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遼州戦記 保安隊日乗 番外編 (2) 53

「来たよ……やっぱ」 

 そう言うと要は二本目のマガジンの給弾を止めて立ち上がると銃口をボロボロのターゲットへと向ける。シャムがさっきまで要が見ていた視線のあたりに目を向けるとアイシャがガンケースを抱えて近づいてきていた。

「やってるわね」 

 にっこりとシャムに微笑むと彼女の後ろを回り要の隣のレンジにアイシャはケースを置いた。

「なんでそこにいる?」 

「要ちゃんと私の仲じゃないの」 

 そう言うと紺色の長い髪を掻きあげてそのまま手を置いたケースに伸ばす。箱の中にはごつごつしたスライドが特徴的なアイシャの愛銃H&KUSPピストルが横たわっている。

「まだ月の半ばだろ?必須射撃訓練の弾数の帳尻を合わせるにはまだ早いんじゃないのか?」 

 要はぶっきらぼうにそう言って引き金を絞る。薬室に弾を入れていない以上、引き金を引いても弾は出ない。

「何慌ててるの?……ははーん、私の噂話でもしてたわね」 

 アイシャはいかにも言い当てて満足だというような笑みを浮かべると静かにマガジンを銃に叩き込みスライドを引いて手元のスイッチを操作する。

 目の前に新品のターゲットが立ち上がる。そしてその動きが止まった瞬間、アイシャの銃が火を噴いた。正確に東部に二発の弾丸が命中したのがわかる。続いて心臓、そして再び頭部に一発。アイシャはそこまで撃ったところで満足げに銃を降ろした。

「別に何を話そうと私は良いけど。シャムちゃんには変なこと吹き込まないでよね」 

「なんだよ、アタシがいつもろくでもないことをシャムに言っているみてえじゃねえか」

「あら?違うの?」 

「それはテメエだろ?いつも下らない漫画の話ばっかりしや……」 

 突然要の言葉が途切れたのでシャムは不思議そうに要の顔を覗き込んだ。何か思いついた途端に悲しくなった。そんなことを考えているような泳ぎがちな瞳がそこには浮かんでいた。

「仕事の話題だけじゃ飽きられるわよー」 

 そう言うとアイシャは再び銃口をターゲットへと向けた。





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