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遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 112

「なんだテメエは……? そう言うテメエはなんだ? 」 

男の目が笑っている。その様が不気味に見えて思わずオンドラは顔をゆがめて身を引いた。男の顔かたちは彼女が調べた保安隊の第一小隊二番機担当者吉田俊平のものだったが、そのやせぎすの義体は軍用とはとても思えないものだったし、爛々と光る目はどう見てもまともな人間のそれではなかった。

「そうですね……侵入者は私達の方ですから」 

「ほう……」 

ネネの言葉にすぐに吉田は関心をネネへと向けていた。棺桶からジャンプして飛び出し、跳ね回りながらネネの周りを回る。

「オメエ……アングラ劇団の劇団員か? 」 

「失礼なことを言う! 」 

思わず出たオンドラの本音にこれもまた大げさに反応するとそのままじりじりと顔を銃を手にしているオンドラに近づけた。もし彼女が素人ならば恐怖のあまり引き金を引いているところだが、吉田は相手がそれなりに場数を踏んだ猛者だと読んでかうれしそうな表情を浮かべてじりじり顔を近づける。

「来るんじゃねえよ! 気持ち悪い! 」 

「それを言うならこちらの方だ! せっかく良い気分で眠っていれば突然の侵入! 君ならこんなときにご機嫌でいられるかね? 」 

オンドラとは話が合わないと悟ってか、吉田は話をネネに振ってきた。

「でも入り口のあの文字。あれを書いたのがあなたなら私達を歓迎してくれても良いと思いますよ」 

ネネの言葉に矛盾はなかった。しばらく吉田は天井を見上げて一考した後、手を打って満面の笑みを浮かべた。

「そうか! あの謎かけを解いたのか! 」 

「そうじゃなきゃここにいねえだろ? 」 

オンドラのつぶやきを無視して吉田はネネの手を取った。

「学究の徒、遠方より来たるか! これはまた楽しいことだな! 酒宴でも催したいところだが……見ての通り空ものもろくにない有様でね」 

「酒宴だ? まっぴらだね」 

またも呟くオンドラ。吉田は敵意の視線をオンドラに向けた後、すぐに満面の笑みに戻ってネネの手を取る。

「この星に眠る謎。どれもまた興味深いものばかりだ! それを尋ねてもう何年経つか……成果を横取りしようとする馬鹿者達の相手も疲れ果てたところだからね」 

「成果を横取り? あなたはこの部屋で研究成果をハッキングしているだけなんじゃありませんか? 」 

うんざりしたように呟いたネネの言葉。だがネネには吉田の敵意が向かうことはない。満面の笑みを崩すことなく何度となく頷き笑い声を静かに漏らす。

「確かに……個々の研究成果はどれも私ではなくそれぞれの実地の研究者の地道な活動の賜であることは認めるよ……でもそれを統合し一つの成果として世に送り出す天才が必要だ。そうは思わないかね? 」 

「自分を天才呼ばわりか……終わってるな」 

再び殺気を帯びた敵意の表情がオンドラに向けられる。ネネはその様子があまりに滑稽なので吹き出しそうになりながら吉田の次の言葉を待った。


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