スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

遼州戦記 保安隊日乗 時は流れるままに 28

「パーラの奴は本当に人が良いと言うかなんと言うか……」 
 要の苦笑いに誠も頷くより他になかった。深夜、もうすぐ日付が変わろうとしている。リアナ達運用艦『高雄』のブリッジクルーの女性隊員達は一人酒を飲めなかったパーラの運転するマイクロバスで誠の実家の道場を出て行った。
 見送る要とアイシャ、そして誠。カウラは今は道場の床を薫と一緒に掃除している。
「おい、神前。いいのか?明日だぞ」 
 要のタレ目が誠に向かう。満面の笑みに誠は酒を出来るだけ控えていた理由を思い出した。
「大丈夫よねえ。その為にあまり飲まなかったんだから」 
 そう言うアイシャに誠は自信を持って頷いた。さすがに冬の晴れた日。日が落ちてからはどんどん気温が下がる。暖房といえば煮えたぎる鍋が有った先ほどの宴は過ぎて、羽織るどてらに冷たい風がまとわり付く。
 三人はさっさと玄関に向かい、引き戸を開いてあがりこんだ。
「じゃあ、僕は作業があるんで」 
 そう言い残して誠は階段を駆け上がって自分の部屋に入った。こう言うとき突然出てきそうなシャムも吉田に引っ張られて宴が盛り上がったところで豊川の基地に連れて行かれた。邪魔するものも無く机の上にはカウラへのプレゼントのイラストが乗っていた。
「ふう」 
 ため息をついた後、そのまま机に向かう。実はカウラのドレス姿は細かい修正が残っているだけで、すでにほぼ完成していると言ってもいい状況だった。
 いつものポニーテールを解いたエメラルドグリーンの髪、その額の赤い石の輝くようなティアラ。胸のネックレスにも同じような赤い石が光る。まっ平らな胸が少し増量されているように見えるのはご愛嬌だと思わず笑みがこぼれる誠。
 しばらく誠はじっとその絵に見入っていた。表情はいつもの緊張したカウラのものではなく、少しばかりやわらかくアレンジしてみた。
 めったに見ることが出来ない安心したような笑顔。要なら『こんな顔か?こいつ』とか言われるかもしれない。そう思いながらとりあえず首飾りの輪郭などにペンを入れる作業を始める。
 師走だというのに静かな夜だった。下町の繁華街と住宅街が入り組んだ町には似つかわしくないほどの沈黙。誠はそんな中で静かに作業を続けていた。
 ふすまの外でごそごそと音がして振り返る。
「じゃあ、私達は寝るけどがんばってね」 
 ささやくようなアイシャ。少しはあの人も気を遣うのかと失礼なことを考えながら誠は細かい部分にペンを走らせる。
「喜んでくれればいいんだけど」 
 そう思いながら誠は休まずに一気に仕上げようとペンを持つ左手に集中した。

FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

コメント

Secret

プロフィール

ハシモト

Author:ハシモト
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。