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遼州戦記 播州愚連隊 21

「おう、忠さんのところの子飼いか?噂は聞いているって……確か、別所君とは会うのはこれで二回目か?」 
 嵯峨が盤面を見つめる西園寺を置いて明石達を振り向く。
「ご無沙汰しています。しかし……」 
「気にするなって!まあ気になるのも当然だな。ベルルカンに治安出動している部隊の指揮を取っているはずの俺がここにいるのがおかしいってんだろ?」 
 ニヤニヤと笑いながら当惑した顔をしているだろう自分達を見つめる青年将校に明石は振り回されているような感覚にとらわれていた。
「皇帝陛下が自ら軍を率いて同盟加盟を表明したカイリシアに……」 
「ああ、俺は大軍を指揮するのは苦手でね。どうせ部下任せになるからな。こうして胡州の動静を探っていた方がよっぽど建設的だろ?」 
 そう言うと隣においてあった徳利から酒をついで煽る。
「しかし、映像でもはっきりと見たんですけど」 
「ああ、あれは弟。親父が兄弟を100人以上こさえやがったからな。おかげであのくらいの望遠での映像なら区別がつかないのもいるわけだ」 
 嵯峨は笑いながら明石達を面白そうに眺めている。
「やっぱり駄目だな」 
 西園寺は相変わらず碁盤を見つめていたが諦めたようにそう言って嵯峨を見あげた。
「だから言ったじゃないですか。もうおしまいだって」 
 盤面を見つめていた赤松はようやく納得が言ったように隣に座りなおす。
「しかし、二人とも驚いていないとは……忠さんも良い部下がいるみたいだ」 
「十分驚いとるように見えるんやけど。それと新三(しんざ)のところの切れ者に比べたらどうにも。あの吉田とか言う傭兵崩れがおればワシも安心して部隊を留守にできるんやけどな」 
 そう言って隣に忘れられたように置かれた杯を取る赤松。
「新三なんて言ってもこいつ等に言っても分からねえよ。ああ、忠さんと俺は高等予科学校からの同窓でな」 
「本当にそれは何度も文句言いたい思うとったんやけど腐れ縁の間違いやぞ」 
 明石はそこであることを思い出した。
 『胡州高等予科学校』。先の大戦の終戦前まで貴族の教育機関のひとつとして開設されていた学校である。軍に進む子弟の早期教育を目的に設立され、軍幹部にはその出身者が多かった。特筆すべきところは成績優秀者は陸軍士官学校や海軍兵学校を経ずに直接陸軍大学、海軍大学の受験資格があると言うところだったが、その試験は過酷で数年に一人という合格実績だった。
 その数少ない合格者の一人が目の前の嵯峨だった。家柄も才能も優れた名将として彼が軍に重用されることになるのは当然の話と言えた。だが、その家柄ゆえに嵯峨は中央から追われることになったのは皮肉なものだった。
 西園寺新三郎として四大公筆頭西園寺家の部屋住みだった彼が、ゲルパルトの名家シュトルベルク家の長女と結婚して中央政界から追放状態だった西園寺家に世の注目が集まると、軍は陸軍大学を出た彼を東和大使館付き武官として東都に送った。中尉待遇での花形デビューと言う体裁だが、事実は軍の中央から遠ざけることがその目的だった。事実その後も嵯峨は二度と軍の中央へ近づくことは無かった。

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