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遼州戦記 播州愚連隊 22

 だが現在その胡州軍の中央と縁が薄いと言うことが嵯峨の優位に政治的状況が展開する可能性を秘めている。そう明石は見ていた。
 元々嵯峨家の領邦には2億の民を抱えるコロニー郡がある。全人口が八億に満たない胡州で図抜けた領邦とその人脈を使える嵯峨は未だ西園寺派や烏丸派とは一線を画して動くことが出来る状況にあった。彼の手足となる被官の陸軍の重鎮、醍醐文隆中将は西園寺家に近い立場とはいえ、三老の醍醐文隆の兄佐賀高家大将や池幸重(いけゆきしげ)准将などは烏丸派が勢力を持つ陸軍に会って中立を守っていた。
「二人とも俺がここにいるのは驚かなかったわけだ。だが、俺がなぜここにいるかは分かるか?」 
 いたずらをする子供のような瞳。明石は自分より一回り上の年であるはずの陸軍大佐の顔を見つめていた。
「それは先ほどおっしゃった……」 
「それじゃあ子供の答えだ。胡州の動静をたどるなら部下や被官にやらせる方が良い。そうしないともし俺がそれだけの為にここにいるとばれたら奴等は自分達が信用されていないってことでへそを曲げるかも知れねえからな」 
 再び嵯峨は徳利を傾けた。
「じゃあ、お二人と協力して……」 
 そう言った別所に赤松が諦めたような視線を向ける。それも承知の上と言うようににやりと笑った別所が嵯峨の顔色を見ていた。
「保科公の健康やないですか?嵯峨大佐がにぎってはるのは」 
 明石は試しにそう言ってみた。西園寺と嵯峨の兄弟は顔色を変えなかったが、上司に当たる赤松が二人の顔色を見たところで明石は自分の問いが正解だったことに気づいた。
「良い目をしているよ。最近の保科さんの動き。明らかに目に付いてね。いろいろと調べたんだが、やはり相当悪いらしい。ただ血管がプッツンしてリハビリ中の大河内公爵とは違って消化器系の癌だがせいぜい延命が効く程度の対処しかできない。それも本人が断ったそうだがね」 
 今の胡州を支えている老人の死。一瞬で場が凍った。
「そして、兄貴に釘を刺しに来たわけだ」 
 しばらくの沈黙の後、嵯峨は兄の西園寺を見つめる。
「釘?何のことだ?」 
 そう言った西園寺に嵯峨は一通の手書きの書状をポケットから出して兄に渡す。
「もう少しこういうものは丁寧に扱えよ」 
 西園寺はすぐにそれを読みはじめるが、次第に目を嵯峨に向ける回数が増え始めた。
「まあ、池もまじめな男だからな。露骨に高家の領邦の半分を譲ると言われても俺にお伺いを立ててきやがる。困ったもんでしょ?」 
 嵯峨の言葉に読みかけの書状を放り投げた西園寺。それを拾った赤松は読まずにそれを畳んだ。
「じゃあ清原からの書類もあるやろ?」 
 赤松の言葉に今度は携帯端末を開いて文書を画面に表示する。そしてそれを西園寺と赤松。二人に見せる嵯峨。
「よく考えたもんだな。こちらでは嵯峨の直轄地まで切り取って池に差し出すと書いてあるぞ。新三、そんな予定はあるのか?」 
 半分笑うような調子で西園寺は画面から目を離して嵯峨の顔を覗き見た。

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