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遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 43

「西園寺! 」 

カウラは食堂から出て行こうとする要の腕を捕えた。ばつが悪そうに頭を掻く要を誠とアイシャはちらりと横目で見た。

誠の前にはサーフェイサーで下準備を済ませた組みかけの女子校生のフィギュアがあった。久しぶりのフィギュア製作。もしもこれが謹慎中の暇つぶしでなければそれなりに楽しむことが出来たと思う。一方でアイシャは誠に下塗りをしてもらったアニメの五体合体ロボの仮組をしていた。

「焦ったってしょうがないじゃないの……それともなに? 吉田少佐の知り合いのプロデューサーでも捕まえて絞り上げるつもり? 一般人にご迷惑をかけてもしょうがないじゃないの。少佐はちゃんと仕事はしている。契約上、例え何日欠勤しようが文句は言えないのよ」 

アイシャの小言に要はむくれた顔のままそのまま近くの椅子に体を置いた。明らかに不服。それは十分分かっている。しかし今は待つしかないのを一番分かっているのも要だと言うことは皆が分かっていることだった。

心理を読むことに優れた法術を持ち、独自の情報ルートで様々な情報を入手して売り渡す凄腕の情報屋の『預言者ネネ』。そんな彼女でも二日程度で有効な情報が得られるとはその道のプロである要なら分かっているはずだった。だがそんなことを言っていられない状況ができあがりつつあった。

カウラは要が落ち着いたのを見て取ると食堂の古めかしいテレビのスイッチを付けた。相変わらず流れているのは遼北と西モスレムの軍事緊張のニュースだった。

実力行使の及ぼうとした両国が同盟軍事機構のエース、アブドゥール・シャー・シン大尉のパイロキネシス能力の前に優秀なパイロットを消し炭にされたことでとりあえずの正面衝突は避けられているものの、両者による外向的な徴発合戦は続いていた。

西モスレムは化石燃料系の遼北とベルルカン大陸の親遼北諸国への限定的輸出制限を宣言し、対抗処置として遼北は国内のイスラム宗教指導者を拘束した。緊張が始まってから遼州同盟会議は両国による非難の応酬で実質的な機能は麻痺しつつあった。

「これ……どこまで行くかな」 

テレビを見ていた要がぼそりとつぶやく。ようやく身勝手な行動を諦めたような要を見てカウラがテーブルの上に腕を組みながら話を始めた。

「根が深いからな。国境のカイエル川の中州……広さにしたら東都がすっぽり入る程度の広さだと言うが、それでも領土は領土だ。それに遼北の回教徒への圧迫には昔から西モスレムは不快感を隠していなかったからな。今回の遼北の越境行動で堪忍袋の緒が切れたんだろうが……」 

「だとしても私達には面倒な話ばかりね。もしこのままどちらかが同盟を離脱するとか言い出したら失業するかもよ」 

ロボットらしい形を目の前に作って一息入れているアイシャがぼそりと呟く。確かに誠も同盟の主要国であるこの二国の一方が離脱という形になれば遼州同盟が空中分解することは容易に想像が出来た。

だから何が出来るわけでもない。確かにこんな状況だからこそ要が別に関心があるわけでもない吉田の捜索に夢中になるのも分かる気がしてきた。

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