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遼州戦記 保安隊日乗 殺戮機械が思い出に浸るとき 124

「確かに……そう言う能力があるって話は知ってたさ……」 

苦し紛れのように呟く要。アイシャはその言葉にあざけるように肩を揺らして笑いをこらえている。

「でも……あれだろ? 先の可能性……いくつかある時間の分岐点の一部が見えるってだけって話じゃねえか」 

「あのなあ、それでも十分だよ。言ったろ?ネネってのは特別勘が良いんだって。可能性が見えるってことはそれだけ未来が絞られるってことだ。しかもその持ち前の勘で見える未来の中から可能性の薄いモノを消していけば後は答えが分かっている推理小説の犯人を当てるような話だ」 

「それはそれは本当に便利。私も欲しい能力だわ」 

アイシャの徒労に付き合わされた嫌みから出た一言。だがそれも嵯峨には鼻で笑う戯言だというように面倒くさそうに再びタバコに火を付けながら言葉を続けるきっかけでしかなかった。

「本当にそうか? 見たくもないものまで見えるんだぜ……俺はご免だね。それにお前さんみたいに先を見たがっている連中はごまんといる。其奴等が大挙して喋りたくもない未来を喋れと迫ってくるんだ……悪夢そのものじゃないのか? 」 

嵯峨にそこまで言われるといつもの鼻っ柱の強いアイシャも自然と伏せ目がちになる。

「法術……俺の祖母さん。あの遼南の女帝ムジャンタ・ラスバは帝位に就く前は先遼州文明の研究者だったからその絡みでいろいろ話は聞いていたが……法術師を作った宇宙文明って奴は確かに悪趣味の極みだね。人間はそんなに強くちゃいけないよ。強さってのは弱者に自慢するだけが取り柄の馬鹿野郎にはうれしいものかも知れねえが……その強さの意味ってモノが分かっちまうだけの頭の回転がある人間には重荷意外の何物でもないよ。自分の出来ること、しなければならないこと。それが嫌でも分かっちまう。そして人もそれを期待してしまう。伝説の預言者が東都のゲットーに籠もるようになったのも何となく分かるような気がするね」 

独白。それは嵯峨が自分自身のことを言っている。そして誠達のこれからについても暗示している。誠にはそのような意味に聞こえて自然と口元が引き締まるのを感じていた。

「まあ……明日は新港への移動日だ。今日中にネネから要に連絡が入ると思うぞ……吉田の正体。しっかり聞いてきてくれよ」 

それだけ言うと嵯峨はくるりと隊長の椅子を回して窓の外へと視線を移した。

「おい、叔父貴は吉田のことを……」 

要の言葉にめんどくさそうに嵯峨が顔だけで振り向く。

「くどいねえ。俺は部下の才能は買うが個人のプライバシーまでのぞき見て喜ぶ趣味はねえんだよ。とっとと寮に帰って演習の予定表にでも目を通しておけよ」 

そのまま振り向いて手で出て行けと合図する嵯峨。誠達は仕方なくいつもとは勝手の違うきれいすぎる隊長室を後にした。

「芝居? 」 

外に出たとたんにアイシャが要を見下ろして呟く。その青い瞳を見ながら要は苦々しげに首を振る。

「さあな……要するにアタシが相当な世間知らずだったと言うことが分かったのがアタシとしての収穫だよ」 

「それは良いことだ。実に良い進歩だな」 

皮肉めいたカウラの言葉に反論する元気もなく、要はとぼとぼと実働部隊の執務室へと向かった。


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