群れの噂は耳にしていた。

「そうまでして生きていて価値のある世の中かねえ……」 

「死とは理解できない価値観を受け入れること。それだけの覚悟がある人は数えるほどしかいない……この現象は極めて健康な出来事だと思いますよ」 

淡々とオンドラの愚痴に答えるネネ。背後で二人が乗っている漁船の船長がわざとらしい咳を立てる。昔から彼等東和の漁民達は遼北の人々を見下して生きてきた。それは成金である遼北の人々が生きようとすることへの当てつけ以外の何者でもない。ネネは静かに目線を近くの島へと向けた。

「しかし……島には船は近づかないんですね」 

「あの外道が近づいてみろ……きっと国防軍が皆殺しにしてくれるよ」 

満足げに頷く船長。予想通りの回答にただ頷きながらネネはオンドラを見上げた。オンドラは相変わらずふきゲンだった。船長に支払った報酬は明らかに法外だった。最近は遼北の漁業巡視艇も厳しく東和の漁船の密漁の取り締まりを行っていることは二人とも知っていた。東和北部地域の漁獲量のほぼ三割は遼北の排他的経済海域での密漁に支えられていた。彼等にとって東和に生まれたことは自負であり、それ以外の自信は何もない。ネネもオンドラも船長の根拠の無い遼北の民への見下すような視線と金銭への見るに堪えないへりくだった姿勢はただ不快感だけを残していた。

「六時間……本当にそれだけでいいのかい? 」 

今度は金銭に土下座しかねない嫌らしい笑みが船長に浮かぶ。ネネは答えるのも面倒だというように頷く。

「良いんだよ……そちらの姉ちゃんが問題なんだろ? そいつを置いて行けば何時間だって……」 

「そりゃあそうだ。そのままアタシは北東和の刑務所につながれて身ぐるみ剥がれるんだからな! 」 

オンドラは思わずジャケットの下に手を伸ばしていた。そこには拳銃があることくらいこう言う危ない橋を金目当てに渡ってきた経験の多い船長は苦笑いを浮かべながらそのままキャビンに消える。

「全く反吐が出る……先進国って看板を掲げた土地に生まれただけで果てしなく無能な連中は……人間の資格をすぐにでも剥奪した方がいいんじゃねえか? 」 

「その意見には同感だけど……金は力よ。彼等も落ちるところまで落ちれば自分の価値を認識できる。それまでは誰も彼等に彼等自身の価値を教えることは出来ない……ある意味それは彼等にとって不幸なことなんじゃないかしら? 」 

見た目はどう見ても小学生程度のネネの言葉にオンドラは静かに相づちを打つ。オンドラが意味を理解しているかしていないか。そんなことはどうでも良いというようにネネは視界の中で拡大していく一つの殺風景な島をじっくりと眺めていた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 102

「それと……おもしろ現象が起きてましてね」 

岡田は再びキーボードを叩き始めた。切り替わった画面には味も素っ気もないグラフが表示される。

「まあ同じく検索回数のデータなんですが……」 

「結論から先にちょうだい」 

「いつもながら厳しいですね。遼南系のシンジケート『南聖会』の警察のサーバへの違法アクセスの回数ですが……見ての通り、この一週間急激に伸びている……」 

岡田の指の先。確かにそれまで平坦だったグラフが跳ね上がっていた。

「最近は抗争の話も聞かないし……幹部の逮捕の噂もない……」 

「そう、増える理由がどこにも見当たらない……まあ偶然にしてはおかしな話ですが……まあ気にしておいて困る話じゃ無いでしょ」 

「主にどこに? 」 

目をグラフから離さずに呟く安城に予想していたと言うように岡田はキーボードを叩く。死体、義体、放置、遺棄、紛失などの文字が並ぶ。

「狙いは絞れないんですが……死体を、それもサイボーグ絡みの死体を捜しているような雰囲気はありますね……時期とタイミング、そして狙いがサイボーグ。無関係にしちゃあできすぎている」 

「でもシンジケートが動くほど大物なの? そのオンドラは」 

「まあ凄腕ってことで評判らしいですが……租界でも屈指のシンジケートが動くには小物と言うのが正直なところでしてね……」 

安城は岡田の言葉に考え事をまとめようというように親指の爪を噛む。

「東都の街中なら胡州四大公の筆頭の次期当主の看板は役に立つ……塀の向こう側ではその地位が生み出す経済的利益が注目を集める……最近の西園寺家の金の動きも掴んでるんじゃ無いの? 」 

鋭い目つきが岡田に向かう。岡田は苦笑いを浮かべながら再びキーボードを叩いた。天文学的な総資産額が並ぶ帳面、そこに一財産と呼べる金額が一日で引き出されている事実が表示されていた。

