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遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 67

桐野の鋭い視線に一瞬ひるんだかに見えた北川だが、その後ろに反った体には余裕があった。静かにため息をつき、そしてそのまま桐野を見つめる。

「まあ……受け渡し方法がね……俺の前いた世界の連中とはかなり違うんですよ。かなり手が込んでいると言うか……回りくどいというか……まあ慎重を期すプロの世界では当然なのかも知れませんが」 

「まるで俺達がアマチュアみたいではないか」 

「みたい何じゃなくてアマチュアそのものですよ。実際に諜報機関とかとやりとりがあるような連中がよこした情報。そう言う機関に出入りする連中に知り合いはいないものでね」 

にやりと笑う北川。だがまだ桐野は得心がいかないというような表情を浮かべている。

「俺と因縁がある諜報機関がらみ。そうなれば保安隊くらいしか思いつかないでしょ?もしギルド本体に用があるなら俺じゃない窓口を使うはずだ……太子はそれほど俺を信用しちゃいませんよ」 

「口の軽い奴は誰だって信用しない」 

「ああ、これは手厳しい! 」 

自虐的な笑みを浮かべて額を叩く北川だがその目は笑っていなかった。桐野も北川も所詮は手駒に過ぎない。遼南第四代皇帝ムジャンタ・ハド。通称廃帝ハドの冷酷で動くことのない心が二人を人間として扱ったことなど一度としてなかったのだろう。それ以前にハドに人間としてみられた人間がどれだけいるか……北川はそれを想像するとどうにも卑屈な自分を見つけて笑うしか無くなる。

「その吉田俊平……何をしようというのかねえ……俺を囮に使っての情報公開。しかも同盟とは相容れない思想の連中からの発言となればこいつは裏切り行為ですよ」 

「あちらの指し手も嵯峨惟基だ。手駒に癖があるのは当然だろ? 」 

興味がないというように呟くと桐野はそのまま剣を抜いた。白い刃がキャビンの明かりに照らされて揺らめく。北川はその抜き方で桐野が相手を斬るつもりなのか剣の手入れをしようとしているのか区別がつくようになった自分に気がついて苦笑いを浮かべる。

「それにしてもヨーロッパ旅行……楽しみですね……」 

「地球人の気まぐれにつきあっていては身が持たんぞ? ようは今のうちは俺達を東和から引き離したいという太子との利害が一致した偶然だ」 

懐紙をコートのポケットから取り出すと桐野は静かに刀身を拭い始めた。何度となく斬ってきた人間の肉の脂で汚れていく懐紙。それを見ても北川の心は特に揺らぐこともない。

『俺もすっかり人殺しが板についてきた……初心というのは忘れるもんなんだな……』 

口に出したとしたら間違いなく桐野に馬鹿にされるであろう昔の自分を思い出しながら北川は静かにしばらくは見納めになる東和の景色をキャビンの窓から眺めることにした。


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