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遼州戦記 保安隊日乗 番外編 (2) 92

 そのまま明石達の合流すると彼等がそれぞれ携帯が義務付けられている隊支給の通信端末を見ていることにシャムも気づいた。息を切らせながらようやく到着したシャムは携帯端末を開く。

『うご!』 

 叫び声が端末から響いた。フェデロの叫びであることはすぐに気づいた。

「実は東和海軍の柔道の強化選手が来ていることを聞いていてね」 

 ロナルドがウィンクしながらつぶやく。なるほどと納得する誠。呆れるカウラ。にやける要。
 
「うちの若いのが行くから鍛えてくれって連絡しといたんだ。これでランニングの分も鍛えられるだろ」 

「確かに……でも準備がいいねえ」 

「合衆国海軍を舐めないことだ」 

 要の茶々にそう言うとロナルドは端末をしまった。明石も自転車のハンドルを握りなおし再び走り出す体勢が整う。

「これで思う存分走れんだろ?このまま競争だな」 

 そう言うとランがダッシュで走り始める。それに奮起したのは意外にも要だった。元が軍用のサイボーグである。勝負になるわけが無かった。瞬時に追い抜いた要のしなやかな肢体が側道の木々の合間に消えていく。

「何かあったのかな?」 

 尋ねるシャムに誠は首をひねった。

「アイツのことだ。練習の時間が短くなるのが嫌だったんだろ?」 

 シャムはカウラの一言で納得した。フェデロの自転車強奪から始まっていつもより明らかにこの珍道中の時間がかかっているのは確かだった。最近は特別ゲスト扱いの明石がいるからには要は最低でも試合形式の合同練習くらいはやってみたいと思っていたことだろう。

 そう考えると野球部監督の要の面子を立ててやろうとシャム達はすぐに走り始めた。

 さすがに全力でとなると身体能力の問題で岡部が先頭を走ることになる。続くのは戦闘用の人造人間として製造されただけに強化された筋肉を持つカウラだった。その後ろは団子状態でラン、ロナルド、誠、そしてシャムが続いた。

「無理せんでええで」 

 すぐに追い抜かれた明石が緊張感の抜けるような声で叫んでいる。

 側道を抜けるとそのまま隊の周りを囲むコンクリートの塀が目に入る。広がっている三ヶ月前まで飛行機の主翼を作っていた工場の跡地の平らな荒地に続く道にはすでに要の姿は無かった。

 先頭を走る岡部との距離をカウラが一気に詰める。それを見て団子状態の後続集団から誠がじりじりと抜け出し始めていた。

『ここは先輩だから譲らないとね』

 シャムがペースを落とすとその気持ちを読んだようにランとロナルドも微笑を浮かべながらペースを落とす。

 二位の争いは余裕をもって追いついたカウラと一杯一杯の岡部、そして明らかに無理をしている誠で繰り広げられながらそのまま部隊のゲートまでもつれ込んだ。




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