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遼州戦記 保安隊日乗 番外編 (2) 113

 シャムはマウンドの上の誠を見上げた。

『笑ってるの?』 

 一瞬彼女はそう思った。よく見るとそうでもない。ただおびえた表情が無いだけでそう見えただけだった。ゆっくりとモーションを起こす誠。

 シャムは迷わない。左の腕が上がりばねのようにしなって右バッターボックスのシャムからは見難い位置から不意に現れるボール。

 いつもと変わらない。シャムはためてボールを引き付けることだけを考えている。

 球速は確かに変化球のそれ。タイミングよくシャムのバットが繰り出される。しかし、シャムの予想よりも落ちていくカーブの曲がりは急だった。

「ストライーク」 

 完全なボール球。シャムは空を切ったバットを見て呆然としていた。

「ずいぶん曲がるね」 

「いや、いつも通りですよ」 

 誠に球を投げ返す岡部の言葉。確かに球の軌道を思い描くといつもとさほど変わっていないような気がする。

「タコ君さあ……」 

「ワシはタコやない」 

 仏頂面で明石が答える。だがその口元は確かに笑っていた。

『追い込まれた……すぐ勝負?それは無いかな?でも今の誠ちゃんなら……』 

 今ひとつ考えがまとまらない。それを待つかのように誠はボールを見つめながらマウンドで立ち尽くしている。

『とにかくいつも通り……』 

 シャムは心に決めるとバットを構えた。誠は大きく息をすると岡部のサインに一発でうなづいて構える。

 またゆっくりとしたモーション。岡部の気配が離れていくのを感じてシャムは外角に山を張った。

 誠の左腕から放たれた球は大きく外角に外れて岡部の飛びついたミットに収まった。

「ボール」 

 それを見てシャムは大きく息をする。別に誠は変わったわけじゃない。昨日までの出ると滅多打ちの誠と同一人物なのは間違いない。

 マウンドの上の誠の表情が少し曇っている。

『これまでは制球がうまく行っていた。今のでかなり大きく乱れた。今度はいつもみたいに慎重に球を置いてくる。そこを打つ』 

 シャムは心に決めて岡部のサインに首を振る誠を見上げていた。




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