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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 33

「茜のお姉さんが来てるのよ。何でも法術特捜からのお願いがあるみたいで」 

 アイシャはそう言うとそのまま階段下のトイレに消えていった。

「嵯峨警視正が?」 

 保安隊部隊長嵯峨惟基の長女嵯峨茜。保安隊と同じく遼州同盟の直属司法機関の一つである法術特捜本部の主席捜査官の地位にある彼女。ようやく間借りしていたこの保安隊豊川基地から東都の司法局ビルに引っ越したばかりということで時々こちらに顔を出すことがあるがそのほとんどがデータの刷り合わせなどの地味な作業で一番暇と呼ばれている誠の第二小隊がその作業を担当させられることが多かった。

「面倒だなあ」 

 そう言いながら運行部の詰め所を抜け、シミュレータ室の前を通り過ぎて待機室の手前にある男子用シャワー室に誠はたどり着いた。

 先着の人物がいるらしくシャワーの音が響いていた。誠はそのまま静かに服を脱ぐと手前のシャワーの蛇口をひねった。

「神前曹長!」 

 隣から目だけを出している褐色の顔の持ち主に誠はびくりと飛び上がった。

 第三小隊三番機担当のパイロット、アン・ナン・パク。このまだ19歳の小柄な人物が誠の苦手な人物の一人だった。

「なんだ・・・アンか・・・」 

「僕だと不満ですか?」 

 そう言いながら近づいてくるアンに思わず後ずさりする誠。その少女のような瞳で見られると誠は動けなくなる癖があった。

「神前曹長はいつも僕を避けていますね」 

 アンはそう言うと悲しそうにシャワーを浴び始める。確かにそれが事実であるだけに誠は頭から降り注ぐお湯の中に顔を突っ込んでそのままシャンプーを頭に思い切りふりかけた。

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