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遼州戦記 保安隊日乗 低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 57

「なんだろう……あれ?」 
 誠は自分のしていることが今ひとつよく分からなかった。展開された干渉空間に手が自然と伸びる。そこには一振りの剣があった。
「鳥毛一文字……」 
 手に触れた瞬間に誠は確信した。嵯峨から託された地球の日本で鍛えられたと言う名刀。誠は手にするままするすると鞘から刀身を引き出す。
「神前!」 
 カウラの言葉を浴びて誠の周りの空間が飛び散った。両側から掃射が行なわれる。だが誠にはそれはぬるい攻撃に見えた。
『なんだか時が……ゆっくり流れるんだな』 
 空中を流れるように進む弾丸が見て取れる。誠はすばやく身を翻しそれを避けた。そしてそのままゆっくりとベッドの後ろに隠れているサイボーグに走り寄った。
 恐怖の表情が米軍の軍服を着たサイボーグに浮かんでいるのが分かる。ゆっくりとライフルの銃口を誠に向けようとする動きが極めて緩慢でまるでスローモーションを見ているようだった。誠は余裕を持って剣をサイボーグの顔面の暗視ゴーグルに突き立てた。まるでケーキか何かにフォークを立てるような柔らかい感覚で刀が突き立てられる。
 次の瞬間、サイボーグの顔面から血が勢いよく噴出した。隣では震えながら誠を見つめる水島の姿がある。
「な……なんで?あんた……何者だよ!」 
 誠はその水島の問いに答えることができなかった。確かに時間がゆっくりと流れる感覚があり、いつの間にかサイボーグを倒していた。息すら切らさず、先ほどまでの怯えも心の端から消え去っていた。
「水島勉……違法法術展開および殺人未遂容疑で逮捕する」 
 落ち着いての誠の一言。水島はただ腰を抜かして倒れていた。彼にはもはや頼るものは何もない。
「あんた……化け物だ!なんでそんなことができる!そしてなんで俺から力が見えないんだ!おかしい!これは何かの間違いだ!茶番だ!」 
 我を忘れて叫ぶ水島。その表情を見て困惑していた誠だが頭の中に何度か痛みたのを見逃すことは無かった。
「ここで僕の能力をハッキングしたらさらに公務執行妨害がつくぞ」 
 言い切った誠の言葉に水島は諦めたようにうなだれた。
「神前!応援が到着した!」 
 背後でカウラが叫んでいた。アイシャも満面の笑みで誠を見つめている。
「あちらも済んだのか……まあ『ギルド』もあなたの身柄が我々の手に落ちれば引くしか無いわけだけどね」 
 そうつぶやくと誠はただ呆然と立ち尽くした。
「水島。この馬鹿野郎!かけさせやがって!……と貴様を半殺しにする隊員は今は休眠中だ。ついているな」 
 カウラはそう言うと腰のベルトのポーチから手錠を取り出し水島にかける。水島は手を差し出したアイシャに引き起こされながらただ誠を見つめていた。
「あんたさえいなければこんな事にはならなかったんだ……」 
 誠の顔を見上げたその目は憤怒に満ちあふれていた。だが誠にその怒りにいい訳をする気力は無かった。不意に訪れた眠気。サイボーグのチタン製の頭蓋骨に突き立てられた刀に手を伸ばそうとするがその手は意識のコントロールを失ってそのまま空を切る。
「神前!」 
 カウラの声が耳の奥で遠くに聞こえるように感じながら誠は意識を失っていった。




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