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遼州戦記 保安隊日乗 番外編 (2) 10

 吉田は真剣な表情で襲いかかろうとする熊をにらみ付けた。グレゴリウスは近くに仲良しと思っている嵯峨がいることもあって殊勝な表情で腰を下ろして座った。

「なに?何かあったの?」 

 シャムが手にボールを持ちながら現れる。ボールの中にはりんごや先ほどさばいた鮭の切り身が入っていた。うれしそうにそれを見るグレゴリウス。

「はい、朝ごはん」 

 そう言うとシャムはグレゴリウスの前にボールを置いた。

「キウ……」 

「食べて良いよ」 

 シャムの一言を聞くとうれしそうにボールに頭を突っ込む。その無邪気な姿にさすがの吉田も牙を抜かれたように肩の力を抜いた。

「それより……隊長、また泊まりですか?」 

「悪いか?」 

「悪くはないですけど……皇帝の位は捨てたんでしょ?なら同盟会議のネットワークと接触できる端末から離れてもいいじゃないですか」 

 吉田の言葉に嵯峨はポケットから紙タバコを取り出しながら苦々しげに微笑む。

 惑星遼州のもっとも伝統のある国家遼南帝国。その皇帝を務めていた嵯峨だが堅苦しいのが嫌いだということで国内が安定すると宰相の位を政敵であるアンリ・ブルゴーニュ首相に与えて退位を宣言して下野した。

 だがその奇妙な行動に不信感を持っていたブルゴーニュと嵯峨のシンパ達は退位の無効を議会で議決して名目上は嵯峨はまだ遼南帝国皇帝の地位にあることになっていた。こうして嵯峨が皇帝在位中に遼州に領土を持つ国の参加した遼州同盟の司法特殊部隊『保安隊』の隊長に就任してからも両派から新法の提出前に嵯峨にお伺いを立てるのが日常となっており、嵯峨にとっては隊長の仕事よりも遼南の新法の修正に比重が置かれることになっていた。

「アイツ等も結構必死だからね……経済状況は先月の遼南元の切り上げで悪化するのは間違いないんだ。誰にでもすがってなんとか乗り切りたいんだろうな」 

「それは遼南政府の仕事でしょ?」 

「まあ……皇帝退位が認められないとねえ」 

 とぼけたようにそう言うと嵯峨はタバコに火をつけた。



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