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遼州戦記 播州愚連隊 43

「君達は馬鹿か?」 
 その一言に場は一挙に緊張した。明石も魚住や黒田の顔に殺気が走るのを見て身構える。
「馬鹿?馬鹿とは聞き捨てなりませんなあ!」 
 海軍大尉の階級章の男が立ち上がる。それを見ても斎藤はうろたえずに座ったままで彼を見つめる。
「今現在、この胡州をめぐる状況をどうお考えなのか皆さんにお聞かせ願いたい!」 
 一瞬盛り上がった怒りが急に衰え始めた。黙って周りを眺める明石の目にもその言葉が血気にはやる者たちに十分な打撃を与えるに足る言葉だとわかった。そんな明石を見つけた斎藤は言葉を続けた。
「確かに一撃で倒せる相手ならいざ知らず、事を起こせば間違いなく胡州の植民コロニーをめぐった大騒乱になることは確実だ。そうなれば先の大戦の傷が癒えないこの国は地球や同盟諸国に切り取られることにもなりかねない。事実、遼南の東海州は嵯峨殿に切り取られたではないか!」 
 東海州の事象が効果的にこの場の将校達に冷や水を浴びせた。第三惑星の飛び地である東海州は胡州貴族に列する花山院家の領邦であったが、遼南皇帝ムジャンタ・ラスコー、胡州名嵯峨惟基の姦計により切り取られ遼南帝国領にされたのは否定のしようがない事実だった。
「ゲルパルトの独立戦争をめぐり、地球と対立関係にある我が胡州で内乱が起きる。それを待っているのはなにも地球圏の列強ばかりではないということをお忘れいただいては困る」 
 そう言うと斎藤は手にした一升瓶に口をつける。
「では、斎藤さんはどうこれからの道のりを考えるおつもりですかな」 
 そんな醍醐の言葉に場の将校達の視線は斎藤に向いた。隣でスルメを口にくわえていた楓が斎藤を見ているのに気づいた明石も自然と隣の中年士官を見つめた。
「なに、時代は我々に風が吹いていますよ。東和も遼南も大麗もこの国の民主化を望み、国民もそれを望んでいる。腐った貴族制は自然に崩れる。それまで国を支えていれば自然と時は満ちるものだ」 
 そこまでいうと再び斎藤は一升瓶を傾ける。だが青年将校達は納得する様子は無く鋭い視線を斎藤に浴びせている。
「根拠は?どこにそんな根拠がある!」 
「弱腰ですなあ!濃州はいつこんなに弱腰になられたのか!」 
「老人の出る幕ではない!」 
 叫ぶのはどれも明石より年下。先の大戦を経験したことがないであろう若い士官達だった。さすがに彼等の勢いについていくことは出来ずに魚住も苦笑いを浮かべながら場を眺めていた。
 斎藤は黙って酒を飲み続ける。そこに楓が自分に渡されていた杯を斎藤に渡した。
「おう、姫様。いかがお考えですか?」 
 静かな斎藤の一言。それを聞くと急に青年士官達は黙り込んだ。
「そうですね。波多野様を暗殺計画を策定したと自首してきた陸軍将校は完全黙秘していますがすでに烏丸一派であることは分かっていますから。我々が動けば私怨としか国民は見てくれないでしょう。さらに政治に暴力を持ち込んだことで官派の信用は国際的には低下しています。ここは耐えてみせるのが得策だと思います」 
 冷静な楓の言葉に場が静まる。青年士官達は小声でささやき会った。
 そんな中、明石は醍醐に視線を向けていた。平然と自分を慕う若者達の議論を聞き入っていた殿上人は何も言葉を吐くつもりは無いというように黙り込んでいる。そしてその隣では別所が満足げに楓の言葉に頷いていた。
「ワシは……難しいことをいうつもりは無い」 
 たまらずに明石は自然と口を開いていた

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