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遼州戦記 保安隊日乗 魔物の街 6

 雑談していた警備班員が顔を覗かせる。いつものようにカウラはそれを見て窓を開いた。
「ああ、ベルガー大尉。駐車場はいま満員御礼ですよ」 
 丸刈りの警備部員が声をかけてくる。
「島田か?」 
 そのカウラの問いに隊員は頷く。
「ったくアイツ等なに考えてんだか……」 
 要の声を無視してカウラは車を走らせる。駐車場が見える前から野次馬の姿が見て取れた。
「おい、停めれるか?」 
 そう言って要が身を乗り出す。そのままゆっくりと近づくカウラの車に気づいてブリッジオペレータの女性隊員が脇によける。
 そうするとそこにはタイヤを外されてジャッキで持ち上げられた小型車が見えた。
「ちょっとそこに停めろ。降りるから」 
 要の言葉にカウラは車を停める。ニヤニヤしているアイシャが助手席から降り、誠も追い出される。そのまま見慣れない車に近づく要。
「おう、西園寺か。見ろ凄いだろ?」 
 取り付けようとする新品のサスペンションを手に得意満面のロナルド。だが要はそれを無視してエンジンをいじっているつなぎ姿の島田の後ろまで行き思い切り尻を蹴り上げた。
「痛て!」 
「バーカ!いちいち喚くな!痛いように蹴ってるんだよ!」 
 要の声に飛び跳ねるように振り向く島田。隣に立っていたサラとパーラも振り向いた。
「ここは職場だ。仕事をしろ仕事を!」 
「でもまだ始業時間じゃ……」 
 口答えをしようとするが要のタレ目の不気味な迫力に押されて島田は黙り込んだ。
「それに昨日の件で話があるそうだ」 
 車を奥に停めてきたカウラの言葉に島田は悟った。
「おい!お前等も壊さない程度によく構造を把握しておけ!後で細かい説明はするからな」 
 島田は周りで彼の作業を見ていた整備班員にそう言うとそのまま正門へと走り去る。サラとパーラもそれに続く。
「あらあら要ちゃんまじめなことを言うからびっくりしちゃったわ!」 
 手を合わせているリアナに照れたように頭を掻く要。
「その仕事を振ってくれる人が来たぞ」 
 カウラは白いセダンが散っていく野次馬達の間から白いセダンから降りている茜達の姿を見ていた。
「そうだな。どういう指示を出すか。実に見ものだ」 
 そう言うと要はそのまま茜達を無視してハンガーへと急ぐ。
「要ちゃん!おはよう!」 
 巨大な熊、グレゴリウス13世の背中に乗っている猫耳をつけた第一小隊二番機担当のナンバルゲニア・シャムラード中尉の言葉も完全に無視して要はそのまま歩き続けた。
「アイシャ。何かあったの?」 
「知らないわよ」
 心配そうなシャムの質問に困ったようなポーズをとるアイシャ。誠も要の気まぐれに気をつけようと心に誓いながらハンガーを目指して歩いた。
 誠がハンガーに足を踏み入れると、誠の専用アサルト・モジュール05式乙型の前で足を止めている要がいた。
「どうしたんですか?西園寺さん」 
「リアルに作ってたんだな、アイシャの奴」 
 誠の薄い灰色のステルス表面塗料の上に魔法少女やギャルゲーのキャラがたくさん描かれて、『痛ロボ』と言うことでミリタリー雑誌の紙面を飾った機体を見上げている。
「そうよ。すべてはこれをデザインした本人の資料を使ったんだから」 
 胸を張るアイシャとあまりの反響に照れている誠がそこにいた。
「ああ、そう言えば今日は明華の姐御は休暇だったな」 
 技術部員がちらほらとしか見られないことに気づいたカウラ。それを見てにんまりと笑うアイシャ。
「あれじゃない、式の衣装とか選んでるとか……」 
