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遼州戦記 播州愚連隊 42

「ああ、濃州だが。斎藤一実(さいとうかずみ)大尉だ。濃州分遣艦隊でアサルト・モジュール隊の教導を担当している」 
 そう言って手を伸ばす斎藤。周りを見回すとリーダー格の醍醐の次ぐらいの年齢でこの場の将校達と比べると二回りは年上に見えた。濃州は胡州のアステロイドベルト開発の拠点とされるコロニー群であり、その領邦領主は先の大戦の海軍を代表するエースとされた斎藤一学中佐を擁していた。彼が戦死した後は女性の領主が立っているはずだった。
「ああ、誤解するなよ。俺も斎藤一門だが庶流だ。と言っても本当は洋子様もこの場に同席される予定だったがこのご時勢だ。俺が名代と言うわけだ」 
 そう言うと斎藤はどっかりと本堂の床に胡坐をかく。明石もその隣に座るが、楓は胡坐のかきかたが分からないように何度か足を組みなおした後、諦めて正座した。
「おい!誰か座布団を!」 
 そんな斎藤の一言で魚住がはじかれたように走り出す。その様子に笑みを浮かべながら斎藤は目の前の酒を飲み干した。
「これで全員だな」 
 魚住が走り出したのを見てタイミングを計るように別所が立ち上がる。その様子を見て集まった士官達は醍醐の方に頭を向けた。
「同志諸君!残念なお知らせはご存知だろうが波多野卿が凶弾に倒れて一週間が経った。警察は烏丸殿に遠慮して捜査らしい捜査もせず、テロリストは野放しにされている」 
 この別所の言葉に多くの士官が頷く。
「こうしている間にも、烏丸殿の作った貴族制擁護、官僚擁護の法案に触れるとして多くの志を同じくする人々が囚われ、殺されている現状を我々は看過することが出来ずにこうして集まったわけだ」 
 その別所の言葉でこの場に上官であり一番の民派と呼ばれるようになった西園寺派の領袖である赤松がいない理由が明石にも分かった。これはクーデター計画を練るための会合であると。
 見れば士官の中には陸軍のレンジャー部隊、海軍の陸戦隊や空挺部隊の部隊長の顔も見て取れて、これから話し合う内容が要人略取や施設占拠を目的とする作戦行動を目指すと言うことが読み取れた。
「これも清原将軍を討ち取れば話が済むんじゃないか!」 
 末席ですでにかなり酒が入って赤い顔をしている海軍陸戦隊の少佐が叫ぶ。さすがに極論だと言うように周りの士官達は冷ややかに笑った。
 だが、一人楓だけは静かに頷いていた。
「おう、姫様は分かるんだな!」 
 そんな楓を見つけて不器用な笑顔でにじり寄ってくるその男を睨み返す楓。
「はい、この場で酒を飲みすぎて正気を失うような同志の発言は無視した方が良いことは分かります」 
 はっきりと言い切った楓の言葉に同志達は拍手と笑いを送る。陸戦隊の少佐は頭を抱えてそのまま席に戻った。
「実際我々が動くか、それとも彼等が動くかは情勢によるわけですが、波多野卿の無念を晴らすためにもそれぞれが同志を募り、策を練り、機会をうかがうべき時であると……」 
 別所がそこまで言ったとき、杯が砕ける音が響いた。
 それは明石の隣の斎藤と言う海軍大尉が床に杯をたたきつけた音だった。

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