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冷笑 4

 柿の木が見える。実る実。ただ誰が食べるのか。たぶん誰も食べることは無いだろう。路上に落ちてつぶれた柿の実がタイヤに粘り着く。どうにも嫌な気分になる。だからどうと言うこともない。ライトバンも同じように柿の実を踏みつぶして走っていく。特別なことは何もないのだから。
 畑が途切れる手前の野菜の無人販売所。正確に言えば無人販売所跡地だろう。一頃のはやりで日曜大工のつもりで作ったのだろう粗末な屋根とテーブルのようなスペース。ただ使われなくなって長いようで、板は黒ずみ所々に穴まで開いている。何もない以上俺には用はない。俺はただ自転車を漕ぐ。
 杉林が始まる。当然手入れなどされていない。ある木は根本から折れ、ある木は生長が遅れて腐り、ある木は途中で二股に伸びて使い物にはならないように見える。そしてその木の根元の雑草の生い茂ることの激しいこと! 今更手を入れることも出来ないだろう。もしこの土地が残土の処分場にでもなるときは無価値な木ぎれがたくさん出ることだろう。ただそれだけ。いつ、誰がどんな思いでこの木々を植えたのか。俺の関わりのあることでないことだけは確かだ。それが無駄だった。何の意味もなかったことだけはよく分かる。人生は徒労だ。ある意味よく分かる典型例なのかもしれない。でも無関係に俺は自転車を漕ぐ。ただ漕ぐ。
 再び坂。まさに拷問以外の何ものでもない。かつての将軍の部下達は相当に我慢強い人間が揃っていたのだろう。それともかつての人々はもっと我慢強かったのかもしれない。まあ考えてみれば生きていても良いことなど何一つ無いだろう人生を送ることを強制された人々ばかりが世のほとんどを占めていた時代の話だ。我慢強い人間が多いのも当然なのかもしれない。まあ、今が生きていて良い時代なのかは物質的な面では勝っているという事実以外には俺には知識がないので特に考えることも無いのだが。俺は自転車を漕いだ。
 右足、左足。力を込める度に左右の道の周りの草達が気になる。名前はあるだろう。偏執狂的学者達が付けたその草達にとっては何の意味もない記号としての名前。それについて俺が調べるつもりはまるでない。知ったところで左右の足の疲れが取れるわけではないから。ただそれぞれに個性を主張して生存を競っている事実は見て取れる。実にうらやましい限りだ。人間も脳みそを取り除けばこうして草のように生きることが出来るのかもしれない。まあそれが生きているという事かどうかは別の問題だが。俺は自転車を漕ぐ。


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