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冷笑 2

 道は無意味に真っ直ぐと続く。
 下り坂。それは後の上り坂の序章。ただ腕の筋肉の張りを感じつつハンドルを握りしめる。空気が冷たく感じるのは秋の風のせいか、汗のせいか。どちらにしろ俺にはただの現象にしか思えない。下りきるとここも耕作放棄された田んぼ。どうせ機械を入れることもできないようなこの地形での農業など絵空事の話だ。常に価値に追い立てられるこの時代にこんなところの再開墾を訴えている馬鹿の気が知れない。緑の芒を見て思うこと。ただそれだけでそれで十分。俺は上り坂に備えて足に力を込める。
 静かにそして急激にそれは始まる。日が道ばたのクヌギの木の葉に遮られて途切れる。まだ散る様子は無いが近く色づきそして落ちるだろう。自然の営み。誰の意志とも関係なく時間は流れる。そして坂の勢いも増す。右足、左足。腿の裏の筋肉の緊張と弛緩の連続。それはそれで興味深いことだが今の俺には呼吸が一番の仕事だった。息を吸い、そして吐く。ただそれだけの繰り返し。坂が終わるか俺の気が変わって来た道を引き返すことでも無い限りそれは続く。ただ息を吸い、そして吐く。
 そして急に坂は終わる。高速で追い抜いていくダンプカー。硫化水素を含んだ黒煙が延々と立ち上り続ける。煙草とこの煙とどちらが体に悪いのだろうか。突然現われた長屋門を見ながら少し考えてみるが、今の俺にそんなことを考えているような余裕は無い。ただ自転車を漕ぐのみ。
 両側が開けていた耕作放棄地と違ってこうした農家らしい家々の集まった集落の道は狭い。必死になって道路にせり出してくるような土塀。手入れなどまるでされていない土塊がかつて壁であったことを俺に知らせてくるがただそれは面倒なだけだ。路上にまで転がる土塊がハンドル操作を危ういものにする。まあそれも一興。追い抜いていく営業車に撥ねられたところで何が起きると言うわけでもない。これという変化のない日常が一つ終わるだけ。世に少しの変化すら無いだろう。俺はただ自転車を漕ぐ。


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