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遼州戦記 保安隊日乗 番外編 (2) 50

 隊舎の影に入り一段と冷え込む中でシャムは再び震えるようにして襟元に手を伸ばす。シャムの暮らしていた東和列島の西に広がる崑崙大陸中部の山間部の冬に比べればこの温暖な町の空気はまだまだすごしやすいのはわかっていた。それでも吹きすさぶ風と室内勤務に慣れてきたシャムの感覚には十分この豊川の町の冬も寒くてつらいものに感じられた。

 暴発弾を防ぐための土塁を越えたあたりで一定の間隔での銃声が響き始めていた。

「ああ、やっぱり要ちゃん怒ってるな」 

 シャムがそう言うのは機嫌の悪いときの要の訓練射撃の撃ち方を聞きなれてきたせいもあった。シャムは静かに土塁を抜けて射場にたどり着く。

 吹きすさぶ風の中、相変わらずの捲り上げた袖を見せびらかすようにして要は射撃を終えて空になったマガジンを引き抜くとテーブルの上にそれを並べていた。すでに装弾済みのマガジンを自分の私物のアルミケースから取り出そうとして目を向けた要の視線がシャムを捉えた。

「どうも……」 

 シャムは乾いた笑みで要のたれ目がいつものように死んだものに変わっているのを確認しながら静々と近づいていく。何も言わない要はそのままマガジンを手に取ると自分の愛銃スプリングフィールドXD40のオリーブドラブのスライドに叩き込む。

「もうすぐ……」 

「昼だって言いてえんだろ?」 

 そう言うと要はゆっくりと30m先のマンターゲットに銃口を向ける。すでにその頭部は消し飛んでおり、心臓、腹部にも大きな穴が開いていた。

 銃声が響く。何も無い空間を走った弾丸は頭部のあった場所の後ろの土嚢のあたりで土煙を上げる。

「わかっているなら……」 

「別にいいんだよ。それよりオメエも銃を下げているんだから……」 

 そう言いながら要はそのまま銃口を下ろして静かに銃を後ろのラックに置いた。

「アタシも?」 

「撃たないならアタシに撃たせろ」 

 そう言った途端にシャムのホルスターに手を伸ばす要。その相変わらずの仏頂面にカチンと来たシャムはその手をさえぎると自分で銃を引き抜いた。

「一発だけだよ」 

「ケチだな」 

 ようやく笑みを浮かべた要はそのままシャムから銃を受け取って。丸みを帯びたシングルアクションリボルバーらしいフォルムを満遍なく眺めた後銃口を再びボロボロのマンターゲットに向ける。

「ドスン!」 

 先ほどまでのS&W40弾よりも重い響きの45ロングコルトの銃声が射場に響いた。先ほどと同じ場所に上がる土煙。シャムは苦笑いを浮かべながら要の手の中で反動で跳ね上がって銃口を空に向けている愛銃に静かに手を伸ばす。




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