 前保安隊副長で実働部隊部隊長だった明石清海中佐と、技術部部長で事実上の保安隊の最高実力者と噂される許明華大佐の結婚はすでに翌年の6月と言うことが決まっていた。アイシャとカウラがちらちらと誠を見つめてくるのを無視して要が口を開いた。
「今からか?まだ11月だぜ。式は胡州と遼北。和式と中華って聞いてるけど……選ぶのにそんなにかかるのか?」 
 ぶっきらぼうにたずねる要に大きくため息をつくアイシャ。
「分かってないわね。私も姐御に見せてもらったけどカタログがこんなに厚いのが二つよ!」 
 アイシャが指を大きく広げるのを見て大げさだと言うように無視して更衣室のある二階へ上がる階段を上ろうとする要。だが、降りてきた技術部小火器管理責任者のキム・ジュンヒ少尉の姿を見て足を止めた。
「アタシのチャカ。上がったか?」 
「ああ、それの件を含めてお話があったんですが……そう言えば島田は?」 
 キムがそう言うと遅れてきたカウラがハンガーの入り口を指差した。そこにはなぜかランに頭を下げている島田とサラの姿があった。
「なんだ?アイツに小火器関連の担当のお前が話があると言ったら……決まってるか」 
 要の言葉に頷くキムはそのまま階段を降りてランのところへと走った。その姿と誠達を見つけてランが一階の奥にある技術部の部屋を指差す。
「銀の弾丸でも支給してくれるのかね」 
 そんな茶化すような要の言葉だったが誠は冗談には受け取れなかった。
 昨日、誠が手をかけた法術暴走で再生能力が制御できなくなり、化け物と化した法術師。その姿を見れば一般の武器で対応することが出来ないことは容易に想像ができた。
 キムは二言三言ランから話を聞くと誠達のところに走ってくる。
「とりあえず俺の部屋に集合だそうです」 
 そう言って再び技術部の部屋の並ぶ廊下へ駆け込むキム。それを見ながらカウラは目で誠についてくるように合図するとそのままキムの消えた小火器倉庫に足を向けた。
 キムについて火器管理室に入った誠に、職人じみた顔の初めて見る下士官達が目に入った。
「ちょっと待っててくださいよ、西園寺さん」 
 そう言って誠には何に使うのか分からない機械の間をすり抜けて姿を消すキム。
「リロードしてるのか?まあそうだろうな。神前のルガーだって弾はファクトリーロードじゃないって話しだし」 
 要はそう言うと誠の顔を見た。厚い眼鏡の小柄な女性下士官がそれぞれの使用している銃を並べる。
「えーと、じゃあクバルカ中佐」 
 そう言って中型拳銃を取り出す眼鏡の女性。ランが歩み出るとそこには銃と予備マガジンが二本。それに見慣れないハングル文字の書かれた箱に入れられた弾丸が置かれていた。
「こいつか……。マジで使えるのか?」 
 ぎりぎりカウンターに届く背のランが銃を手に取ると、慣れた手つきでスライドを引いて愛銃マカロフにマガジンを叩き込んでスライドを閉鎖する。
「一応、アメリカ陸軍の研究の資料から引いて作成したものですから大丈夫だと思いますよ」 
 おどおどと眼鏡の下士官が答える。
「マジで銀の弾丸かよ。狩るのは吸血鬼か?それとも狼男か?」 
 皮肉めいた言葉を吐く要。だが、女性下士官は相手にしないでランにジャケットの下にもつけれるようなショルダーホルスターを渡す。
「じゃあ、次は嵯峨茜警視正」 
 事務的な言葉に反応して茜が踏み出す。その目の前に小型のリボルバーを差し出す下士官。
「おい、リボルバーかよ。シャムじゃあるめえし」 
 そう言う要を一瞥すると茜も箱に入った特性の弾を手にする。
「ナンバルゲニア中尉とは違いますよ。M19の2.5インチ。スピードローダーは必要ですか?」
「お願いするわ」 
 茜にさらに丸い器具が渡される。茜はすぐに弾薬の蓋を開け、素早く357マグナム弾を手にした銃のシリンダーを開くと一発一発弾を込めていく。
