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遼州戦記 保安隊日乗 番外編 (2) 93


 ゲートに消える誠達を見ながらシャムはそのまま軽く流して部隊の敷地にたどり着いた。そのまま植え込みの中に出来た踏み固められた道を抜けるとそこにはシャムの畑が広がっていた。

「白菜が順調。いい感じ」 

 手前に並ぶ白菜を見ながらシャムはそのまま走り続ける。遠くで銃声が響いていた。朝の作業の疲れも癒えぬままマリアにまたしごかれている新入警備隊員。少しばかり同情しながらシャムはそのまま大根が植えられた敷地を一気に通り過ぎてグラウンドへとたどり着いた。

 グラウンドの果て、ハンガーの目の前にいる自転車に乗った禿頭を見てすでに勝負がついたことを確認するとそのままシャムはその姿の方に走り続けた。

 大の字になって倒れこんでいる岡部の姿が見える。その隣ではクールダウンのために足首などを回している余裕のあるカウラ。じっと下を向いたまま動かない誠の姿も見える。

「ナンバルゲニア中尉!早く!」 

 すでに自転車を返すのを済ませたらしく、ジャージ姿のアンが手を振っている。シャムは手を振り返しながらそのまま腰に手を当てて仁王立ちしているランのところにたどり着いた。

「おせーじゃねーかよ」 

「いや、みんな早いね。驚いちゃった」 

「シャム。わざとらしいぞ」 

 アキレス腱を伸ばしながらカウラがつぶやく。その言葉にどうにか勇気を振り絞って岡部が起き上がった。

「そんな無理すること無いじゃないか」

「一応隊の面子もあるんで」 

 ロナルドの言葉に苦笑いで答える岡部。誠はというとまだ下を向いたまま肩を揺らして必死に呼吸を続けている。

「それじゃあ着替えろ。報告書の残り……とっとと上げてくれよ」 

 そう言うとランはそのまま半開きのハンガーの扉の中に消えた。なんとか立ち上がった岡部とそれに付き添うようにしてロナルドもそれに続く。

「神前先輩。大丈夫ですか?」 

 相変わらず下を向いたままの誠にアンが声をかける。なんとか息が整ってきたらしく大きく伸びをするとアンに向き直る誠。

「まあな。それじゃあ行きますか」 

 クールダウンを終えて自分を待っているカウラに目をやると苦笑いを浮かべながら誠はハンガーへと歩き出した。

「でも……フェデロは?」 

「ああ、さっき工場の庶務課に電話をしたら無事だそうですよ。こちらに向かっているそうです」 

 アンの言葉に安心しながらシャムもまたハンガーの中の轟音の響く世界へと足を踏み入れた。




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