「まあ確かにたいした金額だ……それでも西園寺家にしたらはした金。出資者が西園寺家と知ればシンジケートが動く額にはまるで足りない金額……」 

「それでもお人好しのお嬢様が仲間を助けようと引き出す額にしちゃあ十分よ。つまり彼女はあなたより先に真実にたどり着くと言う訳ね」 

安城の言葉に頭を掻きながら岡田は頷いた。

「癪な話ですが現実はそうなりそうですね……オンドラは東都では手配中の身ですから、代理の人物が近々あのお嬢さん方と接触をするはずですよ。出来れば……」 

今にも揉み手をしそうなにやけた表情を浮かべた岡田に呆れたような笑みを浮かべて安城は立ち上がった。

「まあ報告書に必要な分だけの情報が入れば連絡するわ」 

それだけ言い残すとそのまま安城は岡田に背を向けて部屋を出ようとした。

「助かります」 

岡田はそれだけ言うと再びモニターに向き直った。入り口の大仰なドアが開こうとする瞬間、岡田は思い出したように首だけ入り口に向ける。

「ああ、それと……国防軍(うち)のシステムの攻性防壁の設計者の名前なんですが……偶然にも『吉田俊平』と言うそうですよ……まあ200年も前の話ですが……」 

「いくら義体化していても脳幹の細胞が死滅するほど昔の話ね。まあ参考程度に聞いておくわ」 

それだけ言い残すと安城は自動ドアの向こうへと消えた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 101

「相手は塀の向こう側の住人ですよ……書面の上での身元なんてわかったって意味が無いでしょ」 

そうため息をついた後、岡田はキーボードを軽く叩く。画面の下に文章が表示される。

「周りじゃあ『オンドラ』と呼ばれているらしいですが……まあ偽名でしょ。南アフリカ製の特注義体を使用しているって触れ込みだが……」 

「南アフリカ? ギルバート・オーディナンス社は倒産したはずでしょ」 

「そう、どれも噂の範疇でしかない。まあ租界のアウトローにはらしい経歴ですよ。主に銃器を使った荒事を得意とする奴で人柄に関するデータにはどれも『金にがめつい』とある。まあ金の使い道は心得ているみたいですねえ……逮捕歴が無いですから」 

「租界じゃ金こそが正義だもの」 

苦笑いの安城を見てそのまま岡田は端末の画面に振り返る。そしてそのままキーボードを連打し始めた。

「ただ、気になったのは金に汚い女ガンマンがなぜ莫大な成功報酬を取る一流の傭兵に興味を持ったのか……情報を依頼する相手にしちゃあ俺が見たこいつの情報収集能力は中学生並みってところだ」 

「世間知らずの金持ち? そんな知り合いがいるような人物かしら? 」 

首をひねる安城を予想したように岡田がキーボードを叩く手を止めた。

「確か……保安隊に胡州西園寺家のご息女がいましたよね」 

「ああ、西園寺大尉ね。……! 」 

何気ない岡田の言葉に安城の表情が急変する。その様子を読んでいたかのように岡田が満面の笑みで振り返った。

「あのお嬢様は四年前まで陸軍工作局勤務だったはず……胡州の非正規部隊の作戦行動のデータを引き出すのはかなりのリスクがありますが……」 

「あの娘……確か東都戦争に参加したって公言してたわよ」 

「これでつながった訳だ! 」 

安城の言葉を聞いて岡田は大きく伸びをすると最後の仕上げというようにキーボードに手を伸ばす。そこには再び一般向けの大手検索サイトが目に飛び込んできた。

「こういうところはさっきの物騒なサイトと違って危ない情報には検閲が入って載らないようになっているわけですが……」 

岡田は素早く『吉田俊平』と打ちさらに除外条件を入力して選択する。数件の情報が画面に表示される。

「この選ばれたデータ。すべてがあのオンドラが覗いたサイトだって言うんだから……」 

「吉田俊平はトラップを外して回っているの? 」 

「おそらくは……良い仲間が自分を捜しているからそれに協力しているんでしょうね……奇特な奴だ」 

岡田は弱々しい笑みを浮かべて再び端末の画面に目を向けた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 100

今度は画面いっぱいに吉田俊平に関する記事が並ぶ。

「国防軍のサーバーから直接入れるデータはすべてトラップが仕掛けられているのに……見ての通りですよ」 

「まあうちの仕事は受けたくないってことでしょ。嫌われてるのよ」 

あっさりと言う安城に岡田は苦笑いを浮かべる。

「で、それを確認するためだけに……ってなに? その顔」 

「いやあ、変わらないところもあるものだなと……」 

「余計なお世話よ。続けてちょうだい」 

すねたように呟く安城を薄ら笑いで眺めながら岡田はキーボードを操作し続ける。

「まあそれを確認してそれだけで終わるってのも癪だったんで、三日ぐらいこの画面とにらめっこをしていましてね……そしたらあることに気づいたんです」 

画面が切り替わる。一番上の『バリスト内戦における吉田俊平旗下の部隊の無差別殺戮行為に関する調書』と言う文字が消え、『タイタン総督暗殺犯を予想する』と言う記事に切り替わる。