「じゃあ、クラウゼ少佐」 
 待っていたかのようにアイシャが踏み出す。そしてごつい拳銃をカウンターの眼鏡の女性下士官から受け取る。
「H&K、USPの9ミリか。普通なんだな」 
「普通?そう言われるとしゃくに障るわね」 
 予備マガジンを見ると誠と同じ9mmパラベラム弾が装弾されている。
「ああ、神前曹長。この弾だともしかすると相性が悪いかもしれないですから、神前曹長のは別に用意しました」 
 まるで誠の心を読んでいたかのようにその下士官は言った。
「私はアイシャの弾と混ぜて使っても良いんだろ?」 
 カウラの言葉を聞きながら下士官は彼女の銃SIGザウエルP226と予備マガジンを取り出してカウンターに並べた。
「大丈夫だろ?どっちも作動には定評があるんだ。おう、アタシのは?」 
 せかすような要の言葉にうんざりした顔のキムが手にいつもの要の銃、XD40を持って現れる。
「おい、どこが……ってスライドがステンレス?そんなのあったのか?」 
 そう言ってキムから銃を受け取ると何度か手に握って感触を確かめる要。
「少し……いや、かなり感触が変わってるぞ」
「まあ法術対応のシステムを組み込んだんですよ。前から頼んでたじゃないですか!」 
「そうだった?」 
 要の回答に呆れるキム。法術師としてすでに名が広まっている母の西園寺康子。そのことを考えれば当然だと誠は思うが、一方でカウラは少しばかりさびしいような顔をしていた。部下の下士官がマガジンと弾を取り出したのを見ると言葉を吐こうとしたカウラの口が閉じる。
「40口径ね。いつも高いと思ってたけど、いくらぐらい9mmより高いわけ?」 
 自分の銃とホルスターがなじむのを狙って皮製のホルスターから銃を出したり入れたりしていたアイシャが先ほどの眼鏡の女性下士官に詰め寄る。
「このシルバーチップなら同じくらいだと思いますよ。ケースはどちらもリロード品ですし……プライマーの値段もたいしたこと無いですから。最近は遼州星系じゃあ銃関係の規制が緩くなっていますから。市場ではかなりだぶつき気味なんですよ。ああ……東和は関係ないですけどね」 
 そう言う相手を疑うような目で見た後、アイシャは何度も手にした銃にマガジンをいれずに構えの型をとる要を見つめた。
「すると、コイツで撃てばそれなりの法術効果が得られると言うことなんだな」 
 要の言葉におっかなびっくり頷くキム。それを見て手にした拳銃にマガジンを叩き込みスライドを引いて装弾する。
「じゃあ、島田」 
「なんで俺だけ呼び捨てなんだ?」 
 キムがにんまりと笑う。その顔を不審そうに見つめる島田。キムは島田にランのマカロフより小さい銃が渡された。
「確かにコンパクトな奴を頼んだけどさあ」 
 そう言って島田はまじまじと自分に渡された銃を見つめた。それはラーナの使っているシグザウエルP230に似ていたがどこと無く古風な雰囲気の拳銃だった。
「ああ、それはモーゼルHScだ。一応弾は380ACPだから護身用としてはぎりぎりのスペックだからな。どうせお前は前線部隊じゃないんだから」 
 キムの言葉が終わると再び彼の部下が弾薬とマガジンを取り出す。
「なるほどねえ。確かにこれなら持ち運びは便利そうだわ。やっぱり隊長の私物か?」 
 そうたずねる島田を無視してキムはブリッジクルーが使っている銃を取り出してサラを呼んだ。
「弾だけの交換ね」 
 サラはそれを受け取るとジャケットを脱いでショルダーホルスターをつける。
「それでは神前」 
 そう言って神前の前に特徴的なフォルムのパラベラムピストルが置かれる。
「いつも思うんだけどこれってルガーじゃないのか?」 
