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遼州戦記 播州愚連隊 35

「この段階での連携。特に最後尾の特機の動きが敵のけん制にならなければ意味がありませんから。常に制圧射撃が可能なように中距離での制圧火力を重視して……」 
 海軍曹長の制服姿の少女がモニターをポインターで示しながら屈強な男達が狭苦しそうに座るブリーフィングルームで説明を続けていた。
「ほう、楓お嬢様も教導部隊の隊員の格好がついてきたじゃないか」 
 微笑みながら正親町三条楓曹長の説明を見守っていた明石の背中でつぶやいたのは別所だった。
「ええのんか?強襲部隊の訓練は確か明日やろ?部下へのアドバイスとかは早めに……」 
 振り返る明石に別所は満面の笑みを浮かべる。
「なあに、傾いているとはいえ胡州海軍最強の第三艦隊強襲特機部隊だ。俺からの助言なんかたいした役にはたたないよ」 
 そう言うと別所は明石のわき腹を小突いた。仕方なく部屋をでる明石を別所は教導隊隊長室に誘う。
「なんやねん、ワシも仕事が……」 
 明石の視線に隊長室の前の魚住と黒田が見えて黙り込んだ。明石は隊長室の前で雑談している従卒に目をやり人払いをした。扉を開くと当然のように魚住と黒田は来客用のソファーに腰を下ろす。
「いいねえ、教導部隊は。前線部隊の指揮官室なんか殺風景なもんだぜ」 
 皮肉めいた笑みを浮かべる魚住。明石は苦笑いを浮かべながら隊長の執務机に腰掛けた。
「波多野首相のことなんちゃうか?」 
 誘うように明石がそう言うと黙っていた黒田の鋭い視線が明石に突き刺さる。
「まあな」 
 別所はそう言いながら黒田達に向かい合うようにしてソファーに座る。
 一週間前の会合の直後、烏丸内閣は総辞職した。議会での勢力が足りない彼等に追い討ちをかけるようにして第一党の『共和制運動』党首波多野秀基は西園寺基義の支持を取り付けて内閣を組閣し、烏丸派は野党に落ちた。先の会談で何があったのか。別所なら知っているだろう。そう思いながらもこの切れ者がそう簡単に上司の赤松に口止めされているだろうその過程を話さないことは明石にもわかった。
「でもあれだな。憲兵隊や公安の連中も大変だろうな。いつ烏丸恩顧の天誅組が波多野さんの首を取りにいくかわからないんだから」 
 そう言って魚住が笑う。海軍のもっとも西園寺大公に近い立場とされている第三艦隊所属の中堅将校である彼等にとって魚住の言葉はあまりに不遜に聞こえて明石は魚住をにらみつける。
「だってそうだろ?領邦放棄なんて胡州の屋台骨をぐらつかせかねない主張をしている学者さんを首相に据えたんだぜ?俺は領邦返上には大賛成だが周りの連中もかなり揺れてるぞ。第三艦隊でこの有様なら他の将校や官僚達がどう考えているかなんて推して知るべしだぜ」 
 魚住の言葉は当然だと明石も思った。部屋住みの明石は貴族年金の対象になるだけの話だが、別所や魚住は領邦を持つ中堅貴族である。黒田も年金の中には赤松家の徴税管理を代行することによる禄があることも明石は知っていた。
「でも首相就任後はその手の発言は控えてもらっているからな。それに内閣には烏丸家の被官の面々も顔を出している」 
「ああ、どうせ大臣の椅子を餌に一本釣りをしたんだろうな。まったくえげつない人だ」 
 別所の言葉を聞いてさらに皮肉を飛ばす魚住。明石もさすがにこの話題では魚住に同意しなければならなかった。

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