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遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 44

「保安隊解体……」 

誠の言葉にアイシャは苦笑いを浮かべた。

「私はゲルパルト国防軍に戻ることになりそうね……あそこはネオナチを追い出したおかげでいつでも人手不足でヒーヒー言ってるから……カウラちゃんは東和軍? 」 

「だろうな。おそらく陸軍だろう。士官養成課程は陸軍で受けているからな」 

まるで既成事実のように語り始める二人。要はそれがいかにも気にくわないというように膨れた顔のままテレビの画面を眺めていた。

「同盟崩壊が決まった訳じゃないだろうが……」 

「もしもの話よ。いつだって最悪は訪れるものよ。こういう風に意固地になって民族主義に走り出した国がどうにも出来ないのはゲルパルトの例を見ればわかるでしょ? 排外主義に突っ走ってどうしようもなくなってドカン。よくある歴史の一コマよ」

淡々とそれだけ言うとアイシャは仮組みしたプラモデルをうっとりとした目で眺めた。今の誠達に何かが出来るわけもない。出撃命令の出ていない武装組織はただの民間人。いや、それよりも情報に精通しているだけにそれ以下の存在だと言うことがひしひしと誠にも感じられてきた。

「吉田の野郎がいれば……」

「いてどうするの? と言うかあの人がこの状況を知らないとでも思っているの? 私の勘だけど……この状況と吉田少佐の失踪には何か深い関係があるような気がするんだけど……」 

「アイシャ。そのくらいのことはここにいる誰もが分かっていることだ」 

平然と自分の名案をカウラに切って捨てられてアイシャが肩を落として俯いた。その光景が面白かったので思わず誠はフィギュアの右腕を持ったまま吹き出す。すぐに顔を上げたアイシャが誠を睨み付けてくる。渋々誠は何もなかったことにして右腕をアレンジするとしたらどうするかと言うことを想像するようにプラスチックの部品を目の前にかざしてみた。

「まあこれから先は隊長の……いや、同盟司法局の本局や同盟会議の首脳達の判断になるだろうからな。なんとか動けるようにしてくれればいいのだけれど……」

愚痴るカウラ。彼女の気持ちは全員の気持ちだった。確かに自分達は現在つまらないことで謹慎中の身の上だった。そんな彼等でさえ現状はいても立ってもいられない状況。出勤していった隊員達がハンガーでこのニュースをどんな気持ちで聞いているかを想像すると逆に同情する気持ちすら芽生えてくる。

「まあ……世の中なるようにしかならねえよ! もし最悪を突き進めば遼北と西モスレムの全面核戦争。十億程度の人間が死んで終わり。同盟は瓦解し、地球の列強が隙間をついて各国にすり寄りベルルカン大陸は地球資本に浸食されて失敗国家がさらに失敗した社会になる。それだけの話だ」 

そう吐き捨てると要は立ち上がった。

「どこへ行く! 」 

カウラの強い語気に渋々振り返る要。

「煙草だよ」 

それだけ言うと要はそそくさと食堂を出て行った。


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