「ずいぶんと物騒な話が並ぶのね……伝説の傭兵らしいというかなんというか……。でも今は同盟司法局の仕事で相当拘束されている人物についてそんなに調べて回る顧客が租界にそんなにいるのかしら? 」 

「そうなんですよ……アングラの検索サイト。元々アクセス数なんてたかが知れているはず。その順位が数日でころころと変わる……そこでアクセスしている物好きを捜したわけです」 

「全くご苦労なことね」 

再び画面が切り替わり、文字列が並んだ。住所。しかもすべて同じ『東和共和国東都港南区港南2-12-6』と言う文字列に変わる。

「同一人物が……でもおかしくない? 港南は現在は再開発ブロックのはずだから人なんて……ダミーね」 

安城の笑みに岡田は満足そうに頷くとそのまま住所をクリックした。すぐに画面が切り替わり、エラーが表示される。

「そう、ダミー。まあ租界の中の連中が正直に自分の身元を明かすわけがない……でもまあそこは俺にも維持がありますから……この住所でいくつか知り合いに問い合わせをしたところ……出て来たのはこの女」 

画面に映し出されるピンクのサングラスのにやけた女の顔。そしてその隣には銃を構えて走る長い髪の女の写真が映し出された。

「物騒な写真ね……」 

「六年前……港銀行西口支店襲撃事件の実行犯の写真ですよ……フィルターをかけましたが同じ人物と出ました」 

「六年前……東都戦争の激しかった頃ね……で、身元は? 」 

安城の言葉に岡田は力なく肩を落として上目遣いに安城を眺めた。

FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 99

「隊長! 」 

「……これは……効くわね」 

倒れていたのは一瞬で、安城はゆっくりと頭を起こすと穏やかに笑いながら椅子に座り直した。

「驚かせないでくださいよ……実際これで公安のハッカーが四人廃人になったんですから」 

「それほどヤワじゃ無いわよ。一応、その流れから予想して防壁を張っといたから……でも個人的なサイトにまでこの警備網。ほとんど狂気の沙汰じゃないの」 

「まあ俺も引っかかりかけましたから……油断も隙も無いとんでもない野郎ってことだけはこれで分かりましてね。元々傭兵なんて違法な職業に就いている奴だ。まともな神経じゃないのは予想してましたが」 

静かに岡田がキーボードを軽く操作すると部屋中のシステムが回復する。そしてそのまままじめに座り直した岡田は慣れた手つきでキーボードを叩き続けた。

「でも傭兵と言えば腕を売る仕事でしょ? 嵯峨さんが目を付けてからだって彼はいくつか仕事は請け負ってたはずよ」 

「そうなんですよ……日の当たる人間には見えなくても日陰の人間には見える独特の気配というか……空気というか……存在感。俺もこの仕事でそう言う危ない連中には出くわしてきたが大体がとんでもない自己顕示欲の塊でその癖妙に用心深いところがある。なら……」 

今度は安城の隣には極彩色縁取りの画面が映し出された。映る画像は裸の女が男達に囲まれてもだえる姿、安城は表情を変えずに振り返った岡田に目を向ける。

「アングラサイト経由……でもそれこそ公安のお手の物じゃないの。こっちで調べが付くならあなたのところに話は来なかったんじゃないの? 」 

「俺も最初はそう思ったんですが……念のためってところでね。こっちの世界で吉田の痕跡をたぐったところで何もつかめないのは分かってはいたんですが……何事も試してみるもんですよ」 

そう謎をかけると岡田は再びキーボードに向かい片隅の黒い四角をクリックした。安城が予想したとおりその筋の人間だけが入れるようなパスワードを要求する胸ばかりが強調された女のイメージが表示される。岡田は何も言わずにパスワードを入力し、画面を切り替える。

「ここから入ると租界のシステムに侵入できるっていうメリットがありましてね」 

「租界? それは穏やかじゃないわね。でもそれこそ警察関係者なら誰でも見ているんじゃないの? 」 

「そう、警察関係者は誰もが見ている。そして警察関係者を監視する租界の連中もよく出入りするシステムというわけですよ……」 

岡田の言葉の意味が分からずに安城はただ切り替わっていく画面を眺めていた。そして十二回目のセキュリティーを突破した辺りで岡田は画面を固定した。

黒い背景にただ検索用の窓があるだけの質素な画面。

「ずいぶん変わったところに出たわね」 

興味深そうに安城が身を乗り出すのを見ると岡田は静かに『吉田俊平』と入力してエンターキーを押した。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 98

「駄目です! 本当に困ります! 」 

女子職員のすがりつくのを無視して安城秀美はかつての職場である東和国防軍保安部の部室を横切るように歩き続けた。周りで呆然と見守るのはかつての彼女の部下達。安城の強情さを知っている屈強な戦闘用のサイボーグ達は安城が同盟司法局に出向してから総務担当として配属になった小柄な女子職員がいくら騒いだところで安城を止められないことは分かっていたので黙ってその様子を眺めていた。

