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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 164

まず水島は近くにあった扉に飛び込んだ。

薄暗がりの中、先ほど振り下ろされた日本刀がどこにも見えないことに気がついてため息をついた。

『おどろいちゃって・・・』 

「どこにいる!お前が呼んだのか!あの人殺しを・・・」 

少年の声が頭の中に響くのに叫びで答える。しかしどこにも人の気配はしない。そして水島はとりあえず自分のいるのが女子トイレであることに気づいて驚いてそのあまま扉を開けた。

人の気配は無かった。むしろあちこちの壁の傷み具合、割れた窓ガラス、折れた水道管。自分のいる場所が廃墟であることに水島は気づいた。

『おじさん・・・人聞きの悪いことは言わないでよ。僕だってあんな化け物が来るとは思ってなかったんだから・・・』 

人の頭の中ににやけた笑いを浮かべたクリタ少年が映る。忌々しげに近くにあった鉄パイプを手にとって女子トイレを出る水島。

「化け物?じゃあ知っているんだな、あの日本刀の男のこと」 

『一応ね。でも僕にも守秘義務があってさ・・・生きてそこを出られたら教えてあげるよ』 

「無責任なことを言うな」 

怒りに駆られた水島は思わず目の前の壁を鉄パイプで叩いた。火花が散るがただそれだけ。ぶつかった部分の塗料が剥げ、コンクリートの地肌が顔をだす。

『そんなに暴れていいの?さっきの化け物。恐らく僕がおじさんを飛ばした場所を見つけているころだよ・・・逃げるなら今のうち・・・』 

少年の言葉が終わらないうちに水島は走り出した。目の前に階段がある。とりあえずそこを駆け下りる。廊下や壁を見てようやく自分がいる廃墟が病院のあとであることに気づく。

『おじさんストップ!』 

頭の中でまたクリタ少年の声が響く。驚いて壁に張り付き息を整える。

『来たよ。ぴったりさっきおじさんがいた場所だ。逃げた分だけ遠くなったよね』 

「責任を取れよ・・・貴様らに協力するんだから・・・ちゃんと助けろよ・・・」 

『できるだけのことはするつもりだよ』 

焼け石に水と言うような調子の言葉を最後に頭の中から少年の気配が消えた。水島はその時になって初めて自分が孤独であることに気づいた。

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