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遼州戦記 保安隊日乗 番外編 (2) 105

「でも誠ちゃんどうしたのかね。このごろ打たれすぎだもん……やっぱり明石中佐のリードが無くなったからかなあ」 

 シャムもユニフォームのズボンに足を入れながらつぶやいた。秋の都市対抗野球の予選では優勝候補の菱川重工豊川と当たるまではほとんど一人でマウンドを守り通した誠だが、それからの練習試合はどれもいいところ無く2回や3回で集中打や長打を浴びってリリーフの右アンダースローのカウラにマウンドを譲っていた。

 それまでとそれからの違い。リードが岡部に変わったことがあるのは二人とも知っている。

「岡部のリードは強気すぎるんだ。神前は心臓が小さいからな。合うわけが無い」 

 シャツに袖を通しベルトのバックルを締めながらのカウラの言葉。確かに彼女は岡部のリードではそれなりの成績を上げている。球威が無いので一発を浴びることがあるものの、四球が少ないので大量失点が無い。その為前の豊川市役所との練習試合では誠はファーストの守備につき、彼女が9回を完投する結果となった。

「でもこれからは岡部っちに頼るしかないじゃん。ヨハンは……使えないよ」 

「それは分かってる」 

 うつむき加減にカウラは頭の後ろにまとめたエメラルドグリーンの髪をまとめる。シャムが周りを見渡すと、すでに着替えを終えた隊員達が二人の会話を熱心に聞き入っている。

「そんなこと後で話しましょうよ!先行ってるわよ」 

 パーラはそう言うと二人を置いて手にスパイクを持って出て行く。赤い髪のサラも着替えを終えてしばらく苦笑いを浮かべていたがそのままロッカーからスパイクを取り出した。

「急がないと要ちゃんがうるさいわよ」 

「ああ、分かっている」 

 サラの言葉で着替えを終えたカウラはロッカーの置くからスパイクを取り出した。シャムはまだシャツを着ている途中だったので急いで袖に腕を通す。

「まあ言葉で言っても始まらないさ」 

 そう言いながら出て行こうとするカウラをスパイクを引っつかんでシャムは追いかけた。

 すでに正門は夕焼けに染まっている。

「夏ならまだかなり練習できるのにね」 

 そう言うシャムにカウラはうなづく。サラの赤い髪が夕焼けでさらに赤く見えた。

「それより何より打線よ。隊長は無期出場停止。タコ隊長は転属。4番、5番が抜けたんだもの」 

 サラの言葉でシャム達はさらに落ち込む。嵯峨は左投げ左打ちで右の速球派のピッチャーをカモにするのが特技だった。胡州六大学では『帝大最強の四番打者』と呼ばれた明石もまた貴重な得点源だった。

 その二人がすっぽりと抜けてからの得点力は一試合当たり2,3点というところだった。プロを目指す選手がごろごろしている菱川重工クラスになれば点が取れるかどうかすらわからない。

「まあしゃべっていてもしょうがないな……」 

 カウラはそう言いながらグラウンドに足を踏み入れる。技術部が集めたあまった資材と明石が調達してきた光源で作った粗末な照明灯が夕闇に沈もうとするグラウンドを照らしていた。




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