「昔の部下に挨拶するのがそんなに困ることなのかしら? 」 

一枚の明らかに他の扉とは違う防弾措置の施された頑丈な扉の前までたどり着いた安城の一言にただ泣きそうな顔で女子職員は頭を下げる。

「大丈夫よ。私は岡田捜査官のお招きでここに居るんだから……嘘だと思うなら……ほら……」 

安城の言葉と共に重そうな黒い扉が触れることもなく開いた。女子職員はただあっけにとられて中に入っていく安城を見送るばかりだった。

「来るとは思いましたが……新人の事務官を虐めて楽しいですか? 」 

薄暗い室内。十畳ほどの部屋にはモニターと計器を接続するジャック、そしてサイボーグが直接ネットに接続するための装置が並んでいる。その中央には中背の禿頭の中年男が笑いながら椅子に腰掛けて慣れた調子で歩いてくる安城を眺めていた。

「ちょっとした社会勉強になったんじゃないの? 世の中いろんな人がいるんだから。それより……その様子だと何もつかめていないみたいね……上から言われてるんでしょ、吉田俊平に関するデータを揃えろって」 

小憎たらしい笑み。かつて自分の上司として働いていたときはあまり見ることの無かった人間的な笑みに岡田は自然と苦笑いを浮かべて頭を掻いた。

「まあ分かったことと言えば……吉田って男が相当東和国防軍を嫌っているってことくらいですよ。公安には顔を出しましたか? 」 

「いいえ……その様子だと公安は国防軍(うち)のサーバを使って吉田の身元を洗おうとしたわね……」 

安城の表情が厳しくなるのを見ると岡田はそのまま彼女に背を向けて自分用の端末のキーボードに手を伸ばした。目の前の画面と安城の手元の小さなモニターに大手のネット検索会社のサイトが表示される。

「こうして世の堅気の人々のサイトで吉田俊平と検索をかけると……当然ながらまあ会社の社長やら大学教授やらの名前が表示されることになりますよねえ。当然、あの男も東和で住民登録をして仕事をしているわけですから、何件かあの男のデータも検索に引っかかる……」 

岡田がキーボードを操作するとファンシーな壁紙のホームページが表示され、安城も見慣れたナンバルゲニア・シャムラード中尉の間抜け面とその隣で渋い表情を浮かべる吉田の写真が映し出された。

「だがちょっと深く探ろうとすると……」 

そう言いながら岡田がキーボードを数回叩いた瞬間だった。室内の電源が完全に落ちた。そして同時に安城の上半身が糸が切れたマリオネットのように床に転がった。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 97

『口では他人事を気取るが……』 

「本心なんだけど」 

『あなたが本心を口にする? その方が不自然だ』 

吉田の言葉に嵯峨は満足げに頷くともみ消したタバコを取り上げる。そして丁寧に先を元に戻してライターで火を付けた。

「それじゃあ俺が我等が騎士殿に期待していることもお見通しって訳だ」 

『クバルカ中佐なら上手くやりますよ』 

あわせたような言葉に嵯峨はがっくりと肩を落とす。

「ああ、アイツの期待は今回は07式だからねえ……ホーン・オブ・ルージュの出撃はねえよ」 

『え? 』 

人工音のあげた突然の驚きの声に嵯峨は満足げに頷く。

「我等が騎士殿とはすなわち遼南青銅騎士団団長、ナンバルゲニア・シャムラード中尉のことだ。当然副団長も協力してくれますよね? 」 

当然のように笑みを浮かべる嵯峨。人工音は押し黙り沈黙が続く。

『あなたは……菱川と敵対しますか? 協力関係を築きますか? 』 

主導権を握られまいと苦渋の決断を迫るように発せられる人工音。ただ苦々しげに嵯峨は臭い煙を肺に流し込む。

「それがお前さんの協力条件か……俺の答えはどっちとも言えないって奴だが……敵対できるほど俺の足下は盤石じゃねえし、無条件で協力するほどお人好しでも無い……そんな選択無意味だな」 

あっさりと質問をかわされて再び吉田の言葉は止まった。嵯峨はただ人工音が響くのを待ちながらゆっくりとタバコをふかす。

『俺は……シャムに従いますよ……それが……』 

「おっと! 皆まで言うなよ。俺は野暮天にはなりたくねえから」 

嵯峨はそれだけ言うと静かに端末の電源を落とした。

「これでこちらのカードは揃った……あとは俺にツキがあるかどうかだが……」 

ちらりと部屋の脇を見る。並んでいる仏像、その一つ帝釈天の涼やかな目に嵯峨の瞳が引きつけられた。

「四日後は塀の中か……片付け……しようかねえ」 

気が進まないというように眉をぴくりとふるわせた後、嵯峨は隊長の椅子から重い腰を持ち上げることになった。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 96