 島田の言葉に呆れたように無視して予備マガジンと弾のケースを渡すキム。
「神前。これは専用だからなお前の。他の銃のと混ぜるなよ……まあお前の銃の弾は他の人のでも撃てるけどお前の銃に関しては俺は保障しないからな」
 キムはそう念を押して誠に銃を手渡した。
「じゃあ全員得物はそろったわけだな」 
 ランの声に手を上げて茜とラーナを指差す要。
「ああ、その二人は以前から対法術師装備だ。それじゃあ各員準備して会議室に集合な」 
 そう言って部屋を後にしようとするラン。
「別に準備とか……」 
「神前。カウラが制服じゃまずいだろ?一応捜査なんだから。それに場所が場所だ」 
 確かに今のカウラは東和軍の勤務服である。
「大丈夫だ。ちゃんと平時の服も更衣室に用意してある」 
 そう言うとハンガーへ向かう誠達と別れて女子更衣室に消えていくカウラ。
「それじゃあ……って何かすることあるのか?ちび」 
 要の言葉に振り返ったランは明らかにあきれ果てたと言うような顔をしていた。
「一応端末の記録を覗くくらいの癖はついていても良いんじゃねーのか?」 
 そう言ってそのままとっととハンガーへ向かう。
「言い方を少し考えろっての。なあ」 
 要はそう誠に愚痴ってその後に続く。ハンガーはやはり重鎮である明華がいないと言うことで閑散としていた。
「じゃあ、俺はロナルドさんの車を……」 
「仕事中だろ?会議室に直行だ」 
 振り向いて叫んだランの言葉に肩を落とす島田。サラは微笑んで彼の肩を叩く。
「ふざけてないで行くぞ!」 
 ランに引っ張られるようにして皆はそのまま階段を上がる。ガラス張りの管理部の部屋の中では先月までのシンに代わり、管理部部長として赴任した文官の高梨渉参事官が菰田を立たせて説教をしていた。
「島田。なんならアタシがアイツと同じ目にあわせてやろうか?教導隊じゃあアタシも平気で二、三時間説教するなんてざらだったぞ」 
 ランの言葉に苦笑いを浮かべた島田はそのまま早足に実働部隊の待機室を通り過ぎて会議室に向かう。
「冗談の分からねー奴だな」 
 そう言いながらランを先頭に部屋に入るとなぜか全員の机にマグカップが置かれていることに誠が気づいた。誠は何気なく中を覗き込んでその中にうごめく白いものを見つめて口を押さえた。
「なんですかこれ……!」 
 誠が手にしたマグカップの底に三匹の大きな芋虫がのたうっていた。
「あ!みんなお土産だよ!」 
 カウラと要も自分の机に置かれたマグカップの中を覗き込む。
「マジかよ……」 
 そう言って得意げなシャムをにらむ要。カウラはそのまま引き返して着替えの為に廊下へ出て行った。
 しばらく時間が止まったようにカップの中を覗く。
「なんでこんなものがあるんだ?」 
 自分のカップから白くてやわらかい芋虫を取り出すと、要は一口でそれを食べてしまった。その姿に冷や汗をかく誠。
「ええとね、遼南の山岳レンジャーの隊員がこの前の訓示のお礼だって!」 
 元気良く答えるシャムを見て誠は再びマグカップの中を覗き込んだ。
「まあ見た目があれだが食えるぞ」 
 そう言うとランも芋虫を口に運ぶ。誠は恐る恐る再びカップを覗き込んだ。
「何の幼虫ですか?」 
 奥で珍しそうにカップを覗いていた楓は要の芋虫を食べる光景を見てこわごわ口に運んで一気に飲み下そうとする。だがそれが喉に詰まったのか、すぐに立ち上がると誠を押しのけて廊下へ飛び出した。その様子を見ていた部下の渡辺かなめもそれに続く。
「ああ、これはゾウムシの幼虫ですよ」 
 遼南出身と言うこともあり、第三小隊の三番機担当のアン・ナン・パク軍曹は芋虫をつまんで普通に口に運ぶ。次第に握っていた手に汗が出てくる誠。
