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遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 46

「どう? 」 

鋭い視線を送る安城だが、嵯峨はそのまま伸びをして椅子にもたれかかるとただ呆然と正面の空間を見つめながら口を開いた。

「どうと言われても……インパルス砲。縮退空間を砲身全面に展開してそのまま高エネルギーで無理矢理打ち出すって言う理論は昔からあるわけだしねえ。先の大戦中も中立だった東和軍が自衛目的で研究を進めて他のは俺も東和の大使館付き二等武官だったから重々承知はしているつもりだよ……その試作砲台の設計図が流出……あれじゃないの? このきな臭い時期に東和の強さを見せつけたいという内部の自称愛国者の自作自演とか? 」 

嵯峨の話に安城の表情はさらに険しくなる。嵯峨はそれを見るとしょんぼりと視線を落とした。

「内部犯行説は魅力的ではあるけど……一応、私も東和軍の保安部出身なの」 

「それは知ってるんだけどさあ……人間魔が差すことは誰だってあるもんだよ。それに最近じゃ『ギルド』の遼州民族主義者が跋扈しているからねえ……そうだ!『ギルド』のシンパが情報を抜き取ってリークしたって線は? 」 

思いつきと明らかにわかる白々しい嵯峨の態度に安城は大きなため息をついた。

「嵯峨さん……まじめに答えてよ。このデータの流出元は東都工大の研究室の通信端末よ。あそこは民族主義者よりは共産主義者の出入りが盛んな場所でしょ? 」 

「ああ、今時学生運動をやっている奇特な大学の研究室からの流出ねえ……となると東和の軍部の暴走を警告するって言う意味合いのものか……でもアイツ等に東和軍のネットワークに侵入してすぐに足がつかないだけの技術力があると思う? 」

「だから吉田少佐に嫌疑がかけられたんでしょ? 東和宇宙軍のネットワークに侵入して足跡も残さずに情報を抜き取り、それを軍部を批判する組織に譲り渡す……まあ吉田少佐の経歴から考えたらあり得ない話なんだけど、現在行方不明で上司もその足取りを把握していない。疑われても仕方がない状況にはあるわよ」 

上司が足取りを把握していないと言う一言はさすがの嵯峨にも堪える一言だった。俯いて指で机の上の埃を一つ一つつまんでは吹き飛ばしていじける嵯峨。

「確かにそう言われたらその通りなんだけどさあ……吉田の野郎が資金源なんてたかが知れてる学生活動家に苦労して手に入れた情報を譲り渡すと思う? アイツは守銭奴だよ。具体的設計図としては役には立たない代物なんだろうけど東和がインパルス砲開発を諦めていない事実の暴露はそれなりの利用価値のある情報だ。値段をつり上げる方法を熟知している吉田のことだ。もし奴の仕業なら学生活動家の懐じゃ思いもよらないような値段でそのファイルを売りつける先を捜すんじゃないかな」 

嵯峨の言葉などまるっきり読めているというように安城は肩を落とすとそのまま部屋の中央の応接セットのソファーに腰を下ろした。嵯峨はそれを見ると少し気が楽になったというように上着の胸のポケットから煙草を取り出すと静かに火を付けた。

「吉田の馬鹿がこのタイミングで行方不明だということ以外は奴が疑われる理由は無いわけだ……。しかもそのことはすぐに捜査の責任者である秀美さんが悟ることは織り込み済み。そしておそらく同僚のよしみで俺に捜査情報を話すことも……東和宇宙軍上層部は知ってて今回の吉田の身柄の確保を指示してきた……そう考えられないかな? 」 

煙草の煙を吐きながら吐いた嵯峨の言葉に少し驚いた表情で安城は嵯峨のとぼけた顔を見つめた。


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