『のぞき見……確かにそうかも知れませんね』 

静かに響く人工的な声。嵯峨はその相手が分かり切っているというようにただにやけたまま画面を見つめていた。

「まあ……仕事はちゃんとしてくれているからさ……ただ俺の迷惑になりそうなことなら事前に言ってくれりゃいいのにねえ。そんなに信用おけないかね」 

『信用? あなたが信用に足る人物かどうかはご自分が一番よく分かっているんじゃないですか? 』 

「違いないなあ……」 

力なく笑う嵯峨。通信はつながっているのに画面は映らない端末にデータの着信を告げる音声が響く。

『俺が指名手配中に集めたデータです……お役に立てば……』 

「菱川の御大将の正体ともくろみに関するデータと俺達が四日後に出かける演習先に浮いているあの物体に関するデータか? じゃあいらねえなあ」 

嵯峨の意外な反応に音声の主、吉田俊平は沈黙しなければならなくなった。

「あれだろ? 宇宙に浮いている1.5kmのあの巨大な物体。そしてお前さんが手配されるきっかけとなったインパルス砲の設計図……つながった訳か……。そして菱川の旦那は俺達がその破壊に成功しようがしまいが丸儲けをする仕組み作りを完了している……要はその裏付けと金のやりとりの通信記録ってところだろ? どうせ証拠じゃ使えねえよ。見たって自分がふがいなく感じるだけだ」 

『察しが良いですね。俺が見込んだ皇帝陛下だ』 

「察しが良いのは得じゃ無いよ……しなくても良い心配をするばかりだ。今回だって何も知らずに移動砲台とこんにちはすればただパイロットとして暴れりゃいいんだから。おかげで今回は俺は来ると分かっている公安連中の接待なんて言う役になりそうだ」 

卑屈な笑みを浮かべて机の上の埃を払う。司法機関の実力部隊の部隊長の隊長の机には似合わない積もった鉄粉がばらばらと部屋のタイルの上に落ちる音が響いた。そのまましばらくの沈黙が暗い部屋の中に続く。そして再び人工的な音声が始まる。

『そうなると……あの物体の破壊は難しくなりますね。神前じゃあ最悪の事態を防ぐので精一杯でしょう』 

「まあな。東和宇宙軍じゃもうすでにあれは無かったことにするつもりらしいが……俺が作った訳じゃないし、壊してくれと頼まれた訳じゃ無いからな。あれの今の持ち主のアドルフ・ヒトラーファンクラブの連中の目的は阻止するがそこから先はテメエで処分しろって言うのが俺の立場だ」 

『でもそうなると……インパルス砲搭載艦を彼等……ルドルフ・カーンのシンパですが、彼等が回収することになりますよ? 』 

さすがに投げやりな上司に呆れたというように呟く人工音に嵯峨は満面の笑みを浮かべる。

「それこそ『そいつは俺の仕事じゃねえ』ってところだな……ああ、そう言えばあの砲台。連中は『フェンリル』とか呼んでるらしいぜ……北欧の神の体を半分食いちぎったでかい狼。インパルス砲の想定される最低出力で衛星軌道上から地球を撃つとスカンジナビア半島が半分消し飛ぶらしいからねえ……言い得て妙だ」 

『ただ……彼等が狙うのは地球ではなく……』 

人工音の遮る声に嵯峨は頬杖をつきながら頷く。

「そんなのは馬鹿でも分かる。狙いは遼北と西モスレムの国境地帯。両者の核は現在は臨戦態勢を解除したばかりだ。突然の破壊が国境で起これば間違いなく地殻の奥の鉛のシェルターの中のミサイル基地からは佃煮にするほどの厄災があふれ出るわけだ……迷惑極まりない話だねえ……」 

のんきに呟く嵯峨の言葉に人工音は再び沈黙した。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 95

遼南中興の祖ラスバ暗殺を仕掛けるほどの野心家で知られた重基だが、その後の国内情勢がさらなる拡大戦争を欲求し始めた段階で政界を去り、その潮流に乗って民衆を煽り立てる新進政治家達への苦言を呟く日々を綴っていた。しかしコロニー国家として成立し、コロニー建設者である領邦領主に絶大な権限が与えられる胡州において、摂州・泉州二州を領する四大公家筆頭の当主の嫌みは常に公的な側面を持つものだった。

日々、自称憂国の士が懐に短刀を携えて来訪しては警備の警官に逮捕される日々。嵯峨の兄で次期当主として外務官僚をしていた義基も孤立主義に走るゲルパルトと共に反地球同盟を結成した政府を皮肉る父の発言をきっかけとして出勤停止の処分を受けて謹慎の身の上にあった。そんな中、当時は西園寺新三郎と名乗っていた嵯峨は何も知らずに意気揚々と新妻を連れて東都へと旅だった。

