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遼州戦記 保安隊日乗 番外編 (2) 108

 しばらく要はじっとアイシャを生暖かい目で眺めている。グラウンドの照明の中に後ろにまとめた長い紺色の髪の毛をなびかせながらアイシャは悪びれる様子も無く当然のように要の前に立った。

「仕事か。忙しいんだな」 

「違うわよ。ちょっと欲しい漫画がオークションに出てたから……当然落としたけど」 

 得意げなアイシャに大きなため息をつくと要はそのままバットを握り締めた。

「補欠の連中が来ないのはわかる。警備部のパスコーニもケッペルもマリアの姐御に鍛えられてる。飯田、陽、周。島田の部下は今はハンガーで耐熱服で作業中だ……」 

「そうよね、大変よね」 

 他人事のようにつぶやくアイシャ。彼女は被っていた帽子を取るとくるくると手の中でまわして見せる。明らかに要を挑発するような行動。シャムは不穏な空気の中、息を呑みながら要に目をやった。

「じゃあ、オメエも大変な目にあえ」 

「え?」 

 そう言うと要は隣の箱からボールを取り出した。

「さっさと自分のポジションに走れよ!」 

 怒鳴る要。アイシャも練習に来た以上、要に逆らうわけにも行かない。そのままサードのポジションに走り出す。

「サラとシャムもだぞ」 

 ギロリと要が二人をにらみ付ける。二人も守備位置に走る。

「ラビン!貴様も!」 

 呆然と立っていたヤコブも怒鳴りつけられてファーストへと走った。

「それじゃあ行くからな!」 

 まだヤコブがファーストにたどり着いていないというのに要は手にしたボールを鋭いスイングでサードベース上にはじき返した。

 明らかに本気の要の打球。アイシャはダイビングキャッチを試みるもその打球は彼女のグラブの先を越えて転々と外野に転がる。

「アイシャ!人手不足だ!自分で拾いに行け!次、サラ」 

 要の怒鳴り声に埃まみれのユニフォームをはたいていたアイシャが嫌な顔を浮かべてそのままレフト方面に向けて走り出す。

 サラへの打球は鋭いが明らかにアイシャへの打球に比べれば常識的なバウンドをしていた。軽いステップでボールをミットに収めるとワンステップでヤコブに送球する。万年補欠と言う条件でファーストの守備をすることになったヤコブ。おっかなびっくりサラの体型に似合わぬ鋭い送球を捕球した。

「シャム!」 

 すぐに次の打球がシャムに向かう。叩きつける高いバウンド。シャムはそのままダッシュで前進するとバウンドにあわせてグラブにボールを収め、止まることなくファーストに投げる。

 あまりのシャムのすばやい動きについていけずヤコブは送球を捕り損ねる。

「ラビン!ちゃんと捕ってやれよ!」 

「すみません!」 

 大声で叱り付ける要の迫力に押されて落としたボールを要に投げ返しながらラビンは帽子を取って頭を下げた。




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