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遼州戦記 保安隊日乗 番外編 (2) 117

 誠の動揺。だがすぐにそれは収まったようでそのまま相変わらずの静かな物腰で岡部のサインを覗き込んでいた。再びセットしてゆったりとしたフォームで投球がなされる。

 アイシャのバットは打球を捕えた。ボールはシャムに向けて飛び込んでくる。シャムは定位置のままそれをキャッチした。

「はい!以上や!」 

 明石の言葉で部員達はそのままホームベース上に集まった。なんとも不思議そうにバットを何度も降るアイシャ。

「真芯じゃなかったからなあ……」 

 不本意そうにつぶやくとアイシャはヘルメットを脱いだ。

「おう、神前。どうだ?」 

 要の言葉に何ともつかない笑みを浮かべて誠はシャムからボールを受け取った。

「とりあえずこのくらいにするか。それぞれ着替えて帰るぞ」 

 要の一言でシャム達はそれぞれ手にしたグラブをベンチの横の用具入れへと持って走る。相変わらず射撃レンジの方では射撃訓練の銃声が続いている。

「どうしたのかな……誠ちゃん」 

「私に聞かないでよ」 

 シャムの問いにこれも不思議そうな顔をしているサラが答えた。それぞれ自分用のグラブを入れる袋にグラブを入れると新人の警備部員がそれをまとめて片付ける準備をしていた。

「シャム!サラ!さっさと着替えろ!飲みに行くぞ」 

 上機嫌で叫んでいるラン。どうにも小学生にしか見えないランがそんなことを口にすると不謹慎に見えてきてシャムは笑っていた。

「シャムちゃん。笑える身分じゃ無いんじゃないの?」 

 バットを片付け終わってすっきりしたというような表情のアイシャがつぶやく。シャムはその言葉には少し腹が立ったがそれ以上に疑問が頭の中を駆け巡っていた。

「アイシャちゃん。どうだった?」 

「どうって?」 

 アイシャはヘルメットと帽子で跡が残っている紺色の髪を何度か手櫛で梳いた後に答える。

「誠ちゃんのことに決まってるじゃない!」 

 いらだって叫ぶシャムを子供をみるような視線で見つめるアイシャ。

「そうね……気楽に投げてるんじゃ無いのかな?そうだ、どうせ明石中佐も来るだろうからあまさき屋で聞けばいいじゃないの」 

 アイシャの言葉に合点がいったシャムはそのまま正門目指してグラウンドを走って飛び出した。




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