「もしかしてこれがレンジャーの主食の虫ですか?」 
 ようやく誠もそれが何かを理解した。
 遼南中央部の密林地帯で一ヶ月間のサバイバル訓練を行う遼南レンジャー部隊。遼南で使える数少ない部隊と呼ばれる彼等と同じメニューの訓練。その厳しい生活を送ったことを示す遼南レンジャー章は兵達の憧れだった。そのサバイバル訓練では食料の自給は欠かせない課題となる。
「やっぱり食べなきゃ……駄目なんですよね」 
 すがるように声を絞り出すのが精一杯の誠。
「駄目だよ、誠ちゃん。大きくなれないぞ!」 
「ちっこい奴が何言ってんだか」 
 要の茶々に頬を膨らませるシャム。誠はそのほほえましい光景を見ることもできずにじっとマグカップの中でうごめく虫を見つめていた。
「まあ急ぐものじゃないさ。趣味の……おう、来てたのか」 
 ロナルドが第四小隊の隊員ジョージ・岡部中尉とフェデロ・マルケス中尉を連れて入ってきた。
「ああ、ロナルドさん達の分もあるから」 
 シャムの言葉に何か面白いものをもらえたのかと思って自分の席を覗いたフェデロだが、すぐに嫌悪感が煮詰まったような顔に変わる。
「ジャングルライスだ」 
 その言葉に岡部も顔を曇らせる。
「良いじゃないか、ジャングルの米。慣れれば恋しくなるものだぞ」 
 そう言うとロナルドは自分の机の上のマグカップからすぐに芋虫を取り出して口に運ぶ。そして景気良く噛み砕いてすぐに飲み込んでしまった。
「ナンバルゲニア中尉。やはり今は季節じゃないみたいだな」 
「そうだね。春先のゾウムシが一番おいしいんだよ。あれ?神前君。食べないのかな?」 
 ロナルドのそばから今度は自分のそばへ歩いてくるシャムに思わずうつむく誠。確かに子供にしか見えないシャムだが、歴戦の勇士であり、最強のレンジャー指揮官の異名をとる彼女である。断ることが出来ないことはわかっているので一番上の少し弱った芋虫にゆっくりと誠は手を伸ばした。
「いいです!食べますよ!」 
 誠はそう宣言して口に芋虫を放り込む。
 しばらくはざわざわと口の中をうごめく感覚で口をふさぐことが出来ない。無理やり口を閉じて押しつぶす。それでももぞもぞと動く感覚が口の中に広がる。
「大丈夫か?顔が青いぞ」 
 要の声も聞かずにひたすらかみ締めて、ようやくぐちゃぐちゃになったものを喉の奥に押し流した。
「なんだ……これか」 
 スタジャンに着替えたカウラが部屋を覗き込んだ。ニヤニヤ笑うシャム、要、ロナルド。苦い顔の岡部とフェデロ。そして明らかに違和感を感じるような絶望した顔の誠がいた。
「神前どうしたんだ!」 
 すぐに駆け寄るカウラだが、誠の手の中のマグカップを見て納得した。
「そう言うことか……」 
 カウラの頬が引きつっている。
「そう言うことだ。なに、意地悪じゃねえぞ。あくまで鍛えてやっただけなんだから」 
 カウラの言葉に要は浮かれた調子で最後の芋虫を口に入れて机の端末を開いた。
「まあアタシにはいじめとしか見えなかったけどな」 
 すでに確認作業を終えて椅子から降りるラン。そこに死に掛けたような表情の楓が帰ってきた。
「大丈夫か?嵯峨」 
 ランの言葉にただ呆然とした表情のまま頷く楓。その背中をさする渡辺。
「それじゃあ、会議室。いくぞー」 
「あれ?カウラちゃんは食べないの?」 
 シャムの言葉にカウラに視線が集まる。
「それはお前へのプレゼントだ」 
 シャムにそう言って素早く部屋を出て行くカウラ。
「逃げやがったな」 
 要はその有様を見ながらにんまりと笑って、まだ嗚咽を繰り返している誠の肩を叩いた。

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