東都での彼の任務は東和の胡州・ゲルパルト陣営への引き込みの可能性の調査というものだった。絶対中立主義の東和にそんな可能性が無い事は分かり切っている無駄な仕事。彼は大使館に出勤するのはそこそこに趣味の剣術や書画骨董の蒐集に明け暮れ、エリーゼもまた自由で闊達な東和の雰囲気を楽しんでいた。

やがて双子の娘、茜と楓が生まれ、西園寺家預かりとなっていた絶家となった四大公家の一つ嵯峨家を再興して惟基と名乗り変えた頃、時代は大きく動き始めた。

胡州陣営はさらに嵯峨の仇敵とも言える父、バスバ帝を説得して遼南を自陣営に加えるとそのまま地球諸国に戦線を布告、第二次遼州大戦が始まる。東和の中立を変えられなかった責。元から不可能だったとはいえ、陸軍省本庁の椅子は完全に遠いものとなるには十分な出来事だった。開戦記念とも言える昇進で外務中尉から憲兵大尉に配置換えをされた嵯峨はそのまま自国の治安を維持することもままならない遼南へと転属になった。

エリーゼと娘二人はそのまま東都から民間機で胡州、帝都の四条畷港へと帰路を取った。地球、特に遼州での多くの利権を握るアメリカとの対立を避けようと東和は不要不急の胡州、ゲルパルト、遼南の軍人軍属とその家族の帰国を勧告していたので混雑する中、被官も連れずに三人は雑踏の中の四条畷港のターミナルを徘徊していた。そこに現われた片足義足の老人。西園寺重基の姿を見て手を振ったエリーゼの隣にあった鉢植えのゴムの木が遠隔操作の爆弾で爆発した。

とっさに娘をかばったエリーゼは全身に爆弾の破片を受け、ほぼ即死という有様だった。重基はただ額にかすり傷を負った程度だったが、次男義基の娘である要が全身の九割を失うテロで右足を失い、今度は三男の嫁を自分を狙ったテロで失ったショックでそのまま死の床につくことになった。

「なあに……俺だって遼南の公安憲兵時代はレジスタンスの幹部をあぶり出すのに同じ手を使ったからな……意志が強いと自負している連中はいくら本人を追い詰めても無駄なもんだよ。そういうときは周りから攻める……お前さんの性格は俺は熟知しているつもりだからね」 

『恐縮です』 

照れ笑いを浮かべるシンに嵯峨はただ乾いた笑みを浮かべていた。

『それじゃあ無駄話もなんですから……それと吉田少佐に世話になったとお伝えください』 

「俺も言いたいんだけどさ……今回の首脳説得の段階での民間ネットワークのダウンはタイミングがベストだったからな……と言っても本人が追われる身じゃあ礼も言えないか」 

とぼけたような嵯峨の言葉に軽く敬礼するとシンはそのままいつものように唐突に通信を切った。

「さてと……まあ俺も近いうちに公安に出頭するか……あちらが出向いてくるか……」

独り言を言いながらそのまま隊長の椅子に身を投げる嵯峨。上着代わりに羽織っているどてらの中のネクタイを持ち上げる。もうすでに二週間アパートには帰っていない。

「あと四日か……汚れてるなあ……」 

そう言いながら静かにネクタイをどてらの中に滑り込ませると静かに目をつぶった。

「いい加減……のぞき見は止めてくれないかな」 

人の気配のない隊長室に響く珍しく張りのある嵯峨の声。それに反応するかのように先ほど消えた隊長用の通信端末のモニターに電源が入った。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 94

「つう訳だから。シャムのことは心配入らないよ……たぶん」 

『いざというときには正直になるんですね』 

モニターの中の精悍なひげ面に笑みが浮かぶ。遼北と西モスレムの国境ライン上。現在は同盟機構軍との名称の東和、胡州、大麗、ゲルパルトの各軍が増派されて両軍の戦力引き離し作戦に従事している最中だった。

そんな中で暇を見つけて前の所属の所属長である嵯峨に連絡を入れるというまめなところがこのアブドゥール・シャー・シン大尉の良さでもあり、その連絡の入った時間が深夜の十時を回っているというところが少し抜けたところでもあった。

「なあに、世の中大丈夫なんて言えることはそう無いものさ。俺だって明日はどうなるか……」 

『身から出た錆だと言ってみせるんですか』 

「まったく昔から口の減らない奴だ。まあそんなところだが……良いのかい? それなりに忙しいんだろ? 」 

嵯峨の言葉に思わず背後を振り向くシン。軽く誰かに手を振るとすぐにモニターに目を向ける。

『まあ私の仕事は前線維持ですから……これからは施設運営や兵站部門の皆さんのお仕事ですよ。これからは撤収準備と今回の事件でキャンセルになった訓練メニューの組み直しが当面の仕事です』 

