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遼州戦記 播州愚連隊 10

 明石は頭を掻きながらどうにも彼を恐がっている直満が近づくのを見ていた。そしてその少女が両軍幼年学校の最上級生である襟章をつけているのが分かった。
「お嬢、幼年学校に通っとるのか?」 
 荷物を担ぎながら明石は直満を撫でようとするがそのまま直満は後ろに下がってしまう。
「嫌われたもんだなあ、明石」 
 そう言うと魚住がそのまま裏口に腰掛ける。
「今日は少し料理にもこだわりましたのよ。新三郎さんから鯛の良いものが入りましたから」
 嵯峨家当主嵯峨惟基がまだ西園寺家の部屋住みだったころの西園寺新三郎の名を聞いて明石はここが政治の中枢帝都であることを思い出した。そうしてみると回りの気配が変わる。庭に続く道には衛兵がライフルを抱えて立っており、外にも私服の警備員と思われる人物が立っていたことも思い出される。 
「それは結構ですね。明石!とっとと荷物を片付けるぞ!」 
 別所の言葉に直満と向き合っていた明石は気がついたように靴を脱いで玄関に上がる。女中が手ぬぐいを差し出すが、魚住は笑ってそれを返した。
「それじゃあ、明石さん。こちらですよ」 
 そう言って貴子は明石を見つめた。それに続く魚住と黒田。
「ああ、明石。俺は少し大将と用があるから」 
 別所がそのまま赤松と会うために庭沿いの縁側に向かう。貴子は建物の奥へと明石達をいざなう。
「それにしても使用人の数が少ないですね」 
 ポツリと明石がつぶやく。微笑んで振り向く貴子。
「そうですわね、お寺さんと違って雇える使用人の数も限度がありますから。それに最近は領邦からの収入も減っておりますから仕方ありませんわ」 
 貴子はそのまま大屋根の屋敷に向かう。そこは本来は使用人の寝起きした部屋のようなものだが、人の気配はまるで無かった。
「どこでも好きな部屋を使っていただいて結構です。ああ、奥の部屋は運転手の多田と庭師の田中が使っておりますからそれ以外ならどの部屋でも」 
 笑う貴子を見た明石は手前の一室のふすまを開けた。掃除は行き届いているが、もう何年も使った様子が感じられなかった。
「もしよろしければ畳を……」 
「いや、大丈夫なんちゃいますか?」 
 そのまま部屋に踏み込む明石。だが突然ずぶりと明石の右足を畳が飲み込んだ。
「あのなあ、人が住んでないと家は腐るんだぞ。貴子様、畳のほうお願いします」 
 苦笑いを浮かべながら魚住が貴子に頭を下げる。思わず噴出して笑いをこらえていた貴子も頷きながら困った顔の明石を見つめた。
「黒田。助けてやれよ」 
 魚住の言葉だが、体重がほとんど変わらない黒田が踏み込めば二重遭難になると思って首を振る。仕方なく明石は自力で踏み抜いた畳から抜け出し、そのまま貴子達が立っている廊下まで出来るだけ接地面積を増やすように四つんばいで歩み寄ってきた。
「ほんま……勘弁してえや」 
 畳の上で奇妙に貼っている禿頭の大男を見て付いてきていた直満が笑う。
「嬢ちゃん。よろしゅうな」 
 明石の言葉にようやく笑顔になって直満が頷いた。

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