スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

遼州戦記 保安隊日乗 番外編2 ナンバルゲニア・シャムラードの日常2

「寒い!」 
 吹き付ける北からの季節風にシャムは手に手袋が無いのを思い出した。バイクに乗るときは基本今ジャケットのポケットから出しているライダーグラブをつけるのが好きだった。指は当然剥き出しで、寒さは骨にまでしみる。
「早くしよ」 
 そう言うと佐藤家の軽トラックの荷台の幌の隣においてある自分の愛用のスクーターの隣の猫耳つきのヘルメットを被った。なんとなく暖かくなる顔。フルフェイスなのでこの季節風の中を走るのには適していた。
 空には星が瞬いている。まだ空が白むには早い時間。
 シャムはすぐに遠隔キーでエンジンを吹かす。部隊の整備班がチューンしたエンジンは快調に起動した。
「さてと」 
 小型のバイクだが小柄なシャムにはちょうどいい大きさだった。またがりそのまま蹴りながら道に出てライトをつける。
 目の前を三匹の猫が驚いて駆け抜けていく。
「ごめんね脅かして」 
 そう言うとシャムは早速バイクを始動させた。軽快なエンジン音が眠ったベッドタウンの豊川市の市街地に響いた。遠くでうなりをあげているのは産業道路。シャムは部隊のある産業道路の向こうへとハンドルを切った。
 この町、豊川市の市役所の建物を抜け、そのまま駅へと向かう道を走る。何台かタクシーにすれ違うほかは車の気配はまるで無かった。
「寒いよう」 
 指先の感覚が無くなったりするのを感じながらバイクは走り続けた。そのとき突然ヘルメットの中のイヤホンに着信音が響いた。
「誰?」
『俺だよ俺』 
「俺なんて知らないよ」
『ったく誰にそんな言い方習った』
 困ったような声。その主はシャムにもわかっていたので自然とヘルメットの下の顔には笑顔が浮かんでいた。
『いい加減にしろよ』 
「わかってるよ。俊平どうしたの?』 
 相手はシャムの相棒といえる第一小隊三番機担当の吉田俊平少佐だった。彼のネットと直結した意識はシャムのヘルメットの猫耳に仕込まれたカメラで薄明かりの中をバイクを走らせているシャムの視線を読み取っていた。サイボーグである彼は時にこうしてシャムの行動を監視することもあった。
「で?何か用なの?」 
『ああ、今朝の畑仕事だが警備部の連中が手伝ってくれるそうだ』
「そうなんだ。助かるね」 
 シャムはそう言うと赤に変わった信号の手前でバイクを止めた。誰もいない交差点。市街化調整区域のぽつんぽつんと建つ建物の向こうに見える産業道路を大型車がひっきりなしに走っているのが見えた。
『それで……どうせ植物なんてネットでしか見たことがない連中だから役に立つとは思えないからな。とりあえず草でも抜かせるか?』 
「この時間に草抜きは危ないよ。まだしばらくは休んでいてもらって日が出てからにしようよ」 
 そう言うと信号が変わりシャムはバイクを走らせる。産業道路への合流口は青信号でシャムは一気にバイクを加速させた。
「それにしても……最近暇よね」 
『まあ第二小隊とアイシャは事件捜査で忙しかったみたいだけどな。俺達は蚊帳の外だ』 
「そうだよね。少しはアタシ達もお仕事したいよ」 
 シャムはそのままバイクで大型車の間を縫うように走る。そのアクロバティックな動きに思わず焦った鉄骨を積んだトレーラーの運転手がクラクションを鳴らす。
『相変わらず混んでるみたいだな……三車線じゃ足りないか』 
「うーん。まあ狭いかもね。渋滞するから昼間は」 
 そう言いながら前を見たシャムの視線に部隊の駐屯している菱川重工業豊川工場のエントランスゲートが目に入った。
「じゃあもうすぐ着くから」 
『待ってるぞ』 
 通信が切れるのを確認するとシャムはバイクを止めた。早出で出勤するらしい技術者の乗用車が並ぶ中。シャムもその行列の中にバイクで割り込むことになった。
スポンサーサイト

テーマ : *自作小説*《SF,ファンタジー》
ジャンル : 小説・文学

コメント

Secret

プロフィール

ハシモト

Author:ハシモト
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。