「いい話だな。俺等みたいな物騒な連中は訓練のことだけ考えてられれば世の中はうまくいっているってことだ。それが一番だ」 

そう言うと嵯峨は慣れた手つきでタバコを取り出し素早く安いライターで火を付ける。隊長室に漂っている煙の中にさらに濃い煙が流れ込んで渦を巻く様を呆然と眺める。

『ああ、それと……ご配慮いただきありがとうございました』 

これまでの自信に満ちた鋭いシンの目つきが穏やかなものに変わるのを横目で見ながら嵯峨はにやりと笑った。

「何が? 」 

『一族の身柄の安全を国王に直訴していただいたそうで……それまではデモ隊が十重二十重に取り巻いて投石だの火炎瓶を投げるだの騒然としていたようなんですが……』 

「ああ、あれか? 」 

明らかにシンがいつかはその話を持ち出すのを分かっていると言うような表情で嵯峨は付けたばかりのタバコの火をもみ消した。

「俺はそう言うのが許せない質でさ……親類に国家の敵が居るとか言って騒ぎ出す奴……お前は何様なんだよって突っ込みを入れたくなるんだよ。まあ俺の場合は一太刀袈裟懸けにして終わりって言う方法が好きなんだけどね」 

『奥様のことですね……』 

シンの顔が安堵から同情へと色を変える。その表情を見るのがあまりにつらいというように嵯峨は隊長の椅子を回して画面に背を向けた。

嵯峨の妻エリーゼはゲルパルト貴族の息女として当時西園寺家の部屋住みの三男坊として陸軍大学の学生をしていた嵯峨の元へと嫁いできた。予科の同窓である赤松忠満や安東貞盛、そして当時は海軍兵学校の学生にして歌人として知られていた斎藤一学と言った悪友達と遊び回る自分がどれほど妻に心配をかけたかは嵯峨は娘の顔を見ると時々思い出されることがあった。

陸軍大学を首席で出た嵯峨だが、本来なら陸軍省の本庁勤めからエリートコースを走るところだったが、彼の義父である西園寺重基の存在が彼の初の配属先を東和共和国大使館付き二等武官と言うドロップアウトしたコースへと導くことになった。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 93

そんな悲しすぎる過去。それでもシャムは笑顔を絶やすことなくいつも隊でグレゴリウスと一緒に元気に走り回っていた。忘れるのが人間の才能の一つならその才を遺憾なく生かしている人物。誠はシャムのことをそう思っていた。

しかし、目の前のシャムはそんな悲劇よりも何か大きな忘れ物を捜している。誠にはそんな風に思えた。たぶんそのことに気づくきっかけになったのが吉田の失踪なのだろう。

「今分からないのなら……こんなことしか私には言えないが、気にしない方が良い」 

言葉を選びながらのカウラのつぶやきにシャムは静かに頷く。その視線の先には東都の北に広がる山脈地帯が見えている。シャムが望むような針葉樹の森はその山脈の僅かに上部に広がるのみ。それ以外は落葉樹の森が寒々しく広がっているのが見えるだけだった。

「ああ、シャム。帰りは……」 

「うん、跳べるよ。レベッカも心配しなくて良いから」 

面倒見の良い言葉に少し涙目のレベッカが頷く。グレゴリウスは相変わらず心配そうに主人の落ちたままの肩を眺めていた。

「でもね……もう少しで思い出せそうなんだ。なんであの森にあたしが一人で居たか……それ以前にあたしが何者なのか……」 

「過去か。知っていい話なら知るのも悪くないな」 

「何よ、まるで知らない方が良いってことを要ちゃんが知っているみたいじゃないの」 

アイシャの冷やかすような言葉にタバコを咥えた要は下卑た笑みを浮かべた後、静かに煙を口から吐き出す。吐き出された煙はそのまま強い風に流され視界から消え去る。

「いい話じゃ無いと思うよ……でも一度は思い出したいんだ……なんて言えば良いのかな……喉に小骨がつかえたみたいな感じ……それともちょっと違うな」 

「無理に思い出す必要は無いだろ。四日後には演習に出るために新港に行かなければならないんだ。まずは予定が優先だ」 

カウラの冷淡な言葉にレベッカが少しばかりむっとしたようにエメラルドグリーンの瞳でシャムを見下ろすカウラを睨み付けた。カウラの表情はいつものように押し殺したというように感情の起伏の見えない顔をしている。

「そう言えば明日で謹慎も解けますよね。明日からは……」 

「あのー、誠ちゃん。明日はあたしが出張の準備のためにお休みを取っているんだけど……」 

シャムの一言に自分の間の悪さを実感する誠。冷ややかにそれを笑いながらタバコをもみ消す要。

「誠ちゃんらしいわね……じゃあ撤収しましょう」 

一言アイシャが言ったのを聞くと素早くカウラは元の獣道に足を向けた。

「ちゃんと帰れよ! 」 

革ジャンのポケットに手を突っ込んだままカウラに続いて走っていく要の言葉に、シャムは力ない笑みを浮かべた。そんなシャムの頬を悲しげな表情のグレゴリウスが優しく舐めているのが誠の目に映っていた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 92

