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遼州戦記 保安隊日乗 時は流れるままに 179

 すでに射撃場には人だかりが出来ていた。訓練をサボっている首からアサルトライフルをぶら下げた警備部員が背伸びをしている。手持ち無沙汰の整備班員はつなぎの尻を掻きながら背伸びをしてレンジの中央を覗こうと飛び跳ねる。
「やってるな」 
 にんまりと笑って足を速める要。それを見かけたブリッジクルーの女性隊員が人だかりの中央に向かって声をかけたようだった。
 すぐに人垣が二つに割れて中央に立つ少女が誠達からも見えるようになった。
「あいつ……馬鹿だ」 
 立ち止まった要のつぶやき。こればかりは誠も同感だった。
 テンガロンハット、皮のジャンバー、色あせたジーンズ。そして腰には二挺拳銃を下げる為の派手な皮製のガンベルトが光っている。西部劇のヒロインと言うよりもアメリカの田舎町の祭りに引っ張り出された少年である。
「ふ!」 
 わざと帽子のつばを下げたかと思うとすばやく跳ね上げてシャムは誠達を見つめる。隣ではそんなシャムをうれしそうに写真に取っているリアナの姿も見える。
「お姉さん……」 
 さすがにあまりにも満面の笑みの上官の態度にはアイシャも複雑な表情にならざるを得なかった。
「風が冷たいねえ……そういえばダコタで強盗とやりあったときもこんな風が吹いていたっけ……」 
 そう言うとシャムは射撃場の椅子にひらりと舞うようにして腰掛ける。手にしているのはマリアの愛用の葉巻。タバコが吸えないシャムらしく、当然火はついていないし煙も出ない。
「何がしたいんだ?お前は?」 
「お嬢さん?何かお困りで?」 
 そう言うと胸に着けた保安官を示すバッジを誇らしげに見せ付けるシャム。お嬢さん呼ばわりされた要。タンクトップにジーンズと言う明らかに常人なら寒そうな姿だが、それ以上にシャムの雰囲気はおかしな具合だった。
「ああ、目の前におかしな格好の餓鬼がいるんで当惑しているな」 
「ふっ……おかしな格好?」 
「ああ、マカロニウェスタンに出てきそうなインチキ保安官スタイルの餓鬼」 
 そう言われてもシャムは葉巻を咥えたままにんまりと笑って立ち上がるだけだった。
「そう言えばネバダで……」 
 たわごとをまた繰り返そうとするシャムに飛び掛った要がそのままシャムの帽子を取り上げた。
「要ちゃん!返してよ!」 
 小柄なシャムがぴょんぴょん跳ねる。ようやく笑っていいという雰囲気になり、野次馬達も笑い始める。
「駄目よ!要ちゃん!返してあげなさい」 
 ピシリとそう言うリアナ。ようやくその場の雰囲気が日常のものに帰っていくのに安心して誠達は射撃レンジに足を踏み入れた。

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