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遼州戦記 保安隊日乗 番外編 (2) 148

 シャムは背中に気配を感じて振り向く。

「ああ、お帰り」 

 そこには寝間着にどてらを着込んだ受験生の姿があった。

「何してるの?」

「いいじゃないか、牛乳くらい飲んでも」 

 信一郎はそう言うと冷蔵庫を開けて牛乳を取り出す。

「あ、アタシも飲む」 

「え……まあいいけど……酒臭いね」 

「そう?」 

 信一郎の言葉に体をクンクンと嗅ぐ。その動作が滑稽に見えたのか信一郎はコップを探す手を止めて笑い始めた。

「なんで笑うのよ!」 

「だって酒を飲んでる人が嗅いでもアルコールの臭いなんて分かるわけ無いじゃん」 

 そう言いながら流し台の隣に置かれたかごからコップを取り出した信一郎は静かに牛乳を注いだ。

「アタシのは?」 

「ちょっと待ってくれてもいいじゃん」 

 そう言うと注ぎ終えた牛乳を一息で飲む。その様子に待ちきれずにシャムはかごからコップを取り出して信一郎の左手に握られた牛乳パックに手を伸ばした。さっと左手を挙げる信一郎。小柄なシャムの手には届かないところへと牛乳パックは持ち上げられた。

「意地悪!」 

「ちゃんと注いで上げるから」 

 まるで子供をたしなめるように信一郎は牛乳パックを握り直すと差し出す。シャムはコップをテーブルに置いた。信一郎は飲み終えたコップを洗い場に置くとそのままシャムのコップに牛乳を注いだ。

「でもお姉さんは飲むのが好きだね。これで今週は三回目じゃん」 

「まあつきあいはいろいろ大変なのよ」 

「本当に?」 

 憎らしい眼で見下ろしてくる信一郎の顔を一睨みした後、シャムは牛乳を一口口に含んだ。

 口の中のアルコールで汚れた物質が洗い流されていくような爽快感が広がる。

「いいねえ」 

「親父みたい」 

 信一郎の一言にシャムは腹を立てながらも牛乳の味に引きつけられて続いてコップに口を付けた。




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