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遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 72

『あなたの選択肢は確かに少ない……敵が多すぎるのは考え物だね。あのアドルフ・ヒトラーも敵を作りすぎて自滅した。確かに大衆を動かすには敵を作って彼等を攻撃する様を見せてやるのが一番手っ取り早い。強気な指導者はどんな世界でも人気者だ……まあ自滅するのが彼等のほとんどの運命なのだがね』 

皮肉のつもりだろうか。カーンの目は次第に殺気を帯びて目の前の骸骨を睨み付ける。

『怖い顔をしたところで状況は変わらないよ……要するに土壇場で菱川の総帥が日和見を決め込んでいることがあなたを焦らせているんだろ? それはあなたの読み違いだ。菱川は最初からこの段階で日和見を決め込むことは決めてあなたに接触をしてきたんだ。遼州同盟は確かに東和には負担が大きい……でもそれ以上の見返りも期待できる。彼は同盟の運命がどう転ぼうが勝者の側に立つつもりだ……実際すでにこの施設の存在にまつわる東和宇宙軍の情報はすべて抹消済みだ。この砲台がどんな災いを招こうがすべてはゲルパルトの過激派のテロ……東和は無関係で押し通せるように準備は済ませているようだ……はめられたんだよあんたは』 

自分が想像していた最悪の状況を丁寧に説明してみせる機械人形。カーンの苛立ちは最高潮に達する。

「すると何か……貴様はその様子をそこで黙ってみていたのか? ずいぶんなできの悪い参謀じゃないか! 」 

思わず握りしめた拳。もしこの透明のケースに叩きつけたとしてもただ痛みを感じるのはカーンだけ。むなしい怒りにこの骸骨に表情があったらさぞ満足げな笑みを浮かべることだろうと想像している自分に腹が立ってくる。

『怒らなくてもいいじゃないか……高齢者の怒りは生産的とは言えないな。別に指を咥えてみていた訳じゃない。その抹消作業の状況はある菱川に遺恨を持つ人物のところに送付しておいた……その作業状況のファイルを最も効果的に使用してくれる才能を持つ人物のところだ……まああなたにとっては最悪の相手かも知れないが』 

「嵯峨か? 」 

確かにあの男なら菱川重三郎という狸を狩り出す腕はある。だが目の前の機械人形に指摘されるまでもなくカーンには悪意しか持たない男だった。

「確かに嵯峨が菱川をいたぶる様は見てみたいが……我々とのつながりが露見したらどうする? 」 

『それが狙いだよ……あなたの組織は東和にも根を張っている。それをあの男に見せるのは実に愉快じゃないか。自分の庭と思っていたものが実は地雷原だったというわけだ。このところあの男の動きが激しすぎたからな……多少動きづらくしてやるのもあなたの為と思ってね』 

「私のため? 」 

カーンは思わず自分の声がうわずっているのが分かった。機械を相手になんでこのように追い詰められた気持ちにならなければならないのか。自己嫌悪が背筋を走る。

『そうだよ。この砲台が衝突を躊躇う二つの国家を遼州の地上から消し去ったとして……あなたは遼州で次の手がすぐ打てると思っているんですか? 』 

「作戦は常に電撃的に行われなければならない! 」 

『その考えがこんな状況にあなたを追い詰めたんですよ。今、砲台はあなたの手にある。それは迅速に使われなければならない。それは確かに事実だ。だがその後の混乱した遼州を予想してすでに手を回しているのは誰か? 菱川だ。約170時間後、この宙域で保安隊の演習が予定されている……』 

最後の言葉はカーンも初めて聞く情報だった。

「そんな……奴等の行動は同志が把握しているはずだ! 連中はそれほど情報管理に対して慎重じゃ無い! 」 

『だとしたら『管理者』の意図が働いたようだね……保安隊の演習に関する情報を別の情報にすり替えてあなたの間抜けな同志達を欺く……彼なら簡単な話だ。で、この砲台を彼等に引き渡すかね? それとも……』 

機械人形の指図を受けるまでも無かった。カーンの覚悟は決まっていた。


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