「ショックならショックでいいじゃないか。心配なら私達に何か言えばいい……」 

緑色の髪を崖を吹き上げてくる風になびかせながらそっとカウラはその手をシャムの頬に寄せた。シャムは静かに俯く。ただ強い風だけが舞っていた。

「ショックというか……俊平が居なくなってからなんだか思い出しそうなことがあって……それでそれを思い出すとなんだか悪いことが起きそうで……」 

「鉄火場の思い出か……確かにあれは悪夢だな」 

うんざりした表情の要がタバコを咥えながら呟いた。静かにそのままジッポで火を付けようとするが強い風に煽られてなかなか火が付く様子がない。それでもいつもなら苛立って叫ぶ要も落ち着いた様子で静かに試行錯誤を繰り広げている。

「そんな最近の話じゃ無いんだ……俊平と会う前……それ以前に明華や隊長と出会う前……ううん。もっと前だよ、オトウやグンダリと出会う前……うわ! 頭がウニになる! 」 

頭を抱えて俯くシャム。カウラは何も出来ずにただシャムの隣で立ち尽くしている。

「ナンバルゲニアの名前を継ぐ前か……遼南第一王朝壊滅以前ねえ……それこそ吉田や叔父貴に聞くしかないな」 

ようやくタバコに火を付けることが出来た要のつぶやきに誠はただしばらく黙り込んで思いを巡らせていた。

ムジャンタ・カオラに始まった遼南王朝は廃帝ハドの乱行などの混乱はあったもののその血脈は三百年あまりにわたって延々と続くことになった。有力諸侯や藩鎮達が外戚としてのさばり、傀儡に過ぎない皇帝ばかりが続いたとはいえ、王朝が揺らぐことは彼等にも損害をもたらすことになり、また東和や胡州、遼北、西モスレムなどの近隣諸国も大国の崩壊に伴う難民の流出を恐れて形ばかりの王朝は長々と続くことになった。

そんな王朝に現われた寡婦帝ムジャンタ・ラスバ。兼州侯カグラーヌバが送り込んだ操り人形の二人の子持ちの女帝は諸侯達の思惑を超えて傾いた遼南を再建し始めていった。太祖カオラの作った遼南人の海外コネクションを再生し、細心かつ大胆な外交施策は遼州のお荷物と呼ばれた遼南を確かに再生させていった。

さらに彼女が帝位に就く前に古代遼州文明の研究者であったことが遼南の再建へと導く力となった。鉄器さえも封印した遼州文明がかつては遺伝子工学や素材加工技術、反物質エンジン搭載の戦闘兵器や宇宙戦艦を建造していたことは誠も教科書で習った程度には知っていた。その技術の研究者であるラスバは多くの先遼南文明の再生に取り組み、独自の技術をそこから得て海外に売りつけて王朝の財源として次第に朝廷の力はそれまでぶら下がってきた諸侯達を圧倒し始めていった。

ただしそのような独断的な政策が有力諸侯や軍部、他国に歓迎されるはずもなかった。母に暗愚と烙印を押されて東宮を廃されたムジャンタ・ムスガは次期皇帝と決められた息子のラスコーを追い落とすべく、野心家である近衛軍司令官ガルシア・ゴンザレス大佐と結託。彼等の動向に注視していた胡州宰相西園寺重基は彼等の協力を取り付けて東モスレムのイスラム教徒暴動鎮圧部隊の視察をしていたラスバ爆殺した。静養中の北兼御所にあったラスコーだが、近衛軍が央都を制圧したために静養中の北兼御所を動くことが出来ず、央都のムスガと北兼のラスコーという二人の皇帝が並立する事態へと発展した。

有能に過ぎる皇帝を失った遼南の没落はあっけないものだった。東海の花山院、南都のブルゴーニュなどの有力諸侯は胡州の工作を受けてあっさり央都側に寝返った。頼りの北天軍閥は遼州北部の利権を狙った遼北の侵攻によりあっさりと崩壊。ラスバ崩御から四年後、北兼御所を捨ててカグラーヌバ一族が守る兼南基地に籠城した遼南朝廷軍は央都軍の圧倒的な物量の前に全滅。ただラスコー一人は家臣の必死の抵抗で難を逃れて東和へと亡命を余儀なくされこれを持って遼南第一王朝は滅亡することになる。

そんな遼南王朝滅亡の際に、シャムは記憶を失って森をさまよっていた彼女を拾った義父ナンバルゲニア・アサドは帝国騎士団に所属していた経歴があったため、彼女の村は央都軍の襲撃を受け、彼女以外は老若男女問わず皆殺しにされたと言う話を誠も耳にしていた。


FC2 Blog Ranking

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

ハシモト

Author:ハシモト
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。