スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

遼州戦記 播州愚連隊 75

 安東は車から降りると玄関で立ち止まった。
「御前……」 
「いや、いい。気にしないでくれ」 
 心配そうに言葉をかけてくる運転手の田中にそう言うと玄関を開いた。目の前に座っている安東の子供時代からこの家に仕えている飯田という名の下男が眠りから覚めて驚いた表情で安東を見上げた。
「これは!御前!」 
「気にするな。たまたま暇ができたから帰ってきただけだ」 
 そう言うと安東は静かに腰を下ろして軍用のブーツを脱ぐために腰をかける。
「恭子様は今日は発作もなく……」 
「分かってる。ちゃんと顔は出すさ」 
 妻の恭子の名前を出されて少し照れながらコートを飯田に差し出した。
 恭子は病んでいた。医師は心労がたたっていると言うが、それだけが原因でないのは安東にも分かっていた。確かに彼女は兄の赤松忠満と夫との対立に心を痛めていたのは事実だが、それ以上に何かがあるのではと安東は医師を問い詰めて答えを引き出した。神経系が次第に衰弱して死に至る病気。医師は安東にそう打ち明けた。神経系に欠陥がなければサイボーグ化しての延命は可能だが、肝心の脊髄から小脳にかけての神経に問題があるとなれば話は別だった。
 延命の道が無い。そのことは恭子には黙っているが、彼女もうすうす感づいているらしく最近は軍務で忙しい安東がたまに顔を出しても会おうとしない日が続いていた。
「それじゃあちょっと見てくるよ」 
 飯田にそう優しく言い残して安東は廊下を恭子が暮らしている別館へと進んだ。彼の領邦である羽州はアステロイドベルトでも大型の小惑星が多く存在していて資源に恵まれたところだった。父母に早くしなれて姉であり今は敵である赤松家に嫁いだ姉の貴子と二人で烏丸卿の後見で暮らしてもこの屋敷を管理できる程度の収入はあった。
 庭の大きな緑色の岩に目をやると、そこには恭子の姿があった。
「恭子!起きていて……」 
 安東が思わず庭に下りたのを見て恭子は驚くような表情で手にしていたトンボ珠を振り回しながら別館の方へと消えていった。


FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

コメント

Secret

プロフィール

ハシモト

Author:ハシモト
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。