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遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 96

『のぞき見……確かにそうかも知れませんね』 

静かに響く人工的な声。嵯峨はその相手が分かり切っているというようにただにやけたまま画面を見つめていた。

「まあ……仕事はちゃんとしてくれているからさ……ただ俺の迷惑になりそうなことなら事前に言ってくれりゃいいのにねえ。そんなに信用おけないかね」 

『信用? あなたが信用に足る人物かどうかはご自分が一番よく分かっているんじゃないですか? 』 

「違いないなあ……」 

力なく笑う嵯峨。通信はつながっているのに画面は映らない端末にデータの着信を告げる音声が響く。

『俺が指名手配中に集めたデータです……お役に立てば……』 

「菱川の御大将の正体ともくろみに関するデータと俺達が四日後に出かける演習先に浮いているあの物体に関するデータか? じゃあいらねえなあ」 

嵯峨の意外な反応に音声の主、吉田俊平は沈黙しなければならなくなった。

「あれだろ? 宇宙に浮いている1.5kmのあの巨大な物体。そしてお前さんが手配されるきっかけとなったインパルス砲の設計図……つながった訳か……。そして菱川の旦那は俺達がその破壊に成功しようがしまいが丸儲けをする仕組み作りを完了している……要はその裏付けと金のやりとりの通信記録ってところだろ? どうせ証拠じゃ使えねえよ。見たって自分がふがいなく感じるだけだ」 

『察しが良いですね。俺が見込んだ皇帝陛下だ』 

「察しが良いのは得じゃ無いよ……しなくても良い心配をするばかりだ。今回だって何も知らずに移動砲台とこんにちはすればただパイロットとして暴れりゃいいんだから。おかげで今回は俺は来ると分かっている公安連中の接待なんて言う役になりそうだ」 

卑屈な笑みを浮かべて机の上の埃を払う。司法機関の実力部隊の部隊長の隊長の机には似合わない積もった鉄粉がばらばらと部屋のタイルの上に落ちる音が響いた。そのまましばらくの沈黙が暗い部屋の中に続く。そして再び人工的な音声が始まる。

『そうなると……あの物体の破壊は難しくなりますね。神前じゃあ最悪の事態を防ぐので精一杯でしょう』 

「まあな。東和宇宙軍じゃもうすでにあれは無かったことにするつもりらしいが……俺が作った訳じゃないし、壊してくれと頼まれた訳じゃ無いからな。あれの今の持ち主のアドルフ・ヒトラーファンクラブの連中の目的は阻止するがそこから先はテメエで処分しろって言うのが俺の立場だ」 

『でもそうなると……インパルス砲搭載艦を彼等……ルドルフ・カーンのシンパですが、彼等が回収することになりますよ? 』 

さすがに投げやりな上司に呆れたというように呟く人工音に嵯峨は満面の笑みを浮かべる。

「それこそ『そいつは俺の仕事じゃねえ』ってところだな……ああ、そう言えばあの砲台。連中は『フェンリル』とか呼んでるらしいぜ……北欧の神の体を半分食いちぎったでかい狼。インパルス砲の想定される最低出力で衛星軌道上から地球を撃つとスカンジナビア半島が半分消し飛ぶらしいからねえ……言い得て妙だ」 

『ただ……彼等が狙うのは地球ではなく……』 

人工音の遮る声に嵯峨は頬杖をつきながら頷く。

「そんなのは馬鹿でも分かる。狙いは遼北と西モスレムの国境地帯。両者の核は現在は臨戦態勢を解除したばかりだ。突然の破壊が国境で起これば間違いなく地殻の奥の鉛のシェルターの中のミサイル基地からは佃煮にするほどの厄災があふれ出るわけだ……迷惑極まりない話だねえ……」 

のんきに呟く嵯峨の言葉に人工音は再